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43 セルネオとルキノ

ゆるゆるのふわふわ設定です。


優しい気持ちで読んで下さると大変有り難いです。


=逆境逆行悪役令嬢の侍女に転生しました=


43 セルネオとルキノ



「セルネオ様、内密に相談があるのですが・・・。」

研究棟に着くなり、ルキノはセルネオに切り出した。


「ここで大丈夫だろう。この棟に人は殆どいないから、私の部屋に移ろう。」


「はい。」


ルキノとセルネオは研究棟にあるセルネオの自室に向かった。


「ここならば、殿下達以外に入って来る者はいない。相談とは何だ?」


ルキノは一拍間を置いて、呼吸を整えた。



「魔法契約書の事なのですが、この話を知っているのは当事者の私達と王族とセルネオ様だけです。絶対に秘密ですよ。」

と前置きをしておいて、ルキノは説明を始めた。


実は先日、リーナと実験済みである事は伏せて話を進める。

最後まで気を抜いてはいけない。魔力については王家の管理下にある。何が処罰の対象になるのか・・・。エリンシアを巻き込みたくはない。


「契約の一文に『お互いの魔法攻撃は通用しない。』と言う項目を作りました。現にエリンシアの強力な攻撃を受けた私は、何ともありませんでした。魔法契約書ってそんな事まで干渉出来るのが、常識なんですか?」


「ルキノ嬢も知っての通り、まず魔法契約書はとても高価な物だ。誰でも手に入れられる訳ではない。そして、契約を結ぶ為には信頼関係が必要だ。最近は専ら、高位貴族達の夫婦か婚約を交わしている相手に浮気防止の為に使われていると聞いた。」


「どういう風にですか?」


「浮気をしようとしたら、魔法攻撃を喰らうとか・・・。」


「やっぱり!!・・・ ・・・魔法契約書で、魔法属性の交換とか共有って出来ないでしょうか?」


「やってみる価値はあると思うが・・・。」

セルネオは思案しながら、ルキノの顔を見た。


「値は張りますが、色々と実験すれば王家の役に立つと思うのですが。」


「王家の?」


「はい。実験の結果は、公表致しません。成果を王家に献上するのです。上手くいけば利用価値ありますよ?」


セルネオは眼鏡を外し拭きながら、心ここに在らずの様子だ。


「例えば私とエリンシア、セルネオ様とシグルド殿下が少しだけ魔法属性の交換を致します。成功すれば、エリンシアとシグルド殿下が直接水晶で通信出来るのではないですか?」


「エリンシア嬢が王子妃殿下になるなら、良い案だが・・・。」


「エリンシアが王子妃にならなくても、王家でそれを商売にすれば?」


「それではエリンシア嬢に利が無いのでは?」


「セルネオ様が主導者で、私が助手。そうすれば私の後見人であるエリンシアも少しは評価が上がります。魔法契約書と通信石をセットで売るのです。王家の専売特許として。」


「そうだな、考えてみよう。だが先ずは、実験から始めようか。」


「私とエリンシアは卒業まで時がありません。卒業の日エリンシアは侯爵となります。実験はその後からで宜しいでしょうか?」


話が進むにつれてセルネオの違和感が大きくなっていった。

成功すれば良い案件となるのに、ルキノは他人事の様に話をする。ルキノは・・・後はどうするつもりなのか?


「万が一にもエリンシア嬢が、王子妃に選ばれなかったら?

この件はどうすれば良いのだ?」


「確かに私とエリンシアで専売特許を作れば、王子妃にならずとも利があります。でも私達が・・・エリンシアが望んでいるのは目先の利益では有りません。王家主導の元に、より良い国家を運営する事です。シグルド殿下に選ばれなかったとしても。その中枢で活躍したかったとは思いますが。」


エリンシアを裏切った訳では無い。しかし、断罪を回避する為には、エリンシアはどこまでも王家に忠実であると示さなければならない。そしてエリンシアは王家にとって旨味があると言う事も。心苦しくはあるが、ルキノは自分に出来る最善の準備をしなくてはならない。


「セルネオ様、魔法契約書を何枚か用意して頂けますか?私に出来る実験をしてご報告いたします。」


「分かった。私が主導と言う事で、アレク卿や王族には私の方から口止めをしておこう。」


「宜しくお願いします。今日はレポートの提出日です。エリンシアはタウンハウスに戻り卒業パーティーまでの3日を過ごします。その間の実験結果は通信水晶でご連絡をします。今からでも魔法契約書を手に入れて下さい。」


「分かった。明日にもガザルディアのタウンハウスに届けよう。・・・重ねて尋ねるが・・・万が一エリンシア嬢が王妃に選ばれなかった場合、その後ルキノ嬢はどうするのだ?」


「そうですね。エリンシアと通信出来る様に成れば、旅に出るのも良いですね。まだ先の事は決めていませんが。」


先の事と言っても3日後の話だ・・・。

私も色々と準備をしなければならないのだが、3日後の発表が無ければ方向性が見えない。歯痒い思いをしながらもセルネオは、待つことしか出来なかった。


「エリンシア嬢は3日間は制約の中にあるが、ルキノ嬢は自由だろう?出来るだけ研究棟に通ってくれたら助かる。」


「はい。私も成る可く研究の形を整えておきたいので。」

ルキノは明るく答えた。


研究最後の3日間でセルネオ様を始め、ベルン殿下、シグルド殿下と暇なしに詰めかけてくるのを、この時は予想だにしていなかった。




ブクマや☆いいねを付けて下さると、我は嬉しくて夜中に踊り出します。

誤字脱字報告もありがとうございます。

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