第46話|再調査
森に入ったのは、朝だった。
昨日と同じ時間帯。
同じ入口。
同じ光の角度。
違うのは、
こちらの意識だけだ。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『おかえり森!』
[戦術屋ヘルメス]『再突入、嫌いじゃない』
[慎重派の神]『深入りはするな』
[300年ROM専]『……静かだな』
ユウトは歩幅を揃え、
セラと距離を保つ。
急がない。
だが、止まらない。
目的は単純だ。
昨日と違う点を拾うこと。
魔物は出ない。
気配も、薄い。
それがまず一つ目の違和感だった。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『静かすぎる』
[今日も暇な女神]『逆に怖いやつ』
昨日、最初に接触した辺りまで来る。
草は踏まれている。
枝は折れている。
だが――
乱れていない。
戦闘があった場所とは思えないほど、
整理されている。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『後処理されてる』
[戦術屋ヘルメス]『仕事丁寧すぎ』
[慎重派の神]『嫌な前線だ』
セラが声を落とす。
「……昨日、ここで斬ったよね」
「ああ」
痕跡はある。
だが、必要最低限しか残っていない。
偶然じゃない。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『人の手だな』
さらに奥へは進まない。
代わりに、横へずれる。
昨日、通らなかったライン。
森の密度が変わる。
視界が切れやすい。
足を止める。
風。
鳥の声。
気配が、合わない。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『違和感を拾えている』
[今日も暇な女神]『勘が仕事してる』
木の根元に、
小さな金属片が落ちていた。
武器じゃない。
装飾でもない。
用途が分からない。
ユウトは拾わず、
位置だけを覚える。
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『触らないの偉い』
[慎重派の神]『不用意な接触は避けろ』
そのとき。
――音。
昨日と同じ。
金属が擦れる、短い音。
だが、方向が違う。
遠い。
しかも、一度だけ。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『あっ』
[300年ROM専]『……聞こえたな』
セラが、何も言わずに剣を構える。
ユウトは、首を横に振る。
動かない。
数秒。
何も起きない。
気配も、増えない。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『合図だけ出したな』
[戦術屋ヘルメス]『位置確認か?』
[観測者アレス]『試しているわけではない』
ユウトは、静かに息を吐く。
確信に近いものが、形になる。
昨日とは、段階が違う。
今日は――
見せていない。
だからこそ、
これ以上は踏み込まない。
「戻る」
短く言う。
セラは何も聞かず、頷いた。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『正解』
[今日も暇な女神]『もう帰るの!?』
[300年ROM専]『今日はここまでだ』
森を出る。
背中に、視線は感じない。
だが――
見られていないとも、言い切れない。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『判断材料は増えた』
[戦術屋ヘルメス]『前線の深さが分かったな』
街が見えたとき、
ユウトは一度だけ振り返った。
森は、何も言わない。
それが、一番の収穫だった。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『良い再調査だ』
[今日も暇な女神]『次は何起きるんだろ』




