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43 「伯爵家の未来は暗い」と侯爵令嬢は断じた

 あまりに馬鹿らしいので机の上に放り出してふう、と椅子に背を投げだしたら、またもやリューミンが後からのぞいてきた。


「穏やかじゃないわね」

「まあね。見る? 母からだけど」

「え? いいの?」

「母から初めてもらったんだけどね」


 短い手紙をリューミンは取って見る。

 途端、だん! とその手紙を机に叩きつけた。


「何これ!」

「凄いなあ、と何かしみじみしてしまったわ~」

「いやしみじみしている場合じゃないでしょ!」

「リューミンの怒りは分かるし凄く嬉しいんだけど」


 思わず近くにあった頭を撫でる。


「ものすごーく、分かり易いというか、一貫してるなあ、と逆に感心してしまったというか」


 納得納得、と思わずつぶやいてしまった。

 なるほどそもそも生まれた時から醜かったから嫌いだったのか。

 逆に言えば、生まれた時にちゃんと人間の顔していた妹はある意味凄いのだが。


「赤ん坊が客観的に見ればちんくしゃってことは誰でも分かることじゃない。育てば別だし」

「最初は早産だか難産だったかとも聞いてたから、きっとまあ確かに潰れた顔だったんだと思うな。……あ、だからそういう顔しないの。リューミンのおかげであのひとの異常さが分かったからありがたいし満足してるのよ」

「……貴女がそう言うならいいんだけど。何かもう、卒業したらそのままうちに連れて帰りたくなってきたわ」

「それもまたそれでいいかもね」

「本当に! 行く宛無くなったらうちに来るのよ! 絶対」


 そう言って椅子の背ごとリューミンは私を抱きしめてくる。

 するとノックが三回。

 はい、と答えるとセレとヘリテージュが入ってくる。


「おーい、自治会の…… って何いちゃついてるの」

「羨ましいでしょ。それよりちょっとヘリテージュ、これ見て」


 母の手紙がヘリテージュに回される。

 さっと目を通した彼女は目を丸くした。


「……伯爵夫人ともあろうものがこれ?」

「そう、これ。あ、そうそう、実は少し前に来た父からのもあるわ」


 貸して! とリューミンが言うのでそちらに渡し、その後ヘリテージュの手に。


「うーん、これじゃあ伯爵家の未来は暗いわね!」

「何々? 例のあの妹に謝罪? 冗談は止してくれ、だ。それに何だ? 確かテンダーの妹、……男装の麗人に会いたいとか…… 言ってた?」


 セレの語尾が弱くなる。


「やれやれ。もう今度は別の誰かにやらせろって。長身女子なら誰か跡継ぎが居るだろ?」

「そうよね。やっぱり格好いい人は一人二人居ると学校も華やぐし、皆の好みの傾向とか分かり易いしね…… ってああ、そうそう。先日のその貴女の妹さんの件について、第四の総代の手紙が来ていたのだけど、見る?」


 無論、とばかりに私達はうなずいた。

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