誰
夕刻。
夕日が町を朱く染める。
私の前に伸びる影。
黒くて寂しげな影。
すると影から。
【あんた誰なの?!私の体を返してよ!!】
そんな声が、聞こえてきた…気がした。
影が話するなんて、そんなことあるはずないのに。
ああ…きっと、仕事帰りで疲れてるんだな。
そう思いながら私は…
目の前の影を、靴でぐりぐりと踏みつけた。
ニヤニヤしながら、ぐりぐりと。
夕日が、山の向こうに降りていく。
影はすうっ…と、私の中に消えていく。
すすり泣く声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
だって、影は泣かないんだから。
「…この体いらないって言ったのはお前だろ?影は影らしく生きろよ」
私はそんな独り言を言いながら、家路を歩いた…