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38 今更ながらの制服談義

 それからしばらくして、私は新しい学年に上がり。

 ――妹が帝都にやってきた。

 だがすぐに一悶着あった様だ。

 同じ帝都の空の下にあって、何故わざわざ実家経由でその報告を聞かなくてはならないのか、とは思うのだが。

 下手に突っつくと、両親がいきなり「妹のことを考えてあげなさい」と言い出しそうだったので、静かに静かにしていたのだ。

 観察というのは、できるだけ遠くからした方がいい。

 それこそ第一からピンポイントで眺めることができる望遠鏡があればいいな、と思う程度に。

 そもそもアンジーに関しては両親以上に接点が無かったのだ。

 なので言われるまでは手を出すまい、と私は心に留めていた。

 のだが。


「ねえ、例の妹さん、もう入学したんじゃないの?」


 ヘリテージュは面白そうに聞いてくる。


「はい、これまたうちの乳姉妹からの報告」


 ひらひらと私は手紙を揺らした。


「何でも、荷物が多すぎて送り返す様に言われたらしいわ」


 実家から送った物の半分以上だったという。


「だって貴女の時のこと考えれば、そんなに沢山必要ではないことくらい……」


 私は黙って両手を広げた。

 第一の寮に私が入る時には、必要事項を自分で読み込み、フィリアとポーレに荷造りを手伝ってもらった。

 大きな荷物は先に郵送してもらったが、せいぜい木箱二つといったところだ。

 制服は寮に入ってから支給されることになっていた。

 学校と寮の往復では使う服は多くない。

 校外にしても、私服で遊びに行く者は殆ど居なかった。

 従って荷物は少ない。

 木箱の一つ半までが衣類、あと半分がお気に入りの書籍だった。


「そうよね。遊びに来ている訳ではないし。それにここで使うものだったら、帝都の方が揃うしね」


 リューミンは大きく頷く。

 一方セレはよくこう言う。


「制服ってのはありがたいね」


 彼女によると、深い藍色のワンピース型の制服は何にでも使えて便利なのだと。

 踝より少し上のスカート丈。

 これは、編み上げ靴で動くのに楽だ。

 そのスカートも無駄に広がってはいない。

 それこそ立ち働くメイドの服の様に足を自由に動かすことができる程度に。


「学校はもちろん、色んな式典も、旅行もこれで充分だ。大事には着るが、もし破れほつれが酷かったらその旨申請すれば換えをくれる。ありがたいありがたい」


 形は落ち着いている――というより地味だ。

 襟に取り付ける白いカラー、校章を刻んだ胸元とカフスのボタンだけが飾りだ。

 家庭教師の服と言っても通じる。

 ただそれよりは袖がやや膨らんでいたり、胸元に余裕はあるのだが。

 余裕。

 そう、学校側からはコルセットをきつく締めすぎない様に、とも言われていた。


「ありがたいわ~」


 エンジュは入った時のこの注意書きにほっとしたそうだ。


「私ちょっと気を抜くと、すぐに太っちゃって。家では乳母がそんなことでは! とコルセットきりきり締め上げるのだもの。お上からのお達しだから、制服の時はいいのよね」


 そう言いつつ、彼女は焼き菓子をよくぱくついている。

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