第53話|再失踪
二度目は、早かった。
前回の失踪から、
まだ半日も経っていない。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『え、もう!?』
[300年ROM専]『……早すぎる』
消えたのは、二人。
外縁の小さな倉庫で作業していた、
兄弟だった。
昼間。
人通りのある場所。
森からは、少し距離がある。
条件は、前回よりも悪い。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『完全に範囲拡大だ』
ユウトが現場に着いたとき、
倉庫はいつも通りだった。
扉は閉まっている。
鍵も壊れていない。
中には、作業途中の荷物。
人だけが、いない。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『持ち出しゼロ』
[戦術屋ヘルメス]『連れ出し確定』
床に残る足跡は、
二人分。
重なり合い、
途中から一本に揃っている。
歩幅も、乱れていない。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『抵抗なし』
セラが、小さく息を吸う。
「……前より、はっきりしてるね」
「ああ」
今回は、見せる気がある。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『意図が明確になった』
足跡は、外縁をなぞる。
森には入らない。
だが、森を背にして進んでいる。
線が、さらに太くなる。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『前線更新』
[今日も暇な女神]『地味に一番怖いやつ』
途中、
足跡が消えた。
何の痕もなく。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『……消えたな』
ユウトは、その地点で立ち止まる。
前回と違う点が、三つ。
人数。
場所。
そして――
戻ってきていない。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『待っても戻らない』
ギルドからの連絡が入る。
他の外縁でも、
似た報告が出始めている。
失踪未遂。
連れ出しかけて、失敗。
動きが増えている。
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『数、試し始めたな』
日が傾く。
外縁全体に、緊張が走る。
見張りは増えた。
人も引いた。
それでも、
消えた二人は戻らない。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『戻らないのが本番だ』
ユウトは、倉庫の前に立ち、
目を閉じた。
追えば、戦闘になる。
深追いすれば、
向こうの盤に乗る。
だが、
追わなければ――
失われたままだ。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『うわ、選択肢重っ』
神コメが、急に減った。
冗談が止まる。
茶化しもない。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『……分岐点だ』
ユウトは、目を開けた。
判断材料は、揃っている。
線は外に出た。
人を攫う。
殺さない。
壊さない。
――目的がある。
そして、
今度は、戻していない。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『判断を迫られている』
ユウトは、セラを見る。
「……行く?」
問いは短い。
セラは、一瞬だけ迷い、
それから頷いた。
「うん」
その一言で、
もう後戻りはできない。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『覚悟決めたな』
[戦術屋ヘルメス]『盤に乗る気だ』
ユウトは、森の方角ではなく、
外縁の線の先を見る。
次は、
追う。
そう決めた。
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