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変身した偽りの神

「腕は6本だが、足は2本のままだなあ」

「ひょっとして、アソコは3本になっているかもね。頼もしいわ」

「いいや、頼もしいかは分かんねーぞ。お粗末なのがぶら下がっているかもしれないぞ」

「プフフ。やーだ」

「……」

 なんだ、この緊迫感の欠片もない下品なトークは。目のやりどころに困るではないか。


 6本の腕から次々と繰り出される魔法球が魔王を苦しめ、部屋の隅へと魔王を追い詰めていく。

「無限の回復魔法が、間に合わないぞよ~」

「マオウヨ、シーネ―! イママデオツカレサーン!」

「――!」

 さらに大きな六つの光を同時に魔王へと投げつけようと振りかぶったとき、神の動きがピタリと止まった。


 ――ずっと倒れていたデュラハンが白金の剣で神を背中から突き刺していた――。


「キ、キサマ、マサカ、イキテヤガッタノカ! チミドロデタオレテイタノ二」

「魔王軍最強の騎士を……舐めないでいただきたい。この一瞬のためにずっとやられたフリをしていたのだ!」

 え、小一時間も。

「な、なんだと。つまり、メスデュラハンにやられたのも作戦だったということか」

「……そうだ。当たり前だ。これを計算していたのだ」

 デュラハンの白金の剣は数ミリの狂いも無く神の心臓を突いている。


「オ、オノレエ、ウシロカラトハ……キシトシテヒキョウデハナイカ?」

 後ろ向きには魔法球を投げられないのを見越していたのか――。

「魔王様の窮地に卑怯もクソもあるものか。どのような汚名でも喜んで受けようではないか。――神の名を語る醜い獣よ、その罪を死んで詫びるがいい――!」


 ――デュラハン☆ダブルソフト・ブレッドーー!


「イテテテ、ブッハ―」

 渾身の力を込めて振り上げた剣から、水風船を割るように魔力が放出する。白金の剣に切れない物はない。コンニャクも切れる。冷や汗が出る、古過ぎて。

「マリョクガアア、ヨノ、マリョクガアアア、あれ、す、吸い取られていく~!」

 よく見ると放出した魔力が全部魔王の両手に吸い取られていく。いや、魔王妃も両手を出して吸い取っているぞ。

「グオオオオ……マオウヨ、ホントウニ、ヨイノダナ」

「なにがだ。断末魔の叫びなら手短に」

「……」

 最後の力を振り絞ってなにか言いたそうなのだが、吸い取られる勢いの方が強く、ゴーと音が大きくて聞き取りにくい。吸引力がダイソンもビックリだ。

「タタカイノナイヘイワナヨノナカガモタラスノハ、ダラクシタセカイダ。ニートハフエツヅケ、ショウシカハカソクスルイッポウダ」

「そんなことはないぞよ」

「カタカナばかりで喋りやがって。読みにくいったらありゃしないわ」

 魔王妃も酷いなあ。

「シクシク」

 しくしく言うな。声に出して言うな。

「イクジキュウカモカイゴキュウカモ、タダノヤスムコウジツニナリ、トラニャソンニナル。マワリノリカイナドエラレルハズガナイ。ヘイワダノビョウドウダノキレイゴトデハスマサレナイ、シュノソンゾクヲカケタタタカイガハジマッテイルノダ」

 話が長すぎて魔王が魔力を吸い取りながらウトウトしているぞ……。

「……ホロビルガイイ、マゾクモニンゲンモ。サイゴニワラウノハ、サイゴマデカチヌイタショウシャノミ。カタカナデナガナガスマナンダ、あああんあんあんぎゃアアアアーー!」


 膨大な魔力が光となり魔王城外まで弾け飛び、神の名を語りし獣は砂のようにこの世から消え去った。

「勝っ……た」

 ガランと白金の剣を落とすと、デュラハンは力なくその場へ倒れた。


「デュラハン。無事だったのか」

 魔王が駆け寄りデュラハンをひっくり返して抱き起す。

「イテテテ、傷口にガッツリ爪をかけて触らないでください。これくらい大丈夫です魔王様。日常茶飯事です。タフなのが我らデュラハン族の取り柄ですから……。今回はさすがにやばいと思いましたけど」

 胸の部分をさすりながらゆっくりと体を起こす。まだ血がダラダラ流れ出ているところに魔王が必死にガムテープを貼り付ける。

 茶色のネチャネチャするガムテープを……。

「お、お前、生きていたのか、オスデュラハン!」

「……オス? オスは付けないでくれ、メスデュラハン」

「すまなかった、オスデュラハン」

「……」

 そんな顔をするな。デュラハンが二人もいるとどっちがどっちか分からなくなるから面倒だろう。


「剣を抜く前に切りつけてしまって。騎士として恥ずべきことをした」

 顔を背ける。恥ずかしくて面と向かって言えない。首から上は無いのだが。お互いに。

「いや、私の方こそ未熟さを思い知らされたよ。イテテ」

 立ち上がろうとするのでそっと手を差し出した。


 彼が掴んだガントレットがギシッと音を立てる。金属だから冷たい。


「あ、あのう。連絡先を交換して貰っていいかなあ」

 えっ。

 急な展開に戸惑ってしまう。軽い女と思われると嫌なのだが、えっ、どうしよう、頬が赤くなるのが自分で分かる。首から上は無いのだが……。

「……お、お友達からなら……」


 どこから出したのかオスデュラハンは、小さな紙にそそくさとメモを書き手渡してきた。受け取るとポケットへササッとしまった。


「あれ、なにやってんのよ」

「ひょっとして、文通でも始める気か」

「羨ましいなあ」

 呆れ顔の四天王たち。

「さっきまで戦っていたのが嘘みたいだな」

「仕方ないんじゃないの。お互い絶滅危惧種だから」

「野生絶滅種らしいぞ。ひょっとして、妬いているのかサッキュバスよ」

「や、妬くわけないじゃない。バカ」

 サッキュバスがソーサラモナーの背中をバンと叩くと洗濯していない古びたローブから細かい埃が舞った。


読んでいただきありがとうございます!


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