表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/45

第23話|迷宮下層

その日、ギルドを出たところで、セラが立ち止まった。


「……そういえば」


何気ない口調だった。


「迷宮、まだ行ってませんよね」


「避けてる」


即答する。


「ですよね。あの、入口だけ……見に行きませんか?」


「見るだけ?」


「見るだけです」


本当にそれだけ、という顔をしていた。


俺は少し考える。


迷宮。

冒険者なら避けて通れない場所。


でも、下層まで行くつもりはない。


「中層の手前までだぞ」


「はい!」


即答。


条件反射みたいな速さだった。


《神観測ストリーム:ON》


[今日も暇な女神]『お散歩感覚』

[戦術屋ヘルメス]『フラグ』


「変な顔すんな」


セラが小さく笑う。


「なんとなくです」


「なんとなく?」


「はい。

 そのうち行くなら、今でもいいかなって」


無茶でも、決意でもない。


ただのタイミング。


「……帰る前提だぞ」


「もちろんです!」


その言葉に、重さはなかった。


だからこそ、引っかからなかった。


「じゃ、入口だけな」


「はい!」


少し弾んだ声。


迷宮の入口は、街の外れにあった。


石造りのアーチ。

奥へ続く、暗い口。


昼間に見れば、ただの遺跡だ。

だが夜になると、空気が変わる。


「……思ったより、静かですね」


セラが声を潜めて言う。


「静かな場所ほど、信用するな」


《神観測ストリーム:ON》


[現場猫神カーン]『フラグ立てんな』

[戦術屋ヘルメス]『入口は安全率高め』


松明に火をつけ、足を踏み入れる。


石畳は湿っており、音が吸われる。

外の世界の気配が、数歩で消えた。


「今日は下層まで行かない」


俺は先に釘を刺す。


「中層の手前で引き返す。様子見だ」


「了解です」


セラは即答した。


この即応性が、ありがたい。


通路を進む。


魔物は出ない。


だが、《境界観測者》が、淡く警告を出し続けている。


――ここは、安全じゃない。


「……ユウトさん」


セラが、小さく呼ぶ。


「音、聞こえますか?」


耳を澄ます。


遠くで、何かが擦れる音。


足音とも、爪の音ともつかない。


[神界新人ミコト]『こわ』

[300年ROM専]『気味悪すぎる』


「引き返す」


即決だった。


だが、その瞬間。


足元の石畳が、沈んだ。


「――っ!」


罠。


床が崩れ、二人の身体が落ちる。


セラが叫ぶ。


俺は反射的に腕を伸ばした。


掴めない。


落下。


暗転。


――次に意識が戻った時。


冷たい石の感触が背中にあった。


「……生きてる?」


声が掠れる。


「……はい」


セラの返事が、少し離れた場所から聞こえた。


「ここ……」


松明を点ける。


視界に映ったのは、広い空間。


天井は高く、壁には見慣れない紋様。


空気が、重い。


《境界観測者》が、これまでにない強さで反応する。


――完全に、下層。


[観測者アレス]『想定外だな』

[戦術屋ヘルメス]『撤退最優先』


「……罠で落とされた」


「戻れますか?」


セラが問う。


俺は周囲を見る。


来た道は、完全に塞がっている。


「無理だな」


正直に言う。


「出口を探すしかない」


セラは、一瞬だけ唇を噛んだ。


だが、すぐに剣を握り直す。


「……やりましょう」


それだけだった。


魔物の気配。


複数。


遠くない。


「戦うのは、最低限だ」


「はい」


神のコメントが流れる。


[煽り好きバアル]『盛り上がってきた』

[現場猫神カーン]『やばい』


「煽るな」


低く言い捨てる。


ここは、遊び場じゃない。


配信のための舞台でもない。


生きて帰るための場所だ。


「行くぞ」


松明を掲げ、前へ進む。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけたら、

★評価・感想・ブックマークで応援してもらえると励みになります。


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ