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103 私の着たいもの、着せたいもの①

「型紙?」


 ポーレはテンダーの予想通りに目をすがめ、首を傾げた。


「作りたいんですか?」

「そう」

「男物ですよ?」

「着方はね。下をスカート単品にするの」

「…乗馬服みたいな感じですか?」

「まあそれが近いけど、もっと簡単に」

「でも男性のジャケット見ても、すとーんとしてますよね。そのまま着ると不恰好でしょう?」

「だから腰の部分を詰めたり…まあやって見なくちゃ分からないか。スカートも別に作らなくちゃだし」

「腰で留める形ですか」

「そう」


 とは言え、どう止めたものかも今一つわかっていない。


「腰を締めるならズボンも手に入れた方がいいのかしら」

「ああ!」


 ポーレはぽん、と手を叩いた。


「腰で締めると言うから、エプロンみたいのも考えましたが」

「あ、それもありよね。よしっ」


 結局上着を二つとズボンを二つ、それに男もののシャツを入手したのだった。



「まあ何をしているの?」


 叔母は細かく糸を解いている私たちを見て驚いていた。


「型紙を作ろうと思って」

「型紙?」

「このジャケットにスカートを組み合わせたらどうかなと」

「上下を切り離すの?」

「切り離す… そうですね。叔母様、私の友人のセレ・リタを覚えていますか?」

「ええあの、男装の」

「卒業の謝恩会に着ていた服が良かったなと思いまして。叔母様関心持ってらしたでしょう?」

「ああ、あれ! そうそう気になってはいたんだけどついつい忙しくて」

「先生もう結構な時間が」


 ポーレは叔母を「先生」と呼んでいた。


「やりたいことはいろいろあるのよ。ただともかく独立だの立ち位置を何とかするとかごたごたがあって。テンダーが帳簿整理してくれなかったら一体いつ今ある仕事がきりになるかわからなかったわ」

「じゃあアイデアは」

「そりゃああるわ。それこそあの女装の達人君にも着せたいデザインが!」


 ふとそこでポーレはテンダーを見た。

 手紙のやりとりをしていることは彼女も知っていた。

 「あのテンダー様が!」とどれだけポーレは驚いただろう。

 異性を避けまくっている乳姉妹の様子は彼女も気にはしていた。

 ただあの婚約者は論外だった。

 一応屋敷内のフットマン達の戯言もかわしてきた彼女からしたら、テンダーはあまりに無防備なくせに、近寄られることには敏感すぎたのだ。


「いやあれはないわー」


 残念ながらフットマン達もそう言っていたのだ。


「そんなこと言う?」


とポーレが凄んで見せたら。


「あんたほど隙が無ければなあ」


 そう答えられたものだった。

 そんな自分のお嬢様が、だ。

 何やら珍妙な格好を「見事に」する男性とはひと月に一回のペースで、本当に途切れずに手紙のやり取りだけ! 続いているのだ。

 しかもそれを読んでいる時は楽しそうで!

 その人に着せたい服。

 ポーレには全くもって想像ができなかった。


「あらどうしたの凄い顔」

「いや、想像ができないんですが、先生から見ても」

「そりゃもう! まあ体型が明らかに普通の男性とは異なってるというのがあるけど、それだけじゃあなかったわねえ」

「ええ、指先から視線までちゃんと計算されてましたし、動きに迫力がありましたから、神話の時代の女神とかの衣装が気持ち良く似合ってました」

「だからそれ、褒め言葉ですか?」

「うーん」


 現物を知ると知らないでは大きな差がある、と二人は考える。

 ポーレの周囲にはいなかったはずなので。


「そのうち帝都で会う機会があれば紹介するわ。彼からいつか自分に合う紳士服を作ってとも言われてるし。そう、それも考えていて、型紙を割り出せばセレの様な長身と肩幅が無くてもキリッとした女性用上着と、上下で合わせることのできるスカートができると思って」


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