第42話|夜営
走り続けて、
気配が完全に消えてから、さらに距離を取った。
そこでようやく、立ち止まる。
足が重い。
肺が、うまく息を思い出せない。
セラも同じだった。
剣を地面に突き、肩で息をしている。
「……助かった、ね」
「うん」
短く返す。
それ以上の言葉が、今は出てこなかった。
森は静かだ。
さっきまでの殺気が、嘘みたいに。
だが、静かすぎる。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『静かだな』
[今日も暇な女神]『嵐の後って感じ』
夜営場所を探す。
開けすぎない場所。
視界が完全に塞がれない場所。
自然と、足がそういう場所を選んでいた。
小さく火を起こす。
必要最低限。
暖を取るためじゃない。
“夜だ”と分かるようにするためだ。
セラが座り込み、息を整えながら言った。
「さっきの……普通の魔物じゃなかったよね」
「うん」
「数じゃなくて、動きが」
同じ感想だ。
俺は装備を外しながら、頭の中を整理する。
・個体の強さは、そこまで高くない
・連携が異常
・撤退判断が早い
・追撃を途中で切っている
どれも、現場判断だけで説明がつく。
だからこそ、嫌だった。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『状況整理に入ったな』
[300年ROM専]『余韻が重い』
セラが焚き火を見つめながら、ぽつりと言う。
「……街、戻れるかな」
「今日は無理だ」
即答だった。
戻れない理由はいくつもある。
疲労、時間、距離。
そして――
まだ、森の中にいる感覚。
「明日、様子見て判断する」
「……そっか」
不満はなかった。
ただ、納得した声だった。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『正解だ』
夜が深まる。
音がない。
虫の声も、風も、妙に控えめだ。
見張りを交代で立てることにした。
眠る必要はある。
だが、完全には休めない。
先に横になったセラの寝息は浅い。
無理もない。
俺は起きたまま、森を見ていた。
暗闇の向こう。
何も見えないはずなのに、
見られている気がしない。
それが、逆に不安だった。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『嫌な夜だ』
[今日も暇な女神]『眠れないやつ』
今日の戦いを思い返す。
正解だったか。
間違いだったか。
結論は出ない。
ただ一つ言えるのは、
あの判断をしなければ、ここにはいないということ。
生きている。
それだけで、十分だ。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『生存を優先した判断だ』
夜は、何事もなく明けた。
それが一番、異常だった。
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