これもまた一つの悲劇?
「お、お母さん! やり過ぎ!!」
「あらそう? ほら、天罰って中々過激じゃない? 洪水起こしたり。でも、洪水だと森の動物達にも迷惑がかかっちゃうでしょう?」
慌てて止めにかかる私に、相変わらずお母さんはおっとり返事をする。
え、それってお母さん洪水も起こせるって事? 怖いんですけど。
「それにほら! 全然懲りてないみたいよ。まだ扉をドンドン叩いてるもの!」
母よ、私にはその人達は雷から逃げたくて必死に建物に入ろうとしているのではないかと感じるのですが……。
「懲りないならこうだ! えい! えい!」
可愛い掛け声とは裏腹に、お母さんの手の動きに合わせて、ピシャーン! ビシャーン!! と稲妻が落ち続ける。
もう! 洪水は森の動物に迷惑かけるっていうけど、稲妻ピシャンピシャンも絶対驚くでしょ!?
地面を伝って感電したりしないかな……。
そこまで考えて、ハッとある事を思い出す。
そうだ! クリスティーナ!!
多分フォスとカイヤが近くにいるだろうから、滅多な事にはならないとは思うけど。
「ちょっと待って、お母さん! 下に私の知り合いもいるの!」
「まぁ! じゃあ雷はやめた方がいいかしら」
そう言うとお母さんはすぐに手を下ろす。
素直な人ではあるんだよね。
空気は読まないけど。
雷が止み、辺りが静かになる。
地上の騎士達もさすがに扉をガンガンするのはやめたらしい。
「お母さん、どうすればお父さんとも合流出来るの? 早くここから脱出したいんだけど」
「多分、もうすぐ私がいなくなった事に気付いて自分でここまで来ると思うのだけど……」
お母さんが『うーん?』と首を傾げた丁度その時、お母さんの映像が映っていた辺りの空がまた光り出す。
「ターニャぁ、酷いじゃないか。アナから何か反応があれば、絶対に私にも教えてくれと言ってあったのに……」
この声! お父さんだ!!
光の中から聞こえてくるのは、紛れもなくお父さんの声だった。段々と人影らしき物も見えて来る。
ああ、お父さん。もうすぐお父さんに会えるんだ!!
「お父さん!!」
「! その声! アナか!?」
私の声を聞いた人影が光の中から飛び出して来た。お父さんだ!!
「アナ!!」
「お父さん!!」
感動の再会に、私は両手を広げてお父さんに抱き付く勢いで駆け寄ったのに、私の姿を見たお父さんは何故かビシッと固まった。
え? 何で??
困惑する私を他所に、私の姿を上から下までしっかり確認したお父さんは、急に素っ頓狂な声を上げた。
「ア、ア、ア、アナが!!
大人になってるーー!!??」
さっきの雷にでも打たれたのかという程の盛大なリアクションを見せて叫ぶお父さん。
「もう、お父さん!! 5年も会ってないんだから当然でしょ!?」
「………………ごねん……?」
私の言葉を聞いて、お父さんの顔からスコンと表情が抜け落ちる。
「お父さん……精霊の国に行ってから、5日しか経っていないぞ? アナの事が心配で心配で、ご飯も喉を通らなかったのに……5年??」
プルプル震えながら私に向かって手を伸ばすお父さん。
もう今にも泣き出しそうだ。
確かに精霊の国と人間界では時間の流れが違うって聞いた事ある気はするけど、そんなに違うの!?
私としてはいきなり行方不明になられて5年も放っておかれて。
しかも精霊の国に帰ったなんて聞かされて、『お父さんもお母さんもヒドイ!』なんてちょっと思ったりもしたんだけど。
まさか、お父さんの方では5日しか時間が流れてなくて、しかも私の事をずっと心配してくれていたとは思わなかった。
それが実は5年も時が流れていて、突然大人になった娘が目の前に現れたのだ。
……悲劇すぎてかける言葉も見つからない。
「エド! 聞いて聞いて! アナったらねーえ、『結婚』したんですって!」
アンタ鬼かあぁぁぁーー!!??
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