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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
二章 ゲームでいうところの無駄に存在するミニゲーム

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ギリギリ回避



「え……?」


 アルドは何を言われたのか理解できなかった。

 てっきりいいわよよろしくね、とあっさり了承されると思っていたのだ。

 けれども。


「お断りするわ」


 聞こえなかったのだろうか、そんな反応をされて再度ステラが口にした言葉はやはりアルドの思っていた言葉とは違って。


「なんでだよ」

 思わずそんな疑問が口から出ても仕方のない事ではあった。


 自分なら絶対そこのキールよりも働ける。役に立てる。相手がまだ駆け出しの探索者などであれば自分がリーダーを務める、とも言っただろうけれど、先程死にかけていた自分と比べ、苦戦してしまったダンジョンの中で全く怪我をするような事もなくあっさりと攻略できる相手にリーダーをやるだなんて言えるはずもない。

 けれども、リーダーなどせずとも自分は有能で、有用であると思っていた。

 だというのに少しも考えるような様子もないままに断られるだなんて、アルドには理解できなかった。


「なんで、って足手まといは必要ないもの」


 疑問を口に出したアルドに、ステラは更にあっさりと答える。


 アルドは自分が足手まといだと言われて、更に理解できなかった。

 確かにこのダンジョンで死にかけていたのは事実だ。

 けれど、一人で上級者向けダンジョンを攻略できるような人物、余程とんでもないアビリティでも持たなければ無理だ。仲間が死ななければ、アルドだってこのダンジョンを攻略して帰る事ができた。そういった意味ではアルドは決して役立たずではないはずなのに。


 それでもステラはアルドをハッキリと足手まといと断じた。


 アルドにはそれが理解できないが、ステラからすれば単なる事実でしかない。

 まだステラが人間だった頃にこちらの世界にやってきたとして、そこで知り合ったのであれば、まぁ、それなりに頼れる戦力認定したかもしれない。人間性とか性格とかはさておき。

 けれど今アルドを仲間に入れろ、と言われても正直困るのだ。

 キールや魔術師団はまだいい。

 彼らがやらかした事でこうしてステラたちがここにいるのだから。

 けれどステラたちの事情も何も知らない誰かを仲間に引き入れるのは、正直自分たちにとって何のメリットもない。逆に身動きが取れなくなるだけだ。



「足手まとい……って、少なくともそこのキールよりは強いぜオレは!? それなのに足手まといだっていうのかよ!?」

「比べる相手が間違ってるわ。今別行動してるけど、前衛職で貴方みたいに前線で戦う役割は既にいるの」

「けど、じゃあ、そいつよりオレが劣っているって事か!? そんなはずは……!」

「私少なくともこのダンジョンで貴方はゾンビに囲まれて死にそうになってるとこしか見てないし、ましてやその後は何にもしてなかったじゃない。それで『オレは強いぜ? キリッ』とか言われても、ねぇ……?」


 キリッ、という部分まで口にだしたステラに、ベルナドットは危うく吹き出しそうになった。

 しかしここで笑ってしまってはアルドの怒りとかその他色んな感情の矛先がこちらに向くのはわかりきっている。なので頬の内側の肉を噛んで堪えた。強く噛み過ぎるとそれはそれで口内炎とか血豆とかできそうな気がして正直気が気じゃない。


「そもそも比べる対象キールにしてるのって、貴方の知り合いだからってだけでしょ? じゃなきゃうちのチームとは別チームの人を引き合いに出すわけないものね」

「は……?」


 ステラの言葉はお断りするわ、のあたりから正直すぐに理解できそうになかったけれど更に理解できない言葉が出てきた気がする。


 別のチーム……?


「あ、はい。そうです。ぼくとモリオンは同じチームで、そちらの二人は別のチームです。そちらの仲間が今別行動してるもので、ちょっとした時間潰しにこのダンジョンに」

 アルド本人は気付いていなかったが、助けを求めるような目を向ける。

 向けられた先にいたキールはまぁ言って困る内容でもないし、と事実を口にした。


「嘘だろ……?」


 仲間が別行動ってどういう事だ。

 仲間が別行動していなくなってる間に暇潰しに? 役立たずだったキールやそっちの魔術師連れて? わざわざダンジョンに?

 それでいて全くの無傷だと……!?


 理解できる許容範囲を超えた気がする。

 確かに他のチームと一緒にダンジョンに行く、という事はないわけじゃない。

 ダンジョンの中身によってはそうした方が攻略しやすい場合もあるからだ。

 けれど、自分のチームの仲間が別行動している間に暇だから他のチームと組んで他のダンジョンへ、というのはアルドには理解できなかった。

 勿論、行く先のダンジョンは自分たちで攻略できると判断した難易度の所を選ぶのは言うまでもないとは思う。だがそれでも、不測の事態というものは存在するし、万一そんな事をしてダンジョンで死んだ場合、別行動していた仲間はどうなる。戻ってこない仲間を待ち続ける事にもなるし、死んだ可能性が高くなれば他の探索者たちに声をかけたりして身の振り方を考えなければならない。

 そうして新しい仲間と上手くやっていけるようになったあたりでうっかり実は生きてましたー! なんてなったとしても、正直今更だろうとすら思う。


 場合によってはいらぬトラブルの原因にしかならないのだ。


 例えば普段上級者ダンジョンに行っているような相手が初心者向けのダンジョンへ行くのであればそういった事故も起こる事はまずないと思うが、ステラたちが今いるこのダンジョンは上級者向けだ。上級者向けの中では難易度は低めと言われているとはいえ。

 いかんせん出てくる敵の数が多すぎる。

 そこへ、ちょっとした時間潰しに……?


 確かにステラが使っていた武器はゾンビに対して圧倒的な威力を誇っていたから、あれがあるから問題ないと思っていたとしても。


(いや……むしろ気にするべきは……)

 そんな状況を受け入れているキールだ。


 以前のキールならそんな誘いに乗るはずがない。

 役立たずで、荷物持ちくらいにしか使い道がなかった頃のこいつならそんな誘いに乗るはずがないのだ。無理です無謀ですと言って全力で拒否していたに違いない。

 あの頃と比べると魔術を発動させるまでの時間がやたらと早くなっていたし、何より杖だとかを所持していないのにあれだけの威力の術を使ってみせていた。


 魔術師として、かつての名前だけ状態だった頃と比べて今は名実共に魔術師と名乗れるまでになったのだろう、とは思う。

 思うのだが……


 どうにもかつてのキールと今のキールが結びついてこない。

 チームから追い出されて、あの後他にも同じような魔術師たちと一緒にこの大陸から出ていったという話は聞いた。どの国に行ったかはわからないが、まぁどこだって大差ないはずだ。

 そして、この国から出て行った以上、もうここには戻ってこれないだろうなとも思っていたのに。


 しかしキールは今こうしてこの国に戻ってきている。


 役立たずの烙印を押され、その評価が覆る事もないだろうはずなのに。

 だからだろうか、何かとんでもなくダッサイ眼鏡かけてるのは。あれで顔の印象を誤魔化しているのかもしれない。いや、悪目立ちすぎるだろ……



 考えて。

 考えて。

 考えた結果。



(……これ以上は関わらない方がいいのかもしれない)


 何故だかそう思えた。

 根拠があるわけでもない。どちらかといえば勘だ。

 けれどその勘は正しいもののように思えた。


 ステラたちのチームに入れてもらおうにも、一考の余地もなく切り捨てられた。ごねたところで望みは薄い。

 仮に、別行動しているその前衛を担当している奴と戦って勝ったら、なんて条件を出したとしても果たして了承されるかどうかも疑わしい。


 けれど、だからといってキール達のチームに入れてもらおうとは思えなかった。

 かつて役立たずと言ったのは紛れもなく自分だ。今はそうじゃなくなったとしても、だからといって先程助けを求めた時は仕方ないと思っていたが、仲間に入れて下さい、などとまたも頭を下げるのは流石にアルドのプライドが許さなかった。


「あぁ、そうかよ。じゃあいいや」


 かわりに、精一杯の虚勢。

 これからまた仲間を探さなければならない。またしばらくは貧しい日々がまっている。所持金がなくなる前にはどうにかして新たな仲間を見つけたいところだ。


 案外あっさりと諦めた事で、ステラもじゃあもう用はないわね、と言ってさっさとダンジョンから転移装置で脱出してしまった。

 アルドが一階層に戻って来てそのままダンジョンを出ようとしたところで、ステラたちは王都プリエールへ転移しようとしているのは見えたが……それだけだった。

 アルドはこれ以上関わらない方がいいと思ったので、最後に「まぁ、助かったぜ」なんて言ってそのまま外へ。

 行き先を確認して後を追おうだなんて思いもしなかった。



 ただ、この勘のようなこれ以上関わらない方がいい、という思いが正しかったと実感できたのは割とすぐの話だ。


 ダンジョンから出て、再び仲間を求めていくつかの町や村へ移動していた時に、ステラたちの噂も聞こえてきた。

 王都プリエールのダンジョンを既に攻略していたのか……確かにあれだけ実力があればな、と思わなくもない。

 ただ、その少し前にあったらしい事件、彼女の短剣を盗もうとした探索者の末路も耳にして。


「やっぱ関わんなくて正解だったじゃねーか……」


 もしあの時あれ以上ごねていたならば。

 もしかしたらダンジョンの中で始末されていた可能性すらあったのではないか。そんな考えがよぎる。


 あぁ、そうだ。

 今更ながらに思い出す。


 キールはともかく、あのステラという女。

 あいつ、オレを見る目が完全に人を見ているというよりは……


 まるでそこらを這いずる虫でも見ているようだったなと思い至って。



 今更のように今生きている事を噛み締めたのだった。

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