第45話|条件を整える
ギルドを出たあと、
ユウトは森へ向かわなかった。
真っ直ぐ、宿へ戻る。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『え、今から行かないの?』
[戦術屋ヘルメス]『即再突入も手ではある』
[慎重派の神]『今日はやめとけ』
[300年ROM専]『……落ち着け』
部屋に入り、装備を外す。
剣を置き、革鎧の留め具を緩める。
刃こぼれは小さい。
消耗はあるが、動ける。
「すぐ行かないんだね」
セラの言葉に、ユウトは頷いた。
「今行く理由がない」
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『衝動を抑えたな』
[今日も暇な女神]『冷静すぎて逆に怖い』
机に紙を広げ、
簡単な線を引く。
森の入口。
昨日の位置。
動いた方向。
正確さはいらない。
考えを固定するための線だ。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『その線引き、分かりやすい』
[戦術屋ヘルメス]『再現性ある配置だな』
「分かってることは三つ」
ユウトは指を立てる。
「向こうは数を出しすぎない」
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『確定事項』
[今日も暇な女神]『ケチだねぇ』
「連携は崩れにくい」
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『統率型』
[慎重派の神]『厄介』
「無理な追撃はしない」
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『判断基準が見えている』
[今日も暇な女神]『追ってこない敵、嫌すぎ』
紙から目を離す。
「逆に、分からないことの方が多い」
セラは黙って聞いている。
「でも、
分からないまま放っておくには、
危なすぎる場所だ」
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『筋は通ってる』
[慎重派の神]『だが深入りはするな』
準備を進める。
食糧。
水。
回復手段。
一泊以上は想定しない。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『長居しない前提、正解』
[今日も暇な女神]『キャンプ配信期待してたのに』
「目的は?」
セラが聞く。
「戦うことじゃない」
即答だった。
「状況を見る。
昨日と同じか、違うか。
それだけ」
《神観測ストリーム》
[戦術屋ヘルメス]『勝ちに行かない選択』
[観測者アレス]『判断材料を取りに行く動きだ』
[慎重派の神]『線引きは守れ』
窓の外。
街はいつも通りだ。
森の話をしている人はいない。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『平和すぎて逆に不安』
[300年ROM専]『現実だな』
「もし、また同じ状況になったら?」
セラの声は静かだ。
「同じ判断をする」
迷いはない。
「逃げる。
生きて戻る」
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『一貫している』
[戦術屋ヘルメス]『撤退条件が明確』
[今日も暇な女神]『生存厨で好き』
準備を終え、
ユウトは椅子にもたれた。
怖さはある。
だが、輪郭は昨日よりはっきりしている。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『判断が積み上がってる』
「明日、朝一で行く」
「了解」
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『はい、次回予告!』
[戦術屋ヘルメス]『短時間接触だな』
[慎重派の神]『無理はするな』
[観測者アレス]『判断を見せろ』
誰にも命令されていない。
誰にも押し出されていない。
それでも――
行く理由は、十分だった。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『良い準備回だ』
夜が来る。
昨日より、
少しだけ眠れそうだった。




