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16 第五との共同演目の決定

 ヘリテージュは侯爵家の次女だ。


「お姉様の旦那様が教育省にお勤めでね、そちらからの噂。あくまで噂よ~」


 ふふふ、と彼女は「噂」を強調した。


「それにしてはずいぶんと浮かれてますねー」


 キリューテリャは肩を竦めた。


「だってそうそう無いんですって。第五の歴史の中でも男子校の方と合同でするってのは」

「また、何があるんだろう」

「実を言うとね」


 再びヘリテージュは声をひそめた。


「今、第五の最終学年にシアルテ皇女様がいらっしゃるでしょう?」


 ああ…… と皆でうなずいた。

 現在の皇帝陛下には三十二人の皇子皇女がいるが、その中の第十三皇女シアルテ様は音楽関係の才能に優れていた。


「で、男子校の方に第十皇子様が」

「カシュミュール殿下ね」

「そうそう。でこのお二人がちょうど在籍している時期が今しかない! ということで、これはもう男女混合の歌劇を企画しようって大変らしいの」


 皇帝陛下は各地方、属国から送られてきた女性を公平に扱うこととなっている。

 そして生まれた皇子皇女殿下も皆同等に次代の皇帝候補として、名乗りを挙げ、競争する権利がある。

 これもまた一つの公平かな、とも思うけど、まあ規模が違う。

 この時点で第一にも第十二皇女アルマリタ様が最高学年に在籍していたが、非常に控えめな方なので格別なことはしないことになっているらしい。

 全体的に皇子皇女の方々が学校に在籍する場合は第一だ。

 そしてそれ相応の成績でもある。


「第一に入れない様な方はまず奥で教育なさるということらしいし」


 これもまた、ヘリテージュが声をひそめて言ったこと。



 やがて第五との合同祭が本決まりとなり、上級生の代表が打ち合わせに出かける様になった。

 そして講堂で生徒総代のアファレット・リクティル伯爵令嬢が打ち合わせの結果を報告した。

 なお皇女殿下は生徒の自治的組織には参加していない。

 あくまで控えめな方なのだ。


「今回の演目は……」


 アファレット総代は酷く言いづらそうだった。


「何故か男女逆転演劇に変わった……」


 無論講堂内は淑女未満の少女達の驚きの声で埋まった。


「鎮まれ。……何というか、第五は実に発想が自由でな…… こんなに滅多に無いことならば、滅多にできないことをしよう、という精神に満ち満ち溢れていてな……」


 眉間に皺を寄せ、そこに指を当てた総代は吹っ切った様に言い放った。


「ともかく! 向こうの男装の麗人と女装の達人がその演技力を駆使してロマンスを演ずるということだ」


 すると今度は黄色い声が飛んだ。


「だから鎮まれと言うだろう……! で、だ。ここからが問題だ。うちからもスタッフを出してくれ、ということなんだが、指定してきた」


 生唾を飲む音。


「長身女子を一人! 脚本を書ける才能のある者! この二つの応援要請が来た。そこでだ」


 ぴた、と私達に向かって総代は指を突きつけた。


「セレ・リタ。長身女子として参加する様に。ちょうど良い筋肉もついている。脚本は…… こればかりはこれから自薦他薦で選ぶ。が、そう時間は無い。それを考えた上で皆行動する様に。以上」


 へ、という顔でセレは硬直していた。

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