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第50話|夜の外縁

 夜は、予定より早く来た。


 外縁の見張り台に灯る火は少ない。

 明るくしすぎない。

 寄せないためだ。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『夜編スタート!』

[300年ROM専]『……静かだ』

[慎重派の神]『警戒を切らすな』


 ユウトは、見張り台の影に立っていた。

 セラは少し離れた位置。


 距離は取る。

 だが、声は届く。


 村人は屋内。

 冒険者は二人一組。


 昼に決めた通りだ。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『配置、無理がない』

[地形厨ヘカトン]『視界は十分』


 音がしたのは、

 夜半を少し過ぎた頃だった。


 金属じゃない。

 木でもない。


 何かが、擦れる音。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『来た!』

[300年ROM専]『……聞こえたな』


 見張りの一人が、身を乗り出しかける。


 ユウトは、静かに首を振った。


 追わない。

 決めた通りだ。


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『良い』


 音は、一定の距離を保ったまま、移動している。


 近づかない。

 遠ざからない。


 まるで――

 境界線をなぞるように。


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『外縁トレースしてる』

[戦術屋ヘルメス]『測量に近いな』


 セラが、低く囁く。


「……昨日より、分かりやすい」


「ああ」


 隠していない。

 ただ、見せていないだけだ。


 音が止まる。


 数秒。

 何も起きない。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『え、終わり?』

[300年ROM専]『……いや』


 見張り台の下、

 柵の影に何かがある。


 動かない。

 気配も薄い。


 ユウトは、近づかない。


 代わりに、

 位置と形を覚える。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『不用意に踏み込まない』

[慎重派の神]『触るな』


 夜明け前、

 音は二度目を立てた。


 今度は、別の方角。


 同じ距離。

 同じ高さ。


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『外縁、二点目』

[戦術屋ヘルメス]『線、太くなってきた』


 夜が明ける。


 被害は、ない。


 だが――

 柵が、二箇所だけ動いている。


 壊れてはいない。

 位置が、少し変えられている。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『印付けだな』

[今日も暇な女神]『落書き感覚でやってる?』


 ユウトは、全体を見渡す。


 森。

 外縁。

 見張り台。


 線は、もう引かれている。


 次は、

 点じゃない。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『次の段階に入った』


 セラが、静かに言う。


「……ギルドに、報告だね」


「ああ。

 今度は、急ぎで」


 選択肢は、減っている。


 だが――

 判断は、まだこちらにある。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『夜を越えたな』

[今日も暇な女神]『はい、緊急回線!』


 朝日が、外縁を照らす。


 何も壊れていない。

 誰も傷ついていない。


 それでも――

 境界は、書き換えられた。


 ユウトは、そう確信していた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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