第19話|パーティ結成
ギルドの受付前は、昼時で混み合っていた。
依頼書の張り替え。
報酬交渉。
軽口と罵声が飛び交う。
昨日までなら、俺はこの喧騒に気圧されていただろう。
だが今日は違う。
隣に、セラがいる。
「……緊張しますね」
「最初は誰でもな」
声を低く返す。
《神観測ストリーム:ON》
[今日も暇な女神]『並んで歩いてる』
[神界新人ミコト]『尊い……』
「変なこと言うな」
聞こえない相手にツッコミを入れると、
セラが不思議そうにこちらを見る。
「今の……独り言ですか?」
「……まあ、そんなとこ」
完全に誤魔化しきれていないが、深掘りされなかった。
助かる。
受付嬢――ナディアが顔を上げる。
「ユウト・クロセ。隣は?」
「セラです。パーティ申請を」
言った瞬間、周囲が少しざわついた。
例の噂のせいだ。
ナディアは一瞬だけ眉を動かし、事務的に頷く。
「二人とも冒険者証を」
木札を重ねる。
淡い光が走り、登録が完了する。
《パーティ名:未設定》
「名前は?」
「保留で」
即答した。
「変なのつくと困る」
[煽り好きバアル]『神配信団』
[今日も暇な女神]『ださ』
「聞いてない」
セラが小さく笑う。
「あとで考えましょう」
掲示板へ移動する。
低〜中難度の依頼が中心だ。
討伐。
採取。
護衛。
「どれにします?」
「今日は様子見だ。連続依頼は避ける」
セラは頷いた。
「はい。無理しない方が、長く続けられます」
……真面目すぎる。
[観測者アレス]『相性いいな』
依頼を一つ剥がす。
《街道南・薬草採取/危険度:低》
「これで行こう」
「了解です」
街を出る。
並んで歩くと、自然と歩幅が合った。
沈黙が、気まずくない。
「……ユウトさんって」
歩きながら、セラが口を開く。
「戦うとき、あまり前に出ませんよね」
「死にたくないからな」
即答すると、彼女は少し困ったように笑った。
「でも、判断が早いです」
「褒めてる?」
「はい。すごく」
照れた様子はない。
ただ、事実として言っている。
それが逆に、むず痒かった。
森に入る。
薬草を採取しながら、警戒を怠らない。
《境界観測者》が、淡く反応する。
「ここから先は、出る」
指で示すと、セラは即座に止まった。
「分かりました」
理由を聞かない。
信頼とは、説明を求めないことなのかもしれない。
小型魔物が一体。
セラが前に出る。
俺は後方から周囲を見る。
声を出さず、合図だけ。
彼女は迷わず動いた。
短いやり取り。
無駄のない連携。
戦闘は、数十秒で終わる。
「……今の、すごくやりやすかったです」
「俺もだ」
それは、嘘じゃなかった。
《神観測ストリーム》のコメントが流れる。
[戦術屋ヘルメス]『役割分担完成』
[考察厨オルフェウス]『後衛指揮型だな』
帰路。
セラが、ふと真剣な顔で言った。
「ユウトさん」
「ん?」
「もし……私が危ない時」
少しだけ言葉を探し、それから。
「見捨てますか?」
足を止める。
少し考えてから、答えた。
「助けられない時は、逃げる」
正直な言葉だ。
「でも、助けられる可能性があるなら――」
視線を合わせる。
「絶対に諦めない」
セラは、少し驚いた顔をして。
それから、強く頷いた。
「……はい」
その返事で、十分だった。
街に戻ってから
二人は、正式に冒険者パーティになった。
まだ強くはない。
だが――
一人より、確実に前に進める。
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