表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/58

第51話|基準になる

 朝の空気は、冷えていた。


 外縁の見張り台を離れる頃、

 村人たちはまだ事態を理解していない。


 柵が少し動いただけ。

 誰も怪我をしていない。

 畑も、家畜も無事だ。


 だからこそ、

 説明が難しい。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『被害ゼロって逆に困るよね』

[300年ROM専]『……状況説明が面倒なやつ』


 ユウトは、歩きながら頭の中で言葉を整理していた。


 音の種類。

 距離。

 時間。

 そして、柵の位置。


 どれも単体では弱い。

 だが、重ねると――

 はっきりとした意図が見える。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『情報の重ね方が重要だ』

[戦術屋ヘルメス]『一個一個は軽いがな』


 ギルドに着くと、

 受付の対応がさらに早くなっていた。


「ユウトさん、

 すぐ奥へ」


 説明はいらない。

 もう“いつもの流れ”じゃない。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『完全に特別枠だな』


 応接室には、昨日とは違う顔ぶれもいた。

 責任者クラス。

 現場を知る冒険者。

 記録係はいない。


 扉が閉まる。


 静かだ。


「夜の外縁で、動きがありました」


 ユウトは、結論から話した。


 音が二度あったこと。

 位置が違ったこと。

 柵が壊されず、動かされていたこと。


 誇張はしない。

 恐怖も足さない。


 事実と判断だけ。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『報告が簡潔だ』

[今日も暇な女神]『プロ配信者の話術きた』


 質問が飛ぶ。


「魔物の姿は?」


「見ていません」


「攻撃の兆候は?」


「ありません」


「では、危険度は?」


 ユウトは、一拍置いた。


「上がっています」


 断言だった。


 部屋が静まる。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『言い切ったな』


「理由は?」


「境界を引いているからです」


 全員の視線が集まる。


「森の内側だけで完結していません。

 外縁にまで線が伸びています」


 机の上に、簡単な図を描く。


 森。

 道。

 柵。


「これは、

 威嚇でも、偶発でもない」


「行動範囲の確定作業です」


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『線の引き方がガチ』

[戦術屋ヘルメス]『軍事的だな』


 責任者の一人が、低く息を吐いた。


「……こちらの報告とも一致します」


 別の場所。

 同じような“音”。

 同じような“被害未満”。


 点が、線になる。


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『前線が外に出たな』


「で、ユウトさん」


 呼び方が変わった。


「あなたは、

 この先どう動くべきだと思いますか」


 指示ではない。

 意見を求めている。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『最重要質問きた!』

[300年ROM専]『基準にされてる』


 ユウトは、少し考えた。


 森に戻る。

 正面から探る。


 ――今じゃない。


「外縁の警戒を、広げてください」


 穏やかな口調だった。


「森に入る人を減らす。

 夜は追わない。

 異音は、位置だけ共有する」


 安全策だ。

 派手さはない。


「こちらは、

 見せないまま、見続ける」


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『踏み込まない判断だ』

[戦術屋ヘルメス]『待ちの戦術』


 反論は、出なかった。


 代わりに、頷きが増える。


「……分かりました」


 責任者が言った。


「当面、

 あなたの判断を基準に動きます」


 昨日より、はっきりした言葉だった。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『正式に来たな』


「無理に前に出る必要はありません」


「ですが」


 一拍。


「線が動いたと判断した場合、

 その時は、即座に知らせてください」


 ユウトは、頷いた。


「分かりました」


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『責任重大!』

[慎重派の神]『だが、信頼だ』


 ギルドを出ると、

 街はいつも通りだった。


 子供が走り、

 商人が声を張る。


 その中で、

 ユウトだけが知っている。


 もう、境界は引かれていることを。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『日常の裏で戦線が動いてる』


 セラが、隣で言う。


「……完全に、中心だね」


「なりたくてなったわけじゃないけどな」


 それでも、

 目は逸らさない。


 気づいてしまった以上、

 見続けるしかない。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『覚悟が定まった』


 次に動くのは、

 向こうか、こちらか。


 分からない。


 だが――

 判断する準備は、できている。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、

★評価・感想・ブックマークで応援してもらえると励みになります。


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ