第43話|朝の判断
目を覚ましたのは、空が白み始めた頃だった。
森は、相変わらず静かだ。
昨夜の緊張が嘘みたいに。
セラも起きていた。
剣を膝に置いたまま、ぼんやりと火の跡を見ている。
「……何も起きなかったね」
「うん」
それが一番、気になる。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『静かすぎる』
簡単に食事を済ませる。
味は分からない。
体に入れている、という感覚だけが残る。
装備を確認しながら、周囲を観察する。
足跡は、ほとんど残っていない。
昨夜の戦闘が嘘みたいだ。
だが、よく見ると――
踏み荒らされた形跡だけが、妙に整理されている。
「……片付いてる」
セラも気づいたらしい。
「自然じゃないな」
獣なら、もっと乱れる。
逃げるなら、もっと痕が残る。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『戦場の後処理してる』
[観測者アレス]『無駄がないな』
進路を決める。
来た道を戻る、という選択肢はすぐに消えた。
昨日の地点を、もう一度通りたくない。
「遠回りする」
「街?」
「一応な。でも、最短じゃない」
セラは少し考えてから、うなずいた。
「……分かった」
疑問はあっても、反対はしない。
それが、今の信頼関係だった。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『妥当』
森を進む。
魔物は、出ない。
気配も、薄い。
だが、完全に安全とも言えない。
視界の端で、枝が揺れた気がする。
風かもしれない。
そうでないかもしれない。
判断は、積み重ねだ。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『緊張が抜けない』
昼前、森の外縁に近づいた。
空が明るい。
だが、人の気配が少ない。
簡易的な見張り台が見えた。
冒険者か、ギルド関係者か。
近づくと、向こうが先に声をかけてきた。
「止まってくれ」
剣に手はかけていない。
だが、警戒ははっきりしている。
「森の奥から来た?」
「ああ」
それだけで、空気が変わった。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『あー、これ察されてる』
細かい説明は求められなかった。
名前も、戦果も。
ただ一言。
「……無事でよかったな」
それが、妙に重い。
森の奥を、誰も“安全”だと思っていない。
昨日の戦いが、特別じゃなかった証拠だ。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『評価が変わったな』
街へ向かう道すがら、セラが言った。
「北の森の調査……
普通の依頼じゃなかったんだね」
「たぶん最初からな」
「……それでも、行った?」
少しだけ、間が空く。
「分からないままにする方が、嫌だった」
嘘じゃない。
それだけで、十分だった。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『らしい判断だ』
街の門が見える。
いつもと同じはずなのに、
少しだけ、遠く感じた。
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