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84 婚約者に妹が突撃する②

「あらまあ皆、何をやっているの」


 玄関前にずらりと並んだ使用人達、そして私を見て母はにこやかに――実ににこやかに問いかけた。


「お久しぶりですお母様。実は今日は私の婚約者であるクライド・デルデス伯爵令息をお招きしてのお茶会をと思いまして、西に席を用意しております」

「まあ貴女に婚約者!」


 肩を竦め、母は心の底から驚いた、とばかりに美しく描いた眉をひゅっと上げた。


「それはまあ…… ほほほ」


 扇を広げて、口元を隠す。


「だけどそのお客様、なかなかいらっしゃらない様ね」

「どうしたのでしょう」

「おや、アンジーが声を掛けているじゃないの。何をしているの皆。本館の方に席を移しなさい。ほら、アンジーが困っているでしょう? こちらへと誘導を何故しないの?」


 ぱっと使用人達の方を向くと、母は有無を言わせず命じた。

 ジョージは困った様に私の方を見た。


「お母様、本日は私のお客様なのですが」

「でしたら貴女も来れば良いでしょう。さあ早く!」


 メイドの一人は小走りになって、馬車をともかく進める様にうながした。

 どう致しましょう、とジョージの無言の問いかけに、私は肩を竦めて応えた。

 メイドにうながされたアンジーはそのまま馬車にあっさり乗り込み、そのまま玄関前の車回しでクライドさんに手を取られて下りてきた。


「いらっしゃい、クライドさん」

「やあテンダーさん、この子が貴女の妹のアンジー嬢?」


 絶妙な距離で、妹はつかず離れずの位置を保っていた。


「ええ。アンジー、自己紹介をしていないの?」

「そんなまた、意地悪なことをおっしゃって! 婚約者であるお姉様がご紹介してくださらなくちゃならないんじゃなくって?」

「ああそうね。私の三つ下の妹のアンジーです」

「改めまして、アンジー・ウッドマンズです。お初にお目にかかれて光栄ですわ」


 そして綺麗な動作で一礼すると、顔を上げた瞬間、実に見事な笑みを浮かべた。

 顔。

 そう、彼は言っていた。

 まず顔に目が行ってしまう、と。


 本館でのお茶会に急遽変更ということで、西の対で用意されていたものを本館の客間へ移動。

 用意ができるまでの間、私達は居間の方で待つこととなった。


「急な変更となってしまって申し訳ございません」


 いつもの調子で、私はテーブルを挟んで彼と相対した。


「いや大丈夫ですよ。そういうことはよくあることですし」

「クライド様! 帝都の上級学校へお通いですって! 私も今、帝都の女学校に通っているんですの!」


 言いながらアンジーは、ソファの――彼の座っている側に勢い良く腰を下ろした。 

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