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【連載版】捨ててくれて、大変助かりました。  作者: ぽんぽこ狸


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38 シルヴィアの作戦 その一




 


 シルヴィアは時間になってもやってこないナタリアにイライラしながら、廊下で鋭い視線をあらゆる方向に向けていた。


 というのも、一人でこんな場所にいたらシルヴィアを狙っている男性たちに声をかけられてしまうからだ。


 シルヴィアはまだ結婚も婚約もしていない、だからこそ、うつくしくそして有用な魔法を持っている彼女を手に入れたい爵位持ちの男は沢山いるのだ。


 だから隙を狙っている男に邪魔されないように、シルヴィアは鬼気迫る表情でナタリアの事を探していた。


 すると予定から数十分遅れて、ナタリアがやってきた。赤い華やかな髪をなびかせて彼女は息を切らせながら走ってくる。


 そばに連れている侍女は大きめの鞄を持っており、それに少しホッとしながらシルヴィアはナタリアに問いかけた。


「ナタリア、遅いですわ。わたくし、あなたがしくじったのかと思って気が気ではありませんでしたのよ」

「こ、これでも頑張ったの! 遅れたのはあの人に見つからないように王宮に入るのに手間取って……」

「そうでしたのね、でもとにかくこうして会えて嬉しいですわ、ナタリア。うまくやったのでしょう?」

「それはもうもちろん! 私ったら諜報員の才能もあったなんて驚きでしょう?」

「あらそれは蓋を開けてみるまではわからないわ。今回の話だって賭けに近いのだから」

「何よ! 素直にほめてくれたっていいじゃない! シルヴィア」


 気持ちを落ち着けつつもナタリアの軽口に冷静にシルヴィアが返すと、ナタリアは頬を膨らませて、シルヴィアに甘えるように言った。


 人に寄っては図々しいと思う人もいるかもしれないが、シルヴィアはナタリアのこういう甘ったるい所が好きなのだ。


 仕方がないので彼女を廊下の目立たないところに連れていきつつ、いくつか用意されているドレスルームへと入る。


 舞踏会もまだ序盤なので人がいるということもなく、シルヴィアは設置されているドレッサーの方ではなく軽食が置いてあるソファーの方へと向かい、ナタリアを座らせ、侍女から鞄を受け取った。


「今日が終わったら山ほど褒めてあげますわ。ナタリア。さあ、あなたも手伝ってこの中に少しでもクランプトン伯爵家に対する悪意を証明できる内容が入っている手紙がないかくまなく調べるわよ」

「うん。わかってる……わかってるけどシルヴィア、本当にこんなことで借金が無くなってアルフィーと離婚できるなんて事あるの?」


 鞄を開いて、手紙を早速一枚取り出して、シルヴィアは急いで目で追う。


 追いながらもナタリアの不安そうな言葉を聞いて、シルヴィアは強気な笑みを浮かべた。


「……できますわ。というか、出来なくては困るのよ。とにかくわたくしを信じなさい。ナタリア、今は説明している時間はありませんの。やるべきことに集中して」


 シルヴィアが厳しく言うと、ナタリアは少し涙を浮かべて泣きそうになった。


 今日を迎えるまでに、とても辛い生活をしていたことは知っているし、また痣が増えている。


 そんな彼女にシルヴィアは杖を振って、適当に魔法を使って傷を治してやりながら読み終えた手紙をそのまま机に置く。

  

 するとシルヴィアの侍女は手早く手紙を封筒にしまって、シルヴィアが今読んでいるものが終わった時に封筒を開ける手間がないように、開封していく。


 それを見てシルヴィアは自分の意図を汲み取った侍女の行動に流石だと思いつつ、次から次に手紙を確認していく。


 シルヴィアと侍女の様子を見ていて、ナタリアの侍女も急いで二人の令嬢の仕事をサポートする。


 忙しない彼女たちに、ナタリアはもう少し休憩する時間があってもいいじゃないかと思うが、きっと普段は優雅でまったく急いでいるところなど見せない彼女がここまでしているのだ。


 緊急事態だしその緊急が誰のためのものなのかナタリアだってわからないほど間抜けではない。


 ナタリアの腕にあった青あざはシルヴィアの魔法で簡単に治って、今日までの苦労を彼女がねぎらってくれていないわけではないのだと何とか気持ちを持ち直して、手紙の内容を確認する。


 それはアルフィーとディラック侯爵とのやり取りの手紙であり、シルヴィアに言われてナタリアがこっそりと盗み出してきたものだ。


 そこに決定的な、情報が載っていることを願って二人は必死に手紙を確認した。


 

 数十枚を開いたあたりで、疑惑の判定のものがいくつか出てきた。そして、もう数枚確認すれば、決定的にディラック侯爵家がクランプトン伯爵家に対する悪意を持っていることがわかる文面が登場した。


 彼らの金銭的な問題につけこんだこと、騙すような形で契約を結ばせたこと、それからナタリアの魔法が広がっているせいで、人里に下りる魔獣の増加が広がっているという話まで記載してある。


 もちろんアルフィーの元にあった手紙なので、ディラック侯爵が焦って書いたものであることは明らかだ。

 

 ……これですわ。これがあれば今回の騒動に完璧なケリをつけることができる。


「ナタリア、目的のものを見つけましたわ。あなたはわたくしの後ろについてきてくださいませ。当たり前のような顔をして問いかけられたら頷いているだけでいいですわ」

「うんっ」


 シルヴィアが動き出すとナタリアも大慌てで立ち上がって、ドレスの裾を整えたり手紙を侍女に渡したりして、ついてくる。


 後は急いでダンヴァーズ公爵を見つけ、王族と渡りをつけることが必要だ。




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― 新着の感想 ―
今なら痣はすぐには治さずに写真を撮って証拠とするけど、すくなくても中世の世界観ならそれは難しいんだろうな。第三者に見せてあとで証言させても「ただの夫婦げんかでどっちもどっちなんです」で終わっちゃう時代…
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