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29 帰宅したら執事の態度が変わっていた

 ともかくそんな前情報を念頭に、実家へと戻った。

 お帰りなさいませ、と言う使用人達の態度が微妙にうやうやしくなっていたのは気のせいだろうか。


「お父様とお母様は? 帰宅の挨拶をしたいのだけど」

「あ…… 旦那様方からのご伝言です。夕食が正餐なのでその時で良い、とのことでした」


 執事がそう返す。


「じゃあ西に居るから」


 それだけ言って、彼等にほんのりと笑みを浮かべた。


「それではしばらく本来の業務に」

「うむ、こちらからはそう回せないからしっかり頼むよ」


 そういう執事の声が聞こえた。

 小走りにポーレは私の後をついて来た。

 西の対に入ってから、執事の言葉の意味を聞いてみる。


「あああれですか。要は東で手一杯だから、テンダー様の普段の用意と正餐でないお食事とお茶、それに掃除は全部頼むよ、という意味です」

「……何か私だけのオールワークスね」

「私はずっとそのつもりですよ。だからこそ、色んなところで腕を磨こうと思ってるんです」


 嬉しいわ、と私は彼女の肩を横から抱いた。

 そして自室に荷物を置くと、フィリアを探した。


「テンダーお嬢様!」

「ただいまフィリア!」


 私はそう言って飛びついた。


「お元気で何よりです…… お帰りなさい」


 やっぱり良いな、と私は思った。


「テンダーお嬢様がお帰りになったからには、この子もしばらくは西の対担当ですね」

「任せてくださいな。伊達に向こうで軽食作りの腕を磨いてきた訳じゃありませんからね!」

「お茶もだろう?」

「無論です!」


 そう言いながら、三人で自室へと戻った。

 だが少ししてノックの音がした。

 先ほど私を迎えてくれた執事だった。


「テンダーお嬢様、失礼致します」

「どうぞ。一体何かしら」

「いえ、テンダーお嬢様への、今までの数々のご無礼を、使用人を代表して謝罪しに参りました」

「? どうしたの突然」


 そもそもあまり執事とは縁が無かったので、年配の物腰の良い男性にそういう態度をされると何やら女学校の教授を見ている様な気分になる。

 

「だったらとりあえずこちらにいらっしゃいな。今から三人でお茶をしようと思っていたの」

「三人…… フィリアとポーレ!? お嬢様と」

「それ以前に私の家族だわ。せっかく帰ってきたのだし、正餐の前にのんびりとお茶の時間くらい持ったっていいでしょう? お湯もたっぷり沸かしているし、お菓子もお土産で持ってきたし」

「嗚呼! そういうことですね……」


 執事は頭を抱えた。   

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