表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/91

セレスティア王女からの手紙

「マリー、それ全部持って帰るの? 凄い量のお土産ね!」

 

 お母さんを光らない様にしたり、旦那様が精霊使いとしての訓練をしたり、コマローをフェアランブルへ連れて帰れる様に色々手回しをしてもらったり。

 着々と準備を進め、私達がフェアランブルへ帰国する日は数日後にせまっていた。

 

 今は、帰国へ向けてマリーが私の荷物をまとめてくれているところだ。

 こちらではもう使わないであろう私のドレスや装飾品をテキパキと詰める手際はさすがなのだが、その横に明らかに色々な食べ物が詰まった大きな旅行鞄があるのを見て、思わずクスリと笑ってしまう。


 こりゃ、領地に戻ったらベーカーが大忙しだな。


 フェアランブルに帰国するとは言っても、まずは王都に戻らないといけない上に裁判の準備もある。そう考えると、正直次に領地へ帰れるのがいつになるのかも分からないのだが、それでもマリーはこんなに沢山のお土産を用意して楽しみにしているのだ。


「はい! 食べ物はちゃんと日持ちする物を選びました! 残念ながら持ち帰れない物はレシピ本をゲットしましたし、王宮の料理人さん直伝のお料理メモもあるのです。お邸のメニューに、アウストブルク料理が増えますよー!」


 マリーがエヘンと胸を張る。


 うん、こんな問題にはさっさとケリを付けてしまって、早く領地に帰ろう。


 私がそんな事を考えながら一人頷いていると、ノックの音と共に王女殿下の声が聞こえてきた。


「アナ、ちょっと良いかしら?」


 王女殿下とは、特に約束も何もしていなかったので、不思議に思いながらも扉を開ける。


「帰国の準備もあるのにごめんなさいね。実は、国際裁判の件でフェアランブルへ遣っていた使者が、ハミルトン伯爵夫妻宛てに王家からの親書を預かって来たのよ」

「王家から親書ですか!?」


 あまりに驚いて、思わず大きな声を出してしまった。

 いかんいかん。しかし、王家から?

 え、何の心当たりも無いんですけど……。


「差出人はセレスティア王女殿下よ」


 セレスティア王女殿下? それこそお話もした事ない様な間柄なんだけど、いきなり親書?

 え、こわぁ……。


 嘘か本当かは分からないが、昔、フェアランブルの王家は兄妹仲が良いと聞いた事がある。

 これはもしや私のせいでお兄様が悲惨な立場に追いやられたとか、そういった恨みつらみの類いが書き綴られた手紙だったりするのだろうか?


 あれはどう考えても元王太子殿下の自業自得だとは思うのだけど、身内からしたらやっぱりそう割り切れないものなのかも知れないし。ひえぇ。


「本来であれば中身も確認してから渡したいところなのだけど、流石に他国の王家からの親書にそこまでは出来ないの。一応魔法で危険物や呪術の類いの心配がない事は確認しているから、ハミルトン伯爵も呼んでここで開けてみてくれるかしら?」


 じ、呪術!? 想像以上に物騒!!


 王女殿下が手紙の開封に立ち会って下さるのは心強いので、マリーに頼んで早速旦那様を呼びに行ってもらう。


「でも、考え様によっては、これはフェアランブル王家と話し合う良い機会なのではないかしら?」

「フェアランブル王家と話し合う……?」


 思わず首を傾げて王女殿下を見つめる。


「ええ。アナも迷っていたでしょう? 国際裁判での精霊の扱いよ」

「なるほど、あの件ですか。それは確かに王家に相談しないといけないですね」


 国際裁判では精霊の証言も歴とした証拠として扱われる。しかしながら、世の中では直接精霊を見たり話を聞いたり出来る人間の方が少数派なのだ。


 よって、国際裁判で証拠として扱われる精霊の証言は、あらかじめ(しか)るべき機関で聞き取り調査を行い、厳密な手順を経て文書化された物になる。


 アウストブルクや、他の精霊を認めている国でなら普通に受け入れられる流れだが、フェアランブルの法廷でこれをやったらどうなるか。

 想像しただけで頭が痛い。

 もちろん国際裁判にはそれだけの力があるから、相手が納得しようがしまいが力でゴリ押す事は出来るんだけど……。


「この裁判が、フェアランブルでも精霊の存在を大々的に認知させる良いきっかけになるとも思うの。フェアランブルは精霊の加護を失い過ぎだわ。いつか大きな自然災害だって起こるかもしれない」


 そう、精霊の力は自然と強く結び付いている。

 アウストブルクで精霊について学び知ったのだが、正直今のフェアランブルの状況は結構マズイと思う。

 王女殿下の言う通り、精霊の加護を失い過ぎているのだ。

 一部ハミルトン伯爵領みたいな例外はあるけれど、それ以外は気まぐれな精霊が田舎の方で少数暮らしている位。

 それこそ王都になんて精霊が全然いない。


「隣国で大きな自然災害が起こると、当然ウチの国にも悪い影響はあるわ。……この際だから白状してしまうと、私がフェアランブルからの縁談を受けた理由の一つに、この精霊の問題もあったの」


 なるほど、王女殿下は優秀な精霊使いだ。フェアランブルの王家に嫁ぐ事で、その辺りの精霊に関する考え方も改めさせるつもりだったのか……。



 王女殿下の、王族として使命を果たそうとするその姿勢には頭が下がるばかりだ。


 それに比べて、うちの品性下劣元王太子ときたら……!!


 これはやっぱり、もしセレスティア王女殿下から元王太子について何か文句を言われたとしても、ガッツリ言い返しちゃっていいですよね?


本日もお読み頂きありがとうございます!


リアル多忙により、一時的に不定期更新になっておりますm(_ _)m


現状週2回程の更新になっていますが、落ち着いたらまた曜日も固定していきたいと思っておりますので、是非続きも読みに来て頂けると嬉しいです!


いつもブックマークや評価、いいね、感想等ありがとうございます。更新を続けられているのは本当に読者様のお陰です! 感謝。゜(゜´Д`゜)゜。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] マリーが楽しそうでほっこりです。ベーカーさんがんばれ! [気になる点] フェアファンブルの王女様がどんなひとか… [一言] ご体調お気をつけてご無理なさらずにお願いします。またあれも流行っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ