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第44話|扱いが変わる

 ギルドの奥に通された時点で、

 軽い話じゃないことは分かっていた。


 簡易の応接室。

 扉が閉まる音が、やけに静かに響く。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『ちゃんと聞く気だな』


「まずは、報告をお願いします」


 促されて、ユウトは頷いた。


 昨日の森。

 遭遇した数。

 動きの揃い方。

 包囲の速度。

 撤退に至った判断。


 推測は混ぜない。

 盛らない。

 削りすぎない。


 自分が見て、感じて、判断したことだけを並べる。


 相手は口を挟まない。

 途中で遮られることもない。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『整理された報告だ』


 話し終えたあと、

 少しだけ沈黙が落ちた。


「……ありがとうございます」


 職員は、ゆっくりと息を吐いた。


「こちらでも、

 いくつかの報告と照合しました」


 その言葉で、

 ユウトは確信する。


 自分たちだけじゃない。


「正直に言います」


 視線が、ユウトに向けられる。


「現場のことを、

 一番正確に把握しているのは――あなたです」


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『評価来たな』


「経験値でも、等級でもない。

 “判断の質”です」


 はっきりと、そう言った。


「今回の撤退判断、

 そしてその前後の動き。

 どれも、こちらの想定より冷静でした」


 セラが、わずかにユウトを見る。

 ユウトは何も言わない。


《神観測ストリーム》


[慎重派の神]『ちゃんと見てる』


「ですので」


 職員は言葉を区切る。


「追加の調査については、

 こちらから細かい指示は出しません」


「……任せる、ということですか」


「はい」


 即答だった。


「情報は共有します。

 支援も、可能な範囲で行います」


 だが――

 道筋は示さない。


「踏み込むかどうか。

 どこまで見るか。

 撤退するかどうか」


「その判断は、

 あなたに委ねます」


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『判断力を買われたな』


 軽くはない。

 だが、投げられている感じでもない。


 任されている。


 それだけは、はっきりしていた。


 ギルドを出てから、

 少し歩いたところで、セラが言う。


「……評価、されたね」


「みたいだな」


「で、どうするの?」


 ユウトは、少しだけ考えた。


 昨日の森。

 あの動き。

 あの違和感。


「このまま、

 気になったまま終わるのは嫌だ」


 それは、最初から決まっていた。


「一番分かってるのが俺なら、

 見に行くしかない」


 セラは、短く息を吐いてから、笑った。


「……だと思った」


《神観測ストリーム》


[今日も暇な女神]『はい、納得の流れ』


 掲示板は見ない。

 依頼も選ばない。


 これは、受ける仕事じゃない。


 自分で、踏み込む。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『覚悟、決まったな』


 ユウトは、森の方角を思い出す。


 怖さはある。

 不安もある。


 それでも――

 分からないまま、放ってはおけない。


 判断は、

 もう自分の中にあった。


《神観測ストリーム》


[観測者アレス]『らしい選択だ』

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