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第49話|外縁の異変

 騒ぎは、小さかった。


 悲鳴もない。

 鐘も鳴らない。


 ただ、人が集まっていた。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『事件の匂い!』

[300年ROM専]『……規模は小さいな』


 外縁の農地。

 昨日見た柵の一つが、倒れている。


 壊された、というより

 外されたに近い。


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『破壊じゃないな』

[戦術屋ヘルメス]『通路確保って感じ』


 農夫が青い顔で話す。


「夜中に、音がしてな……

 朝になったら、こうなってた」


 作物は荒らされていない。

 家畜も無事だ。


 目的が分からない。


 ユウトは、柵の前にしゃがみ込む。


 痕跡は少ない。

 だが、足跡がある。


 数は多くない。

 方向は、森――ではなく、横。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『森から来てない』

[観測者アレス]『外縁をなぞっている』


「……試してる?」


 セラの小さな声。


「たぶん、様子見だ」


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『まだ本気じゃない』


 村人たちは、不安そうだが、混乱していない。


「魔物か?」


「分からんが……

 畑は無事だ」


 被害が軽すぎる。


 ユウトは立ち上がり、周囲を見る。


 柵。

 道。

 見張り台の位置。


 線が、引かれ始めている。


《神観測ストリーム》


[地形厨ヘカトン]『外縁ライン形成中』

[戦術屋ヘルメス]『前線拡張だな』


 そのとき、

 見張り役の冒険者が駆け寄ってきた。


「今朝、

 別の場所でも似た報告が出てる」


 同じ外縁。

 同じ規模。


 偶然じゃない。


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『点が増えた!』

[300年ROM専]『線になるな』


 ユウトは、即断した。


「今日は、

 森に近づかせないでください」


 命令じゃない。

 提案だ。


「見張りを二人一組で。

 夜は、音がしても追わない」


 冒険者は、一瞬迷い、

 それから頷いた。


「分かった」


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『現場判断が通った』


 セラが、低く言う。


「……もう、始まってるね」


「ああ」


 森の問題じゃない。

 外側に出てきてる。


 ユウトは、空を見上げた。


 まだ、昼だ。

 だが、夜は近い。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『引き返せない段階だ』


 今日の事件は、小さい。


 だが――

 次は、選ばせてもらえない。


 その予感だけが、

 はっきりと残った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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