第55話|再接触
最初に見えたのは、影だった。
形は曖昧。
だが、動きははっきりしている。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『来た来た来た!』
[300年ROM専]『……距離あるな』
ユウトは、足を止めない。
止めないが、詰めない。
視界の端で、
影が一つ、二つ。
数は多くない。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『前線じゃない配置だ』
[戦術屋ヘルメス]『斥候だな』
セラが、息を殺して囁く。
「……気づかれてる?」
「半分」
隠れてはいない。
だが、狙われてもいない。
それが、この状況を物語っていた。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『主導権はまだ相手だ』
枝が鳴る。
次の瞬間、
影が前に出た。
距離は詰めない。
姿も、はっきり見せない。
ただ――
止まった。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『止まった!?』
[300年ROM専]『……試してる』
ユウトは、剣に手をかけない。
セラも同じだ。
数秒。
沈黙。
そして――
風を切る音。
何かが、地面に落ちた。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『投げたな』
小さな金属片。
昨日見たものと、同じ形。
罠ではない。
攻撃でもない。
合図だ。
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『意思表示だな』
[慎重派の神]『挑発じゃない』
ユウトは、拾わない。
視線だけを落とし、
位置と形を覚える。
その瞬間――
別方向から、気配。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『……増えた』
包囲、ではない。
だが、退路を測っている。
セラが、ほんの少しだけ前に出る。
守る位置取り。
攻めない配置。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『反応を見ている』
影の一つが、
はっきりと姿を見せた。
魔物。
だが、今までと違う。
武器を持っている。
構えない。
こちらを見ているだけ。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『うわ、目合った』
[300年ROM専]『……知性あるな』
ユウトは、一歩だけ踏み出す。
剣は抜かない。
その一歩で、
空気が変わった。
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『境界越えた』
魔物が、動く。
速い。
一直線。
狙いは――
ユウト、ではない。
セラの足元。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『うわっ!』
ユウトは、迷わなかった。
踏み込み、
弾く。
刃と刃が、一瞬触れる。
火花。
音は、小さい。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『接触一回』
その一撃で、魔物は引いた。
深追いしない。
連携も来ない。
確認しただけ。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『力量測定だ』
次の瞬間、
周囲の気配が、一斉に引く。
森が、元の静けさを取り戻す。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『え、終わり!?』
[300年ROM専]『……十分だ』
ユウトは、剣を収めた。
息は乱れていない。
セラも、無事だ。
失踪者の気配は、
まだ奥にある。
だが――
追わせる気はない。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『今は引け』
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