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第4話神血武装

「アラ、他の馬車が乗り心地があまりにも悪いのですか、血殺師様?」

 エンヤは魔導書をゆっくりと閉じ、本の内容から離れて、今やってきた北辰に注意を向けた。目を半分ほど柔らかく閉じ、口元に隠れた微笑みを浮かべた。

 明らかに、エンヤは外で何が起こったのかを知っている。

 おいおい、この恨みと皮肉がこもった口調はどういう意味なんだ…

 北辰は今、どこにいてもいじめるを受ける。

「勘弁してくれよ。今の僕は静かなところで休みたいだけだ」

「つまり、私を存在しないものとするつもりなのか?」

「おいおい、勝手に人の言葉の意味を歪めるなよ」

「君の腐りを放つ、のような目を見ると、私が何一つ言葉を歪めていないことが確信できるよ」

「好きにしよう。ここには誰も座っていないでしょう?」

 北辰はエンヤの向かいの席を見て、言葉と視線で彼女の返事を得ようとした。

「かまわないよ。ここでは私の意見を聞く必要はないわ」

「人の言葉を歪めるのはいいとしても、誤解を招きやすいあいまいな言論まで発表するなんて」

 閉ざされた空間で、容姿が美しい女の子が、男に対して、彼のここでのどんな行為も彼女の許可を得る必要がないと言う。

 この対象に、女の子自身も含まれているのでしょうか。

 おそらく多くの男の子が北辰の立場に置き換えて考えると、エンヤの言葉のもう一つの意味を考えずにはいられないでしょう。

「あいまいな言論?私の言葉には何の複雑な考えも混じっていないわ。君が馬車の中で、少し休みたいのか、それとも寝るのも…」

 やっと気づいたのですか。あいまいな言葉。

「寝る…一人でもかまわない」

 本当に悪い発言だ。もし北辰が感情を経験したことがない純粋な男の子なら、エンヤのこれらの誤解を招きやすい言葉で、自己拷問に陥っているかもしれない。

 でもエンヤの顔には思春期の少女が出すべき照れ隠しと顔の赤くが現れず、耳の色にも何の変化もない。

 彼女はただ普段の表情で自分の考えを述べただけだ。

 やはり、この子は普通の可愛い女の子と違う。彼女は恋愛に対して憧れを持たないし、他人との交流の中でも自分の本心を隠さない。

 北辰はエンヤのイメージに基本的な認識をまとめるしている。

「君、本当に男の友達がいるのか?」

 突然一つの可能性を思いついたので、北辰はエンヤから確認を得ようとした。

「ロゴスは一つの例だ。君なら、試してみることもできるわ」

 エンヤのぎこちない返答を見ると、北辰の推測が一気に確証された。

「それではこれまで男の友達がいなかったんですね?ロゴスというやつ以外は」

「この点は私が否定できないね」

「本当におかしい。君のような可愛い女性なら、君に近づきたい若い男が足りないはずがないでしょう」

「そうなのか?」

「この関して、君に少し自覚があってほしい」

「残念ながら、私の個人的な経験が示している、君が言うような美しいことはないわ」

 エンヤは元々閉じていた魔導書を開けた。彼女は北辰とこのような終わりのない日常の会話を続けるつもりはない。

 というか、少女は話題が自分の過去に及ぶ前に、それを止めた。

「寝ようと思うなら、ゆっくり休んでください。今夜のことを経て、明日、ロゴスは簡単に君を見逃しないよ」

「この脅しの意味が満ちた言葉はどういう意味?」

「文字通りの意味。おやすみ」

 …

「北辰くん、君の神血武装を見せてもらう時が来たでしょう。いつまで魔導具を使って戦うつもりですか?」

 ロゴスは巨大な鉄剣を振り回し、楽々とその巨剣で魔物を各地に散らばる肉の塊に叩きつぶした。まるでこの巨剣が生まれつき非人生物を殺すための鋭器であるかのようだ。

 そしてロゴスが言う魔導具、つまり北辰が両手で握っている長剣は、人間の鍛冶師たちが解放された神血武装を模倣して作られたものだ。

 唯一無二の神血武装に比べると、一般的な魔导具には簡易な呪紋を刻むだけで、神血武装と同じの効果を発揮できる。

 最も重要は、低品質の魔导具は量産できることだ。一般人で構成される帝国軍はかつて、大量に装備された魔导具によって血族と対抗できた。

 魔导具の汎用性は、たとえ一般人でも使うできる。

 でも、魔导具にも欠点がないわけではない、そしてこの欠点は明らか。

 武器としての硬度は神血武装よりもはるかに劣り、特殊な呪紋でない魔导具は神血武装のように血族の再生を抑制できない。

「魔导具なら十分でしょう?この程度の魔物に対して、神血武装を使う必要はないでしょう」

「そうですか?では、これからの戦いは君に任せましょう」

 木のてっぺんに立っているロゴスが頭を回し、北辰を見向け、意味不明な笑みを浮かべた。

 それとも、北辰にとって、これは善意のない笑顔なのか?

「では、お願いします」

 ロゴスは力を込めて後ろに跳び、百メートルも離れた場所に着地した。意図的に戦場となる場所を空けるような感じだ。

 ロゴスの言葉の意味をまだ理解しきれないうちに、北辰の魂が野性に満ちた強烈な殺意を捉えた。

 ロゴスから目をそらして自分の足元を見ると、大地全体が震えており、赤子の泣き声のような咆哮声が伴う。

 腐肉と骨で構成され、憎むべき顔をした羽獣が地面を突き破り、重力の引きつけを無視して、まっすぐに北辰に向かって突進してきた。

 刹那、周囲の木々が急速に枯れてしまい、空気中に濃い緑色の死体臭が充満している。

 間違いない。これは腐食の死鳥だ。

 この怪物が北辰に与える印象はあまりにも強烈だ。

 腐食の死鳥の鋭い爪が襲いかかる。北辰には反応する時間もなく、手に持っている長剣で爪の攻撃を受け止めるしかない。

 カチッ!

 北辰は狩人の矢に射られた鳥のように、地面を離れたばかりで、またからだをコントロールできなくなって落ちていく。

 手に持つ魔導具の長剣は、今握っている部分だけ残っていて、切れ口からは刺激的な腐敗の臭いが絶え間なく発散している。

 伝えられるところでは、世界で最初の腐食の死鳥が、人類の邪悪な教団が悪神を召喚儀式で生まれた。それで、腐食の死鳥は腐敗の神の使いとしてこの世界に来た。

 その爪は腐敗の神から祝福を受けており、十分な魔力で保護されていないものを腐食させる。

「こうなるなら、仕方がない」

 恐らくこれもログスが望むことだろう。このような状況で、北辰が頼れるのは自分だけだ。

「目覚めよ、終焉聖剣!」

 元々の長さがただ二十センチの黒い短剣が、北辰が神血武装を解放する呪文を簡単に唱えた後、黒い炎が短剣を覆い、すぐ横方向に広がり、一瞬で長さが百五十センチ近くの大剣になった。

 北辰は大剣を振り回し、剣身を包む黒い炎が周囲に広がった。

「黒い炎?」

 ロゴスはこのような色の炎を初めて見た。思わず目を大きく開け、剣に付着している黒い炎を見つめた。彼は漠然とした親近感を感じた。

 黒曜石のような剣身と朱い紋様、剣锷の間には暗赤色の宝石が嵌められており、この剣の名前と同じように、腐食の死鳥に劣らない不吉な気配を放っている。

 空に飛んでいく腐食の死鳥が翼を収め、死体臭が漂う口を開け、急降下する姿勢で人間獲物に向かって襲いかかる。

「お前ヤチのような醜い魔物なら、この程度十分だ」

 北辰は素早く後ろに引き下がり、この致命的な一撃を避けた。地面はちょくせつ直径が10メートル以上の穴が開けられてしまった。

 接近する前に、腐食の死鳥が激しく身を回し、骨の翼で周囲の土を前に舞い上げ、北辰の視線と攻撃リズムを妨害しようとした。

 しかし北辰は緊張しなかった。彼は少し体を曲げ、土の妨害を避けた後、駆け足で一気に距離を縮めた。

 取ったぞ!

 北辰は心の中でこっそり喜んでいる。

 終焉聖剣が下から上への斬りつけで、腐食の死鳥の片側の骨の翼を切り落とし、それによって苦しい悲鳴を引き起こした。

 腐食の死鳥は翼を失う痛みを堪えながら、すぐに緑の輝く爪で反撃し、北辰のからだを引き裂こうとした。しかし、この一撃は終焉聖剣に簡単に受け止められ、そのついでに頭を傷つけられた。

 また苦しい鳴き声がしたが、最初のような鋭い声ではなく、頭が大きく傷ついたことによる低い悲鳴だった。

 イマだ。

 北辰は腐食の死鳥が苦痛から立ち直る前に、一撃でそれを倒す!

 距離を縮め、両足で力を入れて跳び、目で追えない速さで腐食の死鳥の前から一瞬にその後に移動した。

 この過程で、終焉聖剣の鋭い刃は既に腐食の死鳥の首と体を切り離している。

「素晴らし!立派な戦いだ。そしてなんと美しい炎」

 腐食の死鳥を成功うらに討ち取った後、ロゴスも巨剣を収めて、北辰のそばに来た。

 心理準備はできていたけれども、ロゴスは依然として北辰の神血武装が信じられないほどだと感じた。

 それに、敵は腐食の死鳥なのだ。彼は北辰のようにそう簡単に戦いを終わらせることができるとは限らない。

「びっくりさせないでよ。僕が内通者かどうかを確かめるにももっと別の方法を使えよ。こっちの心臓はとても弱いんだから」

 北辰はわざと少し不愉快そうな様子でロゴスに文句を言って、彼の反応を観察したいと思った。

 このような試探によって、ロゴスの目つきが不自然になり、まわりの景色をあちこち見て、もう北辰と目を合わせなくなった。

「まあ、実は私はいつでも君を助ける用意があるよ。君が勝てなくても構わないんだ」

「それは君がその場ででっち上げたんだろう。でもここに腐食の死鳥が出没するなら、付近に血族や他の魔物がうろついていないことを証明しているんだ」

 腐食の死鳥がだんだん消えていく死体を見ながら、生まれる灰が風に乗って空に向かっていく。

 しかし、新しい問題が北辰の心に浮かんできた。

「もう遅い時間だ。私たちも隊列に戻って休むべきだ」

 そうだ。北辰というついてない男は昨夜エンヤの言葉のため、ずっと寝ていなかった。太陽がまだ昇らないうちに、ロゴスに肩に担がれて、隊列の予定された進路に連れて行かれ、途中で出会う魔物を排除する手伝いをした。

 午前は二人と様ざまな魔物との戦いの中で過ごした。もしたまにでも腐食の死鳥を見つけなかったら、ロゴスの好戦な性格で、商隊より二日早く炎の城に到着するかもしれない。

 魔物を殺す方式で。

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