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30 執事は嘆く

 あまりにも縁が無かったので知らなかったのだが、執事のフルネームはジョージ・ブルームという。

 彼を既に私とフィリアの座っているテーブルに付かせ、話を聞くことにした。


「ジョージとお呼びください。旦那様と奥様の、テンダーお嬢様への扱いから、皆何処かお嬢様を本当のお子様なのかと疑問視する声もありまして…… いえ、自分は無論、お生まれになる時に既に居りましたのでそんな噂は常に打ち消してきたのですが」

「あ、別にそれはどうでもいいです。で、本題は何ですか?」


 私は別にこの待遇自体に不満を持ったことは無いので、ストレートにジョージに疑問をぶつけた。


「……アンジーお嬢様のことでございます」

「ああ、断片はポーレから聞いているけど、それが?」

「皆が皆、アンジーお嬢様が生い育つと共に、『向こうのお嬢様ってもの凄くまともなんじゃない?』という意見で統一致しまして」


 いやまだその言い方には微妙におかしさがあるけど。


「でも私そもそも食事の時くらいしかジョージや向こうの使用人達に顔見せてないでしょう?」


 そう言っているうちにお茶とお菓子が用意され、それぞれのカップに淹れたところでポーレも席についた。


「内緒でお願いしますね」

「あ、はい。そもそも私も共に席についている時点で同罪です」


 その辺りで覚悟を決めたらしい。

 帝都土産の菓子をすすめると、恐縮しながらジョージは口にした。


「アンジーお嬢様のお茶会のことは聞いておられますか?」

「一応、ポーレが聞いた範囲だけど」

「元々アンジーお嬢様は我が儘…… なのではないかな、という話は使用人の中では出ておりました。ただ、それ以上に何より旦那様と、とりわけ奥様がお可愛がりになっていらっしゃるので、それもまた可愛いうちなのかな、と皆ある程度思っておりました。が、それはどうも我々の感覚がマヒしていたのではないか、と年々思うように」

「どうして?」

「お茶会で皆はっと気付いたのです。うちのお嬢様はまずい、と。このままではカメリア様の二の舞になってしまうのではないかと……」

「叔母様ね。向こうで会ったわ。仲良くなったわ」

「ああやっぱり気が合うのですね。……ではやはり、我々はこの家の没落を見るしかないのでしょうか……」

「ちょっと待って」


 嘆くジョージに私は手を挙げる。


「ちょっと短絡過ぎて判らない。何で叔母様の二の舞から、没落に至るの?」

「このままではきっと、アンジーお嬢様がここの跡継ぎになってしまうからです」

「ああ、成る程。でも私一応長子よね」

「あの方々が、アンジーお嬢様を嫁に出すと思われますか?」

「「「思わないわ(ですね)(でしょう)」」」


 三人の声が揃った。


「さてここから問題なのですが」


 ジョージは一つの帳面を出し、幾つかの表を見せた。

 素晴らしいまでの右肩下がりのグラフもついでに。


「これは先々代からのこの家の資産の状況です」


 十年ごとに集計したものらしい。

 つまり。


「代替わりするごとに減っていると!?」

「はい…… しかも未だそれは続いております」

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