第17話|初10連ガチャ
朝の光が、宿の窓から差し込んでいた。
目を覚ました瞬間、まず確認するものがある。
《神観測ストリーム:ON》
[今日も暇な女神]『おは』
[神界新人ミコト]『おはようございます!』
「……もう当たり前みたいにいるな」
軽く伸びをしながら、視界の端を確認した。
投げ銭ポイント:1,247
「……は?」
思わず二度見する。
昨日まで、三桁だったはずだ。
[課金は文化]『昨日の余韻』
[観測者アレス]『切り抜きが回っている』
「切り抜きで投げ銭すんのかよ.....」
どうやら、神界にも“後追い視聴”文化があるらしい。
数字が安定して増えている。
それはつまり――
「10連、回せるな」
コメント欄が一気に騒がしくなる。
[煽り好きバアル]『きた!』
[戦術屋ヘルメス]『慎重に』
[考察厨オルフェウス]『排出期待値的には——』
「はいはい、黙って見てろ」
冗談めかして言いながら、深く息を吸う。
これは“初”だ。
単発とは違う。
10連。
神投擲ガチャの仕様を開く。
《神投擲ガチャ》
・10連実行可能
・消費ポイント:1,000
《内部レアリティ》
N:60%
R:25%
SR:12%
UR:3%
「……冷静に見ると、UR低すぎだろ」
[今日も暇な女神]『夢はある』
[300年ROM専]『現実は非情』
「正論やめろ」
指を伸ばす。
迷いはない。
「10連、いくぞ」
《ガチャを実行します》
円環が現れ、十の光が順番に落ちていく。
一つ、二つ――
白。
白。
青。
「……まあ、そんなもんだよな」
[神界新人ミコト]『ドキドキします……!』
四つ目、五つ目。
青。
青。
六つ目。
金色。
「……お?」
[課金は文化]『きた』
[観測者アレス]『SR以上』
七、八。
白。
青。
九つ目。
金。
「二つ?」
[煽り好きバアル]『勝ち』
最後。
十個目の光が、ゆっくりと色を変える。
紫。
一瞬、空気が止まった。
[今日も暇な女神]『あ』
[300年ROM専]『UR』
「……まじか」
結果が並ぶ。
【10連結果】
・N:4
・R:3
・SR:2
└《索敵強化》
└《耐久上昇(小)》
・UR:1
└《称号:境界観測者》
「……称号?」
スキルでも武器でもない。
一番、扱いづらそうなやつだ。
効果表示が展開される。
《称号:境界観測者》
・危険域と安全域の境目を直感的に感知
・神由来効果の干渉範囲を視認可能
「……地味じゃね?」
[戦術屋ヘルメス]『いや強い』
[考察厨オルフェウス]『後半壊れるやつ』
[現場猫神カーン]『生存特化』
派手な火力はない。
だが、今の俺に一番必要なものだった。
「……結局、生き延びろってことか」
神たちは、楽しそうだった。
[観測者アレス]『いい引きだ』
[300年ROM専]『派手さより物語向き』
ポイント表示が247になる。
静かな満足感だけが残った。
「さて」
立ち上がり、剣を手に取る。
「今日は試運転だな」
戦うためじゃない。
確かめるために。
何が見えて、
どこまでが“神の届く世界”なのか。
配信者は、新しい“目”を手に入れた。
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