表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/49

第21話|称号獲得

ギルドの奥にある事務室は、いつ来ても静かだった。

ギルドに戻った俺たちは、なぜかそのままここへ連れてこられていた。


掲示板前の喧騒とは別世界のように、

紙の擦れる音と羽根ペンの走る音だけが響いている。


「ユウト・クロセ、セラ・ミトラ」


名前を呼ばれ、二人で顔を上げた。


受付嬢ナディアが、珍しくこちらをじっと見ている。


「……何か問題でも?」


思わず身構えると、彼女は首を横に振った。


「いえ。むしろ逆です」


机の上に、二枚の冒険者証が置かれる。


淡く、光った。


《冒険者記録 更新》


文字が浮かび上がる。


「ここ数日、連続で依頼を成功させていますね」


「低難度ばかりですけど」


「それでも、です」


ナディアは淡々と告げる。


「失敗なし。負傷なし。期限超過なし」


……言われてみれば、すべて守っている。


「冒険者の多くは、どれかを落とします」


彼女はそう言って、木札を一枚差し出した。


《称号付与 通知》


《称号:生存者》


一瞬、意味が分からなかった。


「……称号?」


《神観測ストリーム:ON》


[今日も暇な女神]『きた!』

[戦術屋ヘルメス]『世界称号だ』


表示が続く。


《称号:生存者》


・一定期間、危険区域での依頼を失敗なく継続達成

・死亡率が高い冒険者帯での安定行動を評価


効果:


・致命傷回避時、行動硬直を軽減

・恐怖状態への耐性微増


「……地味だな」


思わず漏らす。


ナディアが即座に言い返した。


「生き残ること以上に、冒険者に必要な才能はありません」


正論だった。


セラが、少し目を輝かせる。


「すごいですね……正式な称号って」


「いや、派手さはない」


「でも、ユウトさんらしいです」


……褒めてるのか、それ。


[300年ROM専]『生存は最上位スキル』

[観測者アレス]『軽視するな』


称号は、数値を大きく上げるものじゃない。


だが、確実に“死ににくくなる”。


世界が俺を、少しだけ信用した証だった。


「ちなみに」


ナディアが事務的に続ける。


「この称号は、冒険者全体の上位三割未満しか所持していません」


「……え?」


「大半は、最初で無茶をしますから」


納得しかなかった。


「今後も、同様の働きを続ければ、上位称号へ派生します」


上位。


その言葉に、少しだけ現実味が生まれる。


「無理はしない」


そう告げると、ナディアはわずかに微笑んだ。


「それが一番、珍しい方針です」


ギルドを出る。


夕焼けは穏やかで、街はいつも通りだった。


何かが劇的に変わったわけじゃない。


魔物が減ったわけでも、歓声が上がったわけでもない。


それでも――


「世界に名前を覚えられた感じがします」


セラがそう言った。


「気のせいじゃない」


冒険者証を握る。


数字でも、運でも、ガチャでもない。


積み重ねが、形になった。


《神観測ストリーム》のコメントが流れる。


[神界新人ミコト]『努力が報われる回』

[今日も暇な女神]『好き』


異世界で生きるということは、

派手に勝つことじゃない。


――死なずに、明日へ行くことだ。


ユウト・クロセは、

冒険者としての“最初の称号”を手に入れた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


面白いと思っていただけたら、

★評価・感想・ブックマークで応援してもらえると励みになります。


次回もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ