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49 報告と発見

 結論を担任教師の元に持っていくために、私達は会議の後、教員室へと向かった。


「失礼します」


 そう言って皆で入った瞬間、担任以外の先生はぎょっとした顔になった。


「み、皆さんその頭は……」


 するとヘリテージュが一歩進み出て、エンジュ達のまとめたノートを担任に手渡しながら。


「はい。先日うちの総代が健康のために、と髪を短くしたらなかなか具合が良いということで、ちょうど校則寮則の件で何かしら話し合うことになっておりましたので、具体的な形で一つの例を見せるべく」

「実証は何より大切だと我々は教わりましたので」


 セレも珍しく良い笑顔でそう告げる。


「そしてこれが話し合った結果です。我が校の頭髪規定はありませんが、長さはどうだろう、という流れで話し合ってみました」

「し、しかしその髪型は淑女のマナーとして……」

「無論、皆、家に戻る前に伸ばします。あ、セレは別ですが」

「自分は社交界に直結している訳ではないですので、少なくとも学校という場で学ぶうちは、できるだけ髪型で悩む時間は少なくしたいと思い、切った次第です。この学校時代の素晴らしきところはそういうところだと思っております」


 ここぞとばかりに総代としての声音でセレは一気にまくしたてた。


「ま、まあ…… 貴女がそういう覚悟で学ぶというなら、私どもも何も言いません」


 ありがとうございます、と皆で深く一礼した。


 それから私達は寮までの道を、ひたすら人目が集めることで楽しんでいた。

 教員室から寮までの間には、他学年の生徒とも散々すれ違う。

 皆が皆、注目していく。

 さすがにここまで視線を向けられるのは、もういっそすがすがしいほど。

 そしてふと、セレの後ろ姿を見た時、ふとヒドゥンさんの髪型を思い出した。

 彼の身長は私より少し高いが、セレより相当低い。

 だからこそヒロインができた訳だ。

 男性の髪型としてはやや長めだったが、それだけに髢一つで長い髪を簡単に演出できた。

 そこから連想し、神話風に真っ直ぐ布をカットして作った衣装を頭の中で目の前のセレに当ててみる。

 短い髪に、柄と色で勝負する直線ラインの衣装。

 しなやかな腕を動かす都度、その布に自然にできる襞が変わる。

 光沢のある色絹だったら、動くことによってその襞は常に違う面を見せるだろう。

 と。

 背中を叩かれた。


「足が止まってるってば」


 リューミンだった。


「何ぼおっとしてるの? 止まるとたぶん一斉に飛びかかられるわよ」

「え」


 確かに周囲の視線が食いついてきそうだ。


「考え事は後! 足はしっかり進める!」


 リューミンに肩を抱かれ、私はそのまま寮に戻った。

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