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22 第五の生徒と一緒に作業する

 私は結局この演劇について、叔母のこともあり舞台衣装の手伝いをすることとなった。


「不器用不器用と言われているんですけど」


 ヒロインの衣装の縫い取りを手伝っている時にそうつぶやくと、叔母様が驚いた。


「不器用? 何言ってるの。こんな細かい縫い目ならお針子もできるわ」

「先生! いくら何でもそりゃ伯爵令嬢に無いでしょう?!」


 身体に当てていたヒドゥン・ウリー令息は呆れた様に言った。


「あら何言っているの。私だって一応まだ伯爵令嬢なのよ? どこそこの夫人になった訳じゃないんだから」

「あ~そう言えばそうでしたねえ」

「叔母様は結婚なさる気は」

「うーん、面倒くさくてねえ」


 先生らしいわ、という声が担当の男女問わず上がる。


「まあ第五に居る連中は結構他よりは多いよな」


 ヒドゥンは納得した様に頷く。


「そうなんですか?」

「全部が全部じゃないし、中には大恋愛して大変なことになる奴も居るけどなあ。まああんまり決められた婚約者とあっさりくっつくという奴は居ないよな」

「そうよね」

「ですねえ」

「まあね、音楽家とか画家とか彫刻家とかできる様に色々身につけていると、あまり普通の家からは話が来ないというのもあるしね」


 ヒーロー役のマリナは長い腕を上げて腕回りの調節をしながらそうまとめた。


「演劇中心の奴でも、帝立大劇団にこのまま入る奴もいりゃ、全体の舞台を作り上げたいって奴は、この上の専門学校に行くしな」

「音楽も同じだね」


 横で軽く小型の六弦琴を抱え込んでかき鳴らしつつ、こちらの様子を眺めていた音楽科の男子も言う。


「こっちも帝立大楽団に入るのも居れば、民族音楽を全部拾いに行くぞ、と帝都全土を渡り歩きに行く奴も居るし。まあ色々だなあ」

「すねかじりの奴もいりゃ、勘当される奴も居るし」

「卒業生の中には吟遊詩人になっちまった奴も居るっていうしなあ」


 あはははは、と皆笑い合う。


「え、でもそうなったら」

「その時はその時」

「大体第五に受かってしまった時点で、家の方は『普通の生活』をさせることはあきらめることになるしな。というかお上のお墨付きというか」

「そうそう。この肩書きはやっぱり嬉しいよな」

「あとはまあ、下手に金をせびる様なことにならずにやっていければいいってことで」

「いや違う、せびっても喜んで出してくれる様な奴になるのが一番だぜ」

「確かに!」


 そんな彼等を叔母は楽しそうに眺めている。

 私も彼等の様子を見ていると楽しかった。


「でも本当にテンダーの針仕事は上手いわよ。もし何かあって家に居られなくなったら、いつでもいらっしゃい。私から師匠に話つけてあげるわ」

「本当ですか?」

「先生、第一のいたいけなお嬢さんを唆しちゃいけませんて」

「だから私も昔は第一だったんだけど?」


 えっ、と皆そこで驚いた。

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