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52 辺境伯は鉄道支線の技術革新について話してくれる

 ヒドゥンさんとは相変わらず月一のペースで文通している。

 ただ当人は既に卒業していて、現在は帝都ではなく、あちこちで公演する小規模劇団に属しているらしい。

 届く手紙の消印がまあ、帝国本土だったり、属国だったり、時には国外だったりするからびっくりだ。

 時々写真も入れてくる。

 白黒で見る彼の姿は、相変わらずどこかなまめかしい。

 このひと実は歳を取らないんじゃないか、と時々私は思うことがある程だ。

 まあそれはさておき。


「今年は海には?」

「あ、はい。婚約がこの間の冬に整ったので、旦那様の仕事の手伝いの方に今年からは回る様に言われました。海は海でいい経験になりました。ありがたいことです」


 いや、いいひとだなあ、と私もセレもじんわりとした気持ちを持ったものだった。



 そしてこの夏は、そのライデンさんも交えて、遊んだり働いたり色々見たり、という楽しい日々を送った。


「ほう、結婚式に来てくれるというのかね? 歓迎するよ」


 伯は以前来た時同様、私達を歓迎してくれた。

 そして来年の冬の結婚式に出て是非祝いたい、と言うと喜んでくれた。


「ただ問題はいつ頃だと大丈夫か、なんですが…… 冬期休暇だけで済むかということが。普段からリューミンも帰らない程ですし」

「うん、その心配は分かる。ただ年々鉄道の支線の方にも工夫がされてきてな」

「技術革新があるのですか!」


 セレが食いついてきた。


「元々雪によって鉄道が動かなくなることが問題視されてきたのだが、除雪車の導入と、支線に使う先頭牽引車の馬力を上げること、それに特別豪雪になる辺りには、暴風壁を設ける様に、うちもだが、帝国の運輸省にかけあったんだ」

「帝国の方にですか!」


 私は驚いた。

 大陸横断鉄道は帝国の直轄だが、支線は各地域を治める公侯伯と言った辺りにある程度任される場合が多い。

 実務はその下の子爵男爵その他庶民の企業との連携になるのだが、総轄するのは地方上位貴族だ。

 だがそれを飛び越えて帝国の政府の力を借りるというのは。


「鉄路は軍務にも関わるからね。帝国政府が責任を持つ必要もあると思うのだよ」


 そう言ってにっこり笑う伯は、やはり大きな力を持っているひとなのだなあ、と今更の様に思った。


「それに、うちの領地は案外海を挟んで向こうの大陸に近いんだ」

「え」

「君等は地図は学校で使うだろうが、球体儀は見たことが?」

「うちの学校には、そう言えば無いですね。第五でちらっと見たことがあるのですが……」

「第五でもあれは、男子校から持ってきたものだったよ。女子校には置かれていないのではないかな」

「まあ、女子の場合は軍務に就くことはそう無いからね。女学校ではそこまで教えることはないだろう」


 そう言って伯は私達を少し待たせて、球体儀を持ってきた。 

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