43 その後
しばらくして捕らえられたディラック侯爵家の人間や兵士たちとともに舞踏会のホールの中へと進むと、セオドーラと彼女のそばでとても不安そうに佇んでいるウィリアムがホールの真ん中にいた。
しかし、向かい合っているシルヴィアたちを警戒するように騎士たちが彼女たちの前に立ちはだかっており、剣呑とした雰囲気だった。
「セオドーラ王妃殿下、このような大切な日に突然、行動を起こしてしまい大変申し訳ありませんわ。しかし殿下、わたくしは決して王家に対して害を為そうとしているのではありませんの」
「…………」
シルヴィアの言葉にセオドーラは、ウィリアムを片手で抱き寄せてそばにより、とても長く逡巡していた。
このまま彼女がなんとなくうまくやるような気がしていたが、よく考えればこうなることも簡単に想像がつく。
台無しとまでにはいかないが、こんな風に問題を起されてそれが自分たちに害を為すものかそうではないかこの時点ではセオドーラは判断が難しい。シルヴィアはああ見えて普通の伯爵令嬢だったはずだ。
また何かひと悶着起きるのか。多くの人がそう考えているのか探り合うような雰囲気が広まっていた。
「……アイリス、俺いってくるね」
しかし隣にいたレナルドは普段通りの優しい笑みを浮かべて剣を鞘にしまい、アイリスから手を放して前に進み出た。
彼がいけばシルヴィアとナタリアを警戒していた様子の騎士たちも警戒を緩めて、レナルドだけはセオドーラのそばに寄ることを許される。
ウィリアムも何やらレナルドに一生懸命に何かを話しかけている様子で、それに笑みを向けつつ、セオドーラに事の顛末を伝えている様子だった。
しばらくレナルドの話を聞いたセオドーラは、警戒していた騎士たちを引かせてシルヴィア……の方ではなくナタリアに向かって、少し硬かったが笑みを浮かべて言った。
「状況はわかりました。クランプトン伯爵、セオドーラの名においてディラック侯爵家の罪に対する告発、認証いたします。
すでに証拠をお持ちという事ですから今から、詳しくお話を聞きましょう。
今日の建国祭の舞踏会は一時中断、建国祭の期間中に再度、設ける形にします。
しかし、急な予定の変更になりますからこのまま通常通りの舞踏会としてお集りの方々は、歓談やダンスを楽しんでください。
わたくしからは以上です、それぞれ持ち場に戻り、自身の仕事を遂行するように」
セオドーラがそう口にすれば、周りにいた使用人たちはうやうやしく頭を下げて、騎士たちはきれの良い返事をする。
一方ナタリアはセオドーラに声をかけられたことで緊張したのか顔を青くさせて首を縦に振っている。
そんなナタリアと手をつなぎながら隣にいたシルヴィアは、自分についてきた貴族たちに、家名の分かる物か、無いならばここにサインを残して後は自由にしてよいという。
彼女の侍女がペンと紙を城の給仕に要求し、そちらに記載するようにテーブルに案内した。
ディラック侯爵とアルフィーはすでに運ばれてその場にはいなかった。
きっと貴族用の投獄施設となっている地下へと運ばれていったのだろう。
周りにいた貴族たちは何が起こっているか理解していないものが大半だったように思うが、何か重要な事態だと察した者たちはシルヴィアにうながされて名前を書き終わった貴族たちに群がって話を聞こうとしている。
それを見て、サインを残すことを渋っていた貴族たちも我先にとペンを握る。
人というのは案外単純なものだと思いながらもアイリスはセオドーラたちに続いて話し合いの場に向かったのだった。




