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14 家族というものの認識と交流祭の噂

 公平さ。

 それについて私は深く考えたことが無かった。


「たぶん、私はあのひと達を家族だと思っていないのだと思う」


 目一杯遊んで、見学して、時々作業を手伝って…… あっという間に夏期休暇は終わりに近付いた。

 そしてまた同じ列車を今度は逆方向に進む。

 そこで「うちを見て、どうだった?」とリューミンは尋ねた。

 その答えがそれだった。


「私にとっての家族は、……やっぱり乳母のフィリアと乳姉妹のポーレで、それ以外は私の生活を保証してくれる人、という印象しかないのよ」


 なるほど、と二人は頷いた。


「だけどその生活を保証してくれるひとは、保証するだけに貴女を好き勝手使おうとするわね、きっと」

「どうかな。そもそも私のことは忘れていると思うし」

「いや、絶対再来年には思い出すと思うよ」


 セレは逆方向の景色をずっと楽しんでいたが、不意に言葉を挟んだ。


「再来年?」

「テンダーのその両親から可愛がられまくっているっていう妹も女学校に入る時期だろう? 何処の学校に入るのは知らないが」

「あー、確かにね。三つ違いって言っていたものね。第一に来られるかしら」


 私は苦笑した。


「何度も何度も家庭教師が替わっているらしいけど」

「貴女の妹なのに!」

「図書室にも来たことは無かったし。勉強は好きではないと思う」

「だったらまあ、第三か第四行きね。……あ、そう言えば、セレ、確か」

「何」

「貴女前、第五に知り合いが居るって言ってなかった?」

「第五?」

 官立第五女学校は芸術部門に優れた人材を集めた学校だ。

「知り合い、というか。幼馴染みの工場長の娘が歌劇好きで、両親を説き伏せて根性で入学したんだ。二年遅れで」

「それはそれで凄いわね」

「で、それがどうした?」

「ああ、ほら休み明けから交流祭の支度が始まるのよ」

「交流祭」


 それは初耳だった。


「と言っても、私も姉様から聞いた話ばかりなんだけどね。回り持ちで第一から第五までの女学校が二校ずつ組んで祭りをするの」

「へえ。目的は?」


 セレは腕組みをしてテーブルに前のめりになる。


「何だかんだ言って習熟度別編成でしょ、私達の学校って。特にうちの生徒は何か物わかりのいいのばかりだから、時々起爆剤の様なものが必要なんだって」

「起爆剤……」

「姉様の時は何と第一と第四で組んだこともあったそうよ。もう大変。第四の生徒は自分達で手を動かすのを嫌うし、第一の生徒は第四に指示する難しさを実感して、現実の社交界に出た時の難しさを垣間見たそうよ」

「ふーん。で、リューミン、君がそう言うってことは、うちは今度第五と組むということかな?」


 噂よ、とリューミンは笑った。

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