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53 世界の広さと花嫁衣装の違い

 大地が球体で、それが太陽を回っている、ということは科学の授業で知識として教わっていた。

 そして地理の授業では帝国のある大陸と、南の大陸、東の大陸、というものがあることは分かっていた。

 その国々との関係も、多少は。

 だが球体儀でこんな感じ、と言われるとなかなかに驚くものがあった。


「え、そんなに近いんですか!」


 帝国の北西端、そして北東端。

 それが地図上では「東の大陸」と思っていたところの間近だったとは。


「もの凄く遠くに思っていたんですが……」

「私もだ」

「それは仕方がない。それに」


 伯は球体儀を上下逆さまにする。


「南の大陸で使われている地図は、この様に南を上に世界を見ているんだ。北が上だとしているのは、赤道から北の世界の人間だけなんだよ」


 うわあ。

 私は横から頭を殴られた様な衝撃を受けた。


「……世界って…… 広いですねえ……」

「そう、広い。だが生きていける場所はそう広くはない。この北西辺境領地は生存に適している場所自体そういう場所だ。だからこそ、まずは生き延びる術を我々は覚え、教えて行く訳だ」

「伯のお話は、帝都近辺に居るだけでは絶対に想像ができないものばかりで、とても頭をかき回していただけます」

「おやおやセレ、それは褒め言葉かい?」

「私は技術者になりたいのです。最初はそもそも生まれ育った織物工場地域の技術からでしたので、それをもっと便利にできないか、ということばかりだったのですが、こちらへ来て、羊毛のことを知ったり、地域によって必要なものが異なったり、ということを知るにつけ、最初の考えだけでは違うな、と思う様になりました」

「面白いね。だがまだ君には時間がある。上の学校に行くのだろう?」

「はい」

「君が行く上の五年六年という間に、また世界が動くかもしれない。ともかく知見を広げて、その上で自分が納得し、周囲にも役立つすることをすればいい」


 自分が納得すること。

 セレに対して言っているのに、私の中にも、その言葉は刺さった。



「はい、これがこっちの花嫁衣装!」

「え、もうあるの?」


 リューミンはある日、「お母様」達と共にそれを見せてくれた。


「いや、まだまだ。これは姉様の時のものよ。これから私が作らなくちゃならないの」

「え、自分で作るの?」

「あら、そういうものではないの?」


 「お母様」の中で一番若い方がそう問いかけてきた。


「ペイレンお母様、向こうでは何でも、貴族の衣装はドレスメーカーというものが作るんですよ」

「まあ、わざわざ! それではご夫人は何をしているの?」

「まあまあペイレン、この間も言っていたでしょう? 向こうの貴族は社交というものに命を賭けているって」

「ああ! つまりドレスっていうのは鎧なのね。だったら専門が作らなくちゃですよ。でもこっちの花嫁衣装は、花嫁や周囲の女達で作るんですよ」


 そう言って広げてみせてもらったそれは、確かに手作り感が満載だった。 

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