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第17話意外な終わる

 剣の表面は黄金のような輝きで包まれており、普通の剣よりもずっと重い。

 北辰は何度か気ままに振る舞うと、すぐにこの剣の重さに慣れた。

「ありがとう、大変助かった」

 北辰は剣を高く掲げ、背後で助けてくれた人に感謝した。

 その後、剣はゆっくりと下がり、ついに剣先がレノに向けられた。

「続けるつもりか?」

「チッ、望むとおり」

 レノは北辰の手にある聖遺物がなんとなく見覚えがある。聖遺物を武器として手に入れたとしても、古い血統を持たない平民の北辰が自分を打ち破るなんて、彼は考えない。

 目の前の北辰はきっと昨日と同じように、無理やり落ち着いているふりをしている。この手口、レノはもう二度と間違えないと思っている。

 決闘のルールは人類の歴史が始まって以来、本質的な修正を受けていない。

 簡単に言えば、全力を尽くして相手を倒すことで、そのためには人の命を奪うことも惜しまない。

「じゃ、早く始めよう」

「生意気なやつ、口を裂いてやる!」

 北辰は一時的にレノを圧倒したが、北辰は逃げるチャンス、あるいは体裁のいい敗北を待っている。

 逃げたい…

 表情が氷の層のように冷たい北辰は、心の中でエンヤ様の降臨を祈っている。

 いや、決してこんなことを考えてはならない!

 北辰はすぐにエンヤに頼ろうという衝動を否定した。そうでないと、将来「エンヤの刃」と笑われるかもしれない。

 まあ、実際この称号も悪くない。

「断ち切れ!炎獄鎌!」

 レノ・スヴィッチの神血武装は巨大な赤い鎌で、使用者よりも半分ほど高い。

 刃の部分は炎が燃えており、水滴が地面に落ちるように。

 神血武装の特性は基本的に両親の一方から受け継がれる。スヴィッチは炎の城フレムニアの名門で、代々フレムニアで採掘される神血を飲んで力を強化してきた。

 レノの代になると、受け継いだ神血は純粋な炎だけになっている。

 昔、ロンギヌス王に最も近い伝承だった。

「炎?」

「どうした?今さら怖いと感じた?これでは遅すぎる!」

 レノは鎌を振る舞うと、刃の上の炎が踊る精霊のように彼と一緒に空中に跳ね上がる。見物の学生たちは十数メートル後ろに引き下がる。

 北辰を迎えるのは、美しくて鋭い回転斬りだ。

「戦技——炎舞斬撃!」

 レノの斬撃の跡を追って、空中に美しい炎が燃え上がる。

「派手で実質がない」

 北辰はただ後ろに一歩跳んで、着地する最強の一撃を避けた。しかし、レノの攻撃はこれで終わらない。続けて数回の斬撃が北辰の前に落ちる。空気が一瞬切れる波を感じることさえできる。

「くそ、ただ避けることしかできないのか!」

 レノの毎回の斬撃が命中しそうになるとき、北辰はいつもちょうど避ける。

 猛烈な攻勢に直面して、北辰は正面から対抗することを選ばない。彼は持続的な回避の中で一撃で決闘を終わらせる瞬間を探そうとしている。

 つまり、北辰の習慣は相手の攻撃に適応し、それを破る方法を見つけることである。

「このままで、残りの魔力で何度の戦技を出せるだろう?」

「言われなくでも!」

 レノは怒りで再び戦技を使うが、やはり前回と同じで、毎一道の斬撃は北辰の周りの空気を裂くだけである。

 戦技は神血武装に刻まれた、唯一無二の技術と戦法で、血殺師は大量の魔力を消費して戦技を発動する。

 威力が強ければ強いほど、消費する魔力も多くなる。

 客観的に言えば、レノの戦技は既に高級血殺師の全力一撃に匹敵し、さらに超えている。

 これは彼の血統の伝承が古いだけでなく、同様に、彼の才能も一般人よりもずっと高いからだ。

「残念だが、君の努力は足りない」

 二人の武器がぶつかり、引きつけ合っている時、北辰はレノだけが聞こえる声量で、自分の失望を伝えた。

「てめえ——」

 レノは歯ぎしりをする、表情が益々醜くなる。彼はこれほどの屈辱を受けたことがない。エンヤを慕うことで拒否されたことさえない。

 ……

「止めないの?」

「その必要はない。それに、あの子が既に帰ってきた。もし彼が聖遺物を貸し出さなければ、この戦いは起こらなかったかもしれない」

「やはり気をつけておいた方がいいよ。学園の入り口で決闘が起こるなんて、おそらく初めてだろう」

「結局、スヴィッチの息子が君がつい最近見つけた娘に魅入られたんだよ」

 フレイム王立学園の上空に浮かぶ離宮で、威厳のある表情をした金髪の中年男性と、容姿が美しく尖った耳を持つ若者がそこの露台で碁を打っている。

 二人の目は地上の学園入り口を向けていない。むしろ、碁盤の各駒に精力を集中しており、たとえ地上の状況を詳しく知っているにも関わらずである。

 尖った耳を持つ美しい若者、刈り込まれていない髪が乱れて地面に散らばっている。彼はフレイム王立学園の学園長、エリガンス・アルビオンである。

 エリガンスの向かいに座る金髪の中年男性、彼の顔立ちは立体的で端正で、碁盤を深く考えながら見つめる様子はいつも古代の白色の彫像を連想させる。

 グレイル・メシアス、フレムニアの支配者、所有者で、帝国の最強の一人で、血殺師協会によって王級位階を超える可能性が最も高いと認定された血殺師で、同時にエンヤとエンゼルの父親で、メシアス家の家主でもある。

「私はロバートに彼の息子をしつけさせるようにします。今行われている決闘は…」

「君はこんなにも意外を恐れるのか。君は老いたな」

 エリガンスは目立たない一つの駒を動かし、碁盤上の劣勢を一気に挽回した。

「精霊と比べれば、私はまだ子供だ、エリガンス先生」

 グレイルは反撃し、数ターン後にエリガンスの攻撃を止めさせた。

「チェックメイトだ」

 エリガンスが対局を終わらせた。グレイルの反撃はただ均衡の見える状況を装っていただけで、対局を終わらせるその目立たない駒は最初から彼が布石していたのだ。

「百年前の予言、遠い彼方からの稀人が遥かなる歳月の河から帰ってきて、修復された王冠を被り、再び王座に就く」

「エンヤを助けたあの少年?彼の体には確かに正体不明の稀人の血が流れている」

 エリガンスはグレイルの推測に応じない。碁盤上の対局は勝者が決まったので、彼とグレイルの面会もそろそろ終わりである。

 向かいのグレイルはエリガンスの沈黙から自分が去るべきことを知った。彼は自分のコートを取り上げ、伝送陣の方へ歩き始める。

「吾たちは会うことは少ない方がいい。君は吾と同じように暇ではないだろう」

 グレイルはエリガンスが口にした忠告を聞いて、彼の大きな体が一瞬止まった。その言葉の意味を考えるように見え、それから再び伝送陣の方へ歩き始める。

 伝送陣が起動するまで、二人の視線は再び交差しなかった。

 ……

 北辰が言ったように、戦技を使って北辰を倒そうと必死のレノは、もう体に残る魔力がほとんどなくなっていた。彼の顔は血の色を失い始め、白くなっていた。

 それに対して北辰は、口を使って呼吸さえせず、背中を汗で濡らし、ずっと息を切らしながらいるレノを冷たく見つめていた。

 この決闘を傍観している貴族の学生たちでさえも、レノの方が劣勢に立っていることがわかっていた。北辰はただ戦技を回避することを繰り返しているだけで、状態にほとんど影響がない。

 しかし…

 今、北辰の方がレノよりも緊張している。

 失敗した…

 北辰はレノがこんなに狂って、制限なく戦技を使うとは思わなかった。それも威力が大きく、命を脅かすような戦技だ。

 もし体で斬撃を受け止めたら、恐らく肌は一瞬で付着した炎で焦げ黒くなるだろう。

「おい、僕たちの決闘はやめようか」

 諦めた北辰が手を広げると、彼は本当に停戦したいと思っている。この決闘を勝つことに彼には何のメリットもない。

「断る!」

 レノが大きな声で叫び、自分の神血武装を握りしめて北辰に向かって突進した。

「仕方ないな」

 レノが和解を拒否したので、北辰も選択を迫られた。

 北辰も両手で黄金色の輝きを放つ剣を握りしめ、レノの最後の斬撃を迎える準備をした。

「お二人、学校の秩序を乱すなわ」

 優しい声が人々の中から伝わってきて、北辰とレノはそれを聞いて共に親しみと恐れを感じ、同時に声の元を見た。

 しかし、二人が話している人を見た瞬間、高速で回転する黒い光球が二人の視界を素早く占めた。

 同時に強い気圧と魔力の波動が…

 パン!

 決闘の中心で目を刺すような白い光が閃いた。周囲の学生たちが痛みに耐えて目を開けた時。

 北辰とレノ。

 決闘の主人公たちはもういなかった。

 代わりに、入り口の端の楓の木のトップには何かで穴が開いており、下の枝には剣を持つ一人の男が逆さにぶら下がっていた。それが北辰で、彼の体には何枚もの楓の葉が付着していた。

「ロゼッタ・アルビオン…」

 楓の木に逆さにぶら下がりながら、印象深いその顔を見た。いつも優しい笑顔を浮かべ、慈愛の目で人々の期待に応える。

 彼女と一緒にいるのは、青い美人のエンヤもいる。

 ロゼッタは、自分が魔術で吹き飛ばした北辰にまるで気付かないように、学生たちのあいさつを受け入れている。

 エンヤだけが、「朝から君はまた何をやっているんだ」と言わんばかりの目で北辰と視線を交わし、そしてロゼッタを追って学園に入った。

 もう一人の被害者、レノ・スヴィッチに関しては…

 北辰は視線を楓の木の隣のベンチに移した。もう意識を失ったレノによって二段に折れてしまっている。

「学…学生会長、本当に申し訳ありません…」

 大きな衝撃で昏睡状態になっているが、レノはなおも本能的にロゼッタに謝ろうとしている。

「言ったでしょう、早く停戦してればこんなことにならなかったんだから…」

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