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65 婚約相手の提示と父との会話②

「春先のことを覚えていらっしゃいますか」

「私からの手紙に、お前からはにべも無い返事だったな。そして今もそうだ」

「事実を申し上げているだけです。お疑いになるのなら、今回は特に多くの生徒が見ていることなので、他方面からお調べになれば私の発言にはさほど間違いが無いことが証明されると思いますが」

「そうか…… アンジーはその二割、なのか…… 公爵令嬢に特に何か注意された? らしいな」

「はい」

「そこが気に掛かっていた」


 なるほど、アンジーは私が悪い、周囲が悪い、と両親に説明はしていたが、その部分も入ってしまったということか。


「あの子は、『何故この様な行動が嫌われるのか』ということを前総代に面と向かって一人飛び出し言い放ったのです。私達の学校は、校内では確かに皆平等公平となっておりますが、それでも他校の前総代に対する態度としては非常に無礼です。そして何故その様なことを聞くのか、と言った前総代に『男は綺麗なものが好きだ、だから横入りしてきた女性が綺麗ならば男は好きになる、そんな愛し合う二人を引き裂くのはおかしい』。そう言いました」

「待て、前提がわからん」


 父は手を挙げた。


「それはどういう状況を示してそうアンジーは言っているのだ? 横入り?」

「市井で流行っているロマンス小説に、婚約者を裏切って『真実の愛』を口にし、釣り合いの取れた家格の婚約者を突き放し捨てて、低い身分の女と結ばれる、というものがあります。あくまで空想のたまものと私達はよく知っています。が」

「アンジーはそうではない、と?」

「婚約者同士というものが家と家とつながりである、愛ではお腹は膨れない、その様なことが現実にあれば、そんな男女は市井に追い出される、そんな二人に明日はあるのか、とまで噛み砕いて前総代は説明して下さいました。ですがアンジーは『誰にでも明日はある』と言い切りまして、前総代は話が通じることはないだろう、と打ち切りました」


 父は頭を抱えた。


「さすがに問題のある二割の殆どが下位貴族の令嬢なので、我が校でも最高の地位の令嬢でもある前総代の言葉は効いた様です。アンジーを慌てて引き戻していましたから」

「……」

「以上が、私の見聞きしたことです。アンジーがどう言ったのかは知りませんが」

「では、春先の件も」

「手紙に書いたことが全てです。特に彼女達の目当てである男装の麗人は現総代であり、私の大切な友でもあるので、妹ならば特に強くその行動が不味いことを自覚してもらいたかっただけです」


 はあああああ、と父は大きくため息をついた。


「実は今回のお前の縁談を早めたのは、その件の流れからだった」

「その件の流れ?」

「アンジーが戻ってくるまでに、社交場でも学校での噂は飛び込んできていた。……ただ噂であるから、娘のうちのどちらかまでは分かっていない者も多かった。だがこのままでは我が家には婿の来手が無いのではないか。そう思ったから、お前の名を出し、家格が合い、今度共に事業を進めて行くデルデス伯爵家と組むことにしたのだ」

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