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第25話|上級冒険者と衝突

迷宮から戻った翌日、ギルドはいつもより騒がしかった。


依頼の張り替えで紙が擦れる音。

報告待ちの列に混じる、短い苛立ちの声。

いつもと同じ光景のはずなのに、今日は妙に落ち着かない。


理由はすぐに分かった。


視線だ。


遠慮がなく、隠す気もない。

こちらの動きをなぞるような、重たい視線が一つ――いや、複数。


「……あれが例の新人か」


背後から、低い声。


振り向くと、三人組の冒険者が立っていた。

使い込まれた装備は手入れが行き届いていて、傷も隠していない。

胸元の紋章――上級。


伊達じゃない。


「ユウト・クロセだな」


「そうだけど」


短く答える。


名を呼ばれただけで、周囲の空気が少し動いた。

噂は、もう街に回っている。


「迷宮下層に落ちて、生きて帰ったって?」


語尾がわずかに上がる。

驚きじゃない。確認だ。


「運が良かっただけだ」


事実を、そのまま口にする。


男は、ほんの一瞬だけ俺を見てから、短く笑った。


「だろうな」


隣の冒険者が続ける。


「最近、増えたんだ。

 たまたま生き残って、特別だと思い始める新人が」


言葉は淡々としている。

だが、刃は隠れていない。


空気が、わずかに張る。


《神観測ストリーム:ON》


[今日も暇な女神]『視線が痛い』

[観測者アレス]『受け流せ』


「迷宮はな」


最初に話しかけてきた男が続ける。


「入る時は誰でも入れる。

 だが、出る時は――実力だ。」


「今回は、たまたまだ」


同じ言葉を、もう一度。


「次もそう思えるならいい」


言い切らない。

だが、含みは十分だった。


脅しじゃない。

忠告に近い。


だからこそ、厄介だ。


セラが、半歩前に出た。


「……私たちは、無茶はしてません」


声は落ち着いている。

だが、感情は隠せていない。


男はセラを見て、少しだけ目を細めた。


「なら、それを続けろ」


それだけ言って、踵を返す。


三人は、そのまま人の流れに溶けていった。


残されたのは、ざわめきと、微妙な沈黙。


セラが、静かに息を吐く。


「……納得いきません」


「分かる」


短く返す。


胸の奥に、わずかな引っかかりが残っている。


「でも、間違ってるとも言えない」


セラが、こちらを見る。


「どういうことですか」


俺は、掲示板に目を向けた。


低難度の依頼。

地味で、報酬も控えめ。


目立たない仕事ばかりだ。


「向こうは、結果だけを見てる」


紙を一枚、指で押さえる。


「生きて帰った。

 それだけで判断してる」


セラは、黙って聞いている。


「俺たちは、過程を見てる」


罠を避けたこと。

引き際を選んだこと。

戦わなかった判断。


それは、数字にも噂にも残らない。


《神観測ストリーム》


[300年ROM専]『分かり合えないやつ』

[戦術屋ヘルメス]『現場基準』


「評価がズレるのは、仕方ない」


そう言って、依頼書を剥がす。


「合わせるつもりもない」


セラは、少しだけ考えてから言った。


「……それでも、嫌です」


「だろうな」


「でも」


一拍置いて、続ける。


「だからって、無茶するのも違いますよね」


「ああ」


それは、はっきり頷けた。


そして――

ユウト・クロセは、今日も“帰れる依頼”を選んだ。


それが今の、自分たちのやり方だった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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