第34話|扱いが変わる
朝、ギルドの扉を押すと、
いつもと同じ木の軋む音がした。
人の声。
紙をめくる音。
装備の擦れる音。
見た目は、何も変わらない。
《神観測ストリーム:ON》
[今日も暇な女神]『平和なBGM』
[300年ROM専]『嵐の前』
「……あ」
受付の女性が、ユウトの顔を見て一瞬だけ言葉を切った。
すぐに帳簿へ視線を落とすが、その手の動きが、昨日より早い。
「報告をお願いします」
声は事務的だが、どこか慎重さが混じっている。
「街道北」
ユウトは短く切り出した。
「中型三体。
急襲による分断。
三体すべて討伐」
帳簿の上を走っていたペンが、ぴたりと止まる。
「……三体、ですか」
「はい」
余計な説明はしない。
結果だけで十分だ。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『あ、止まった』
[今日も暇な女神]『事務処理フリーズ』
[観測者アレス]『この反応は重い』
受付は一度だけ顔を上げ、
ユウトとセラを順に見た。
「少し、お待ちください」
そう言って、奥へ下がる。
周囲の空気が、ほんの少し変わる。
ざわつくほどではない。
だが、視線が増えたのは分かる。
「……見られてますね」
セラが小さく言う。
「いつものことだ」
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『注目度じわ上がり』
[300年ROM専]『本人は無自覚』
受付が戻ってくる。
今度は、腕章の色が違う職員を伴っていた。
「確認が取れました」
落ち着いた声。
「街道北、奥寄り。
中型魔物が複数で行動している可能性があります」
帳簿が、別の欄へ移される。
「当該地域の依頼危険度を、
中から中~上へ引き上げます」
セラが、わずかに息を飲む。
《神観測ストリーム》
[慎重派の神]『順当』
[今日も暇な女神]『はい難易度アップ』
職員は続けた。
「現時点では討伐より、
周辺状況の把握を優先します」
一拍。
「調査依頼として、
この区域を引き続き確認してもらえますか」
ユウトは、少しだけ間を置いた。
条件は良くない。
情報は足りない。
危険度は上がっている。
それでも、放置する気にはなれなかった。
「受けます」
短く答える。
「……よろしいですか」
「条件がそろってたわけじゃない」
ユウトはそう言ってから続けた。
「分からないままにしておく方が、嫌だった」
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『理由が真面目』
[今日も暇な女神]『こういうの弱い』
[観測者アレス]『覚悟型』
職員は一瞬だけ黙り、頷いた。
「了解しました。
詳細はこちらです」
書類が差し出される。
背後から声がかかった。
「……あんたが、ユウト・クロセか」
上級冒険者だった。
装備は使い込まれ、無駄がない。
「昨日の報告、見た」
値踏みする視線。
「危険度は上がる。
それでも行くのか」
「放っておく方が、危ない」
短く答える。
相手は、少しだけ笑った。
「……面倒なタイプだな」
だが、悪い響きじゃない。
《神観測ストリーム》
[今日も暇な女神]『褒めてる』
[300年ROM専]『遠回し評価』
外に出る。
昼の光が、少し眩しい。
「……即、受けましたね」
セラが言う。
「後回しにできなかった」
「怖くないですか」
「怖い」
即答する。
「だから、調べる」
掲示板の横を通る。
危険度:中~上。
内容:調査。
夜。
部屋で装備を整え直す。
刃の欠けを研ぎ、
革紐を締め直す。
《神観測ストリーム》
[300年ROM専]『派手じゃないが良回』
[今日も暇な女神]『次、荒れそう』
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