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28 居ない間の妹の所業④

「テンダー様は楽しんで針仕事してましたのにねえ」

「あ、実際楽しかったし。あ、聞いて聞いて、手紙にも書いたけど、辺境で羊毛作るのやったの」

「羊毛! 羊に触ったんですか! あのふかふかだという!」

「友達がついていたのでね。それで毛刈り見せてもらって、いやもうその毛刈りの名手が刈ると、そのまま羊の形になっちゃうの。でも最初は結構べとべとなのよ」

「いいですねえ~」


 ポーレは私と途中まで先生について、同じくらいに付いてきてくれていたくらいなので、向学心がある。

 今現在メイドの仕事を全て覚えようとしているのもそのためだろう。


「いつかポーレも連れていきたいわ」

「テンダー様がもしお家から出ることがあるならば、私は絶対について行きますよ」


 その言葉が後に本当になるとは、この時の私は思っていなかったが。


「けど、そんなにアンジーが勉強嫌いだとしたら、再来年の審査でどうなるのかしら」

「どう思います?」


 さすがに女学校のランクはポーレには判らない。


「私はだいたい先生の課題をいつもきちんとこなしていたわよね。で、寮の友達に聞くと、やっぱり先生は教え方が上手い方だったみたい」

「嬉しい! シャルレージュ先生は私にも丁寧に教えてくださって、とても親切でした」

「それはポーレが真面目に宿題もこなしていたからよ。……で、その後、アンジーの家庭教師はまた替わったり……」

「しましたねえ……」


 ポーレは苦笑した。


「先生のお世話もするメイドの話では、ともかく勉強をする気持ちにさせるまでが大変だそうですよ」

「と言うことは、そもそも今どのくらいまで出来ているのかしら……」

「言ってもいいですか?」

「ぜひ」

「ちらっと先生の持っている教本、見たことがあるんですが、……私の二年目の記憶にあるものでした」

「いやちょっと待って、それじゃあまだ基礎ができていないの?」

「ということになります。こう言っては何ですが、読み書き計算に関してだけなら、私の方ができるんではないかと思います」

「楽器とかどう? そっちに才能あれば第五とかに行く術もあるんでしょうが」

「うーん……」


 ポーレは難しい顔になり、首を傾げた。


「弾けてはいらっしゃるんですよ…… 指が動くという意味では。テンダー様の同じ歳の頃のピアノ教本。よく流れてましたから、私も覚えているんですが」

「弾けるの? それは良かった」

「いや、ただ音階がおかしいんです」

「は?」

「気がつくと明るい曲のはずなのに何か歪んでいるんですね。教本の音を一個二個と微妙に外していくんで、元の曲知っていると、頭がおかしくなりそうで」


 どうしよう何かちょっと聞いてみたくなった。 

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