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11 友人は境遇に怒りを覚える

 するとつん、とリューミンは私の眉間をついた。


「ほらまたその顔」

「え?」

「どーも気になってたのよね。家族の話とかしだすと何処か遠い目になるというか」

「そこまではさすがに気付かなかったな」

「セレは私達より勉強熱心だから、そこまで気に出来なくて当然。私達はやっぱりある程度社交とかも昔から求められていたからね。人の雰囲気に敏感なのよ」

「それに同室だからな」


 私はため息をついた。


「うん、別に何ってことはないんだけど。ただ昔先生にね、貴女は意識のずれがあるから気をつけなさいって言われてたの」

「意識のずれ?」

「うん。うちは両親と、あと妹が居るんだけど、私朝食と正餐の時にしか会わないんだ」

「何それは、妹が病気とか?」

「せいさん?」

「昼か夜か、ともかく正式な食事よ。ちょっと待ってそれじゃそれ以外はどうしているの?」

「乳母と乳姉妹と先生が居たから」


 二人の表情が更に曇った。


「……それ、いつから?」

「妹が生まれた時からだから、三つかな」


 うわあ、とセレは顔を覆った。


「何、テンダー貴女、もしかして庶子?」

「同じ母だけど」

「やだもう。何でそんなことできるの? 貴女のご両親!」


 ばん、と折り畳みテーブルをリューミンは叩いた。

 乗っていたお菓子が跳ねて幾つか床にこぼれた。


「ああ大変」


 私は慌てて拾ってまとめる。

 寮の習慣というものは恐ろしい。

 実家では滅多にしなかったことも身体に染みついてきていた。


「……いや、それ普通だったし…… 先生も困った顔していたけど、私には何がおかしいのか、どうして皆がそういう顔するのか判らないのだけど」

「あー、そうよね…… うん。だからこそ、やっぱり貴女はうちに来るべきなのよ」


 彼女は立ち上がり、テーブル越しに私の両肩を掴んだ。


「あのねっ! 理想かもしれないけど! 建前でも親は皆きょうだいは同じ様に扱うの!」

「そうなの?」 

「うん。うちもそうだな。うちも三人きょうだいで、一人身体が弱いから多少気はつかうが、それでも顔を見ないなんてことはない。むしろその分いつも悪いね、と言葉にしてくれるし。あと、私が学校に行くってのは働き手が無くなることだからと遠慮してたら、ちゃんと背中を押してくれたし」

「そうよね。セレは確か郊外の子よね」

「そう。帝都から少し離れた工場地帯生まれ。普通学校で成績が良かったから受験だけでも、と言われたけど家計がやっぱり厳しかったから、工場の見習い工員として働いてたんだ」

「へえ…… 何の?」

「織物。そこの技術者の中で、物好きなひとが私等見習いに新しい技術の話をしているうちに、あ、面白いなあと思ってね。話を聞くうちにちゃんと理解できる様になりたいな、と思ってさ」

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