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第56話|踏み込む

 引く判断は、もう使えなかった。


 失踪者の気配は、近い。

 森の奥――

 動線の終点に、確かにいる。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『来た来た来た!戦闘回!』

[300年ROM専]『……戻れないな』

[慎重派の神]『踏み込めば終わるぞ』


 背後で、音がする。


 振り返るより早く、

 セラが低く言った。


「……塞がれた」


 来た道。

 もう、通れない。


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『出口潰されたな』

[慎重派の神]『包囲、完成』


 影が、増える。


 一体、二体、三体。

 数は多くない。


 だが、

 逃がさない配置。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『ここは逃走戦じゃない』


 ユウトは、剣を抜いた。


 もう、迷いはない。


「……セラ」


「うん」


 短い呼吸。

 言葉はいらない。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『腹、決まったな』


 敵が動く。


 今度は、様子見じゃない。


 一直線。

 速度も、殺意も。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『本気来た!』


 ユウトが受ける。


 重い衝撃。

 腕が痺れる。


 だが、止める。


 ここで下がれない。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『受け切った』


 二体目が、

 セラに来る。


 斜め。

 逃げ道を切る角度。


 セラは、退かない。


 迎え撃つ。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『退かない選択だ』


 刃が交差する。

 火花が散る。


 致命を狙わない動き。

 だが――

 削りは確実。


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『長引くぞ』


 三体目が、

 背後に回る。


 ユウトが、踏み込む。


 守るためじゃない。

 位置を崩すため。


 肩口を裂く。


 浅い。

 それでも、十分。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『初血』


 だが、敵は引かない。


 怯まない。

 退かない。


 逃走判断が存在しない。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『撤退条件を持たない個体だ』


 空気が、重くなる。


 神コメが、減った。


 茶化しが消える。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『……静かに見ろ』


 ユウトは、悟る。


 ここは、

 奪還戦でも、牽制でもない。


 殲滅か、被害覚悟での突破。


 選択肢は二つだけだ。


 ユウトは、歯を食いしばる。


「……セラ、中央で合わせる」


「了解」


《神観測ストリーム》


[戦術屋ヘルメス]『一気に来たな』


 同時に踏み込む。


 守りを捨てる。

 間合いを詰める。


 敵の“捕らえる動き”が、

 一瞬遅れた。


 想定外。


 刃が、深く入る。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『深手』


 一体、倒れる。


 だが、

 終わらない。


 残りが、

 間合いを詰めてくる。


 血の匂いが、

 森に広がる。


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『もう引けない』


 失踪者の気配は、

 まだ奥だ。


 生きている。


 だが、時間はない。


 ユウトは、剣を握り直す。


 ここで終わらせる。


 そう決めた。

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