第38話|接触
空は変わらず晴れている。
それが、逆に不気味だった。
「……今日も、出てきませんね」
セラが言う。
「出てきてないだけだ」
見ていない、とは言わない。
《神観測ストリーム:ON》
[今日も暇な女神]『四日目突入』
[300年ROM専]『ここまで引っ張るの珍しい』
[観測者アレス]『見せる前の溜めだな』
今日で、調査は終わらせる。
失踪パーティの線。
群れ行動。
合図。
今日は、最終確認だ。
「今日も、深追いしない」
ユウトが言う。
「見るだけだ」
「……見えたら?」
「距離を測る」
それだけで、十分だった。
森に入る。
昨日より、さらに奥。
地面の踏み荒らされ方が変わっている。
「……足跡、増えてます」
「増えてるな」
だが、雑ではない。
揃っている。
《神観測ストリーム》
[地形厨ヘカトン]『隊列移動』
[今日も暇な女神]『オークさん賢い』
少し進んだところで、
ユウトは足を止めた。
「……止まれ」
セラも、即座に止まる。
前方。
木々の隙間。
何かが、動いた。
一体じゃない。
三。
いや、もっと。
距離は、遠い。
だが――はっきり見える。
大柄な影。
装備らしきもの。
そして、整った動き。
「……いましたね」
声が、自然と低くなる。
「ああ」
オーク。
だが、知っているそれとは違う。
「……あれ、待ち伏せしてません?」
「してる」
こちらを、通す前提の配置だ。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『普通に怖い』
[今日も暇な女神]『出たー』
[観測者アレス]『不用意に動くな』
さらに奥。
木の陰から、もう一体。
こちらを見て――
ゆっくりと、金属を打ち鳴らした。
――カン。
音は、短い。
一回だけ。
合図。
「……気づかれてますね」
「気づいてるのは、最初からだ」
違うのは、
見せる段階に入ったということ。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『顔見せイベント』
[300年ROM専]『これは逃げないやつ』
ユウトは、剣に手をかけたまま、動かない。
距離。
数。
配置。
戦えば、勝てるか。
――分からない。
だが、
今は戦う理由がない。
「……戻る」
小さく言う。
セラも、何も言わず頷いた。
一歩。
二歩。
背後から、視線。
だが、追ってこない。
ただ、見ている。
森を抜ける直前、
もう一度だけ、音が鳴った。
――カン。
今度は、二回。
意味は分からない。
だが、伝える気がある。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『完全に意思疎通』
[今日も暇な女神]『フラグ立てて帰るのやめて』
街道に出る。
振り返っても、
もう姿は見えない。
「……確認、できましたね」
セラが言う。
「確認した」
それだけだ。
ギルドに戻る。
報告は、短く。
「群れの姿を確認。
待ち伏せ配置あり。
こちらを認識している」
受付は、即座に頷いた。
「……討伐案件に切り替えます」
静かな宣言。
《神観測ストリーム》
[観測者アレス]『ここから本編』
[今日も暇な女神]『やっと戦闘回?』
夜。
宿の部屋。
剣を磨きながら、
ユウトは考える。
敵は、こちらを知っている。
だが、動かない。
待っている。
「……向こうも、準備してますね」
セラが言う。
「ああ」
「行きますか」
迷いはなかった。
「行く」
ただし。
「向こうの土俵じゃない」
調査は終わった。
接触は、済んだ。
次は――
選んで踏み込む戦闘だ。
神たちは、
その瞬間を楽しみに待っている。
そして、
ユウト・クロセもまた、
静かに剣を研いでいた。
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