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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
二章 ゲームでいうところの無駄に存在するミニゲーム

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心情的には校長先生の長い話と似たような



 お涙頂戴、というつもりでもないだろうけれど、アルドはチームを解散した後の話を語っていた。

 いや、キールと別れた後で色々こっちも大変だったんだぞ、だとか当時の仲間をこうもあっさり忘れるとかどういう事なんだよ、とかいうギャンギャン喚いていた文句が大半だったけれど、そもそもキールと一緒にいた時にキールのせいで苦労をした、というのであればともかく別れた後の話だ。

 正直ステラがそんな風に言われたとしても知らんがなの一言で終了させるようなものではあるが、かつての仲間のよしみで助けてくれるよな? な!? という圧も含まれていた。


 キールだけならまぁ、そういったごり押しでどうにでもなると思ったのだろう。けれどもこの場にはキールだけではなくステラたちもいる。

 キールにかつての仲間だとか言われても、彼が追い出されたという経歴を話している可能性はとても高く(実際話しているし魔術師団の面々は似たような連中ばかりなので言う必要があるかは微妙でもあるが)、であればアルドは自分の今の状況はあまりよろしくないという事くらいは把握していた。


 アルドにとってキールは本当に役立たずであった。

 魔術は使いどころによっては確かに役に立つのかもしれないが、大抵の戦いでは役に立たなかった。

 時間のかかる詠唱。その頃には大体自分たちで魔物を倒し終えている状況。

 あまりにも使えなくて荷物持ちをさせていたけれど、自分たちのチームにいたのは槍術使いとボウガン使い、剣を持つ自分だけであとは魔術が使えるらしい荷物持ち、という認識ですらいた。


 しかし荷物持ちにしても体力がなくてすぐにバテていたので時として思わぬところで足止めを食らう事だってあった。

 何でこんな役立たずと組まなきゃなんねぇんだ。

 そんな思いがあったのは事実だ。


 アルドたち探索者チームは、別に自分たちで結成したわけではない。

 国の依頼で集められた探索者を、アビリティとか能力値とかそういったもので組み合わせられたチームであった。つまりは、チームになる以前から面識があったとかそういうわけでもない。

 中には面識のあった者同士でチームを組む事になった者もいたようだが、アルドたちのチームは依頼でできただけのものでしかなかった。


 アビリティや各々の能力値を見て、あまり激しく偏らないようにダンジョン攻略をするべくそれなりに最適なメンバーで構成されたチームではあった。

 少なくとも、キールを除く三名は。

 キールは魔術の腕を見込まれていたはずなのだが、まぁこれがいかんせん使えなかったのでアルドは余計にイライラしていたのだ。

 思えば当時の食欲はその苛立ちによるストレスもあったのではないかと思う。いや、元々割と食べる方ではあったのだけれど。


 けれども、そうして構成された探索者チームは複数あったとはいえ、全部が全部上手くいくわけでもない。

 ダンジョンの中で仲間割れを起こして死んだ者もいたようだし、こいつと一緒に行動するくらいなら一人の方がマシだわ! なんて周囲に大勢人がいる大通りのど真ん中で叫びだすような者もいた。

 チームの中でもダンジョンで命を落としてしまった者というのはいくらかいたので、この状況だとダンジョンに行くには厳しい、というチームも当然あった。


 そうなると、最初に組んだところではうまく実力を発揮できない、とかいう理由だとか人が減ったから他のチームと手を組んで、というかそっちのチームに入ってこれからはダンジョン探索する、という者も当然出てくる。


 アルドが追い出されたのは、キールを追い出した結果人数が減ったし攻略に難がある、という理由も表向きはあった。実際三人で問題がなかったとしても。

 けれどもダンジョンで得た報酬の取り分でギスギスしていたし、もっと楽に、かつ安全に、それでいて自分たちもそれなりに活躍してもっとうまい汁が吸えそうだと判断したバーグとケイターは他のチームで人員が欠けた所と交渉の末そちらに移動する事を決めていた。


 国からの依頼は基本的にダンジョン内部の探索と、あとは希少な素材の獲得であったのだが、たった一人残されたアルドがその任務を遂行できるはずもない。

 他のチームでも魔術師って使えない、という話はそれなりに出ていたし、だからこそキールが追放されたのはある意味で『当然』の事でもあった。

 けれどもアルドは魔術師ではない。剣士だ。

 だというのに仲間から追放された、という話が回って彼の立場は一気に酷いものへと変わってしまった。


 実力はある。

 それはまぁ、時折ダンジョンで遭遇した他の探索者もその目で見ているのだからわからないはずもない。


 けれども、役に立たない魔術師ならともかく、剣士なのに仲間から見捨てられるとかどういう事なんだよ、という感じでアルドには根も葉もないうわさ話が飛び交った。


 街の食堂で醜く貪り食らう様を見ていた探索者たちは、きっと他の仲間の食事にも手をつけて我慢の限界が来たんだ、だって食堂で一緒に食事とかしてるの見た事ないし、だとか、ダンジョンの中で食料を仲間の分までとったに違いない、とか、食に関する噂は特によく飛び交った。

 キールに荷物持ちをさせていた時、確かにアルドは他の仲間よりも多く食事をしていたが、仲間の分を奪った覚えはない。キールはたいして動いていないし役に立ってないから少量の食事しか渡さなかったが、バーグとケイターはアルドと同じく魔物と戦うのに重要な人物だ。しっかり食べて英気を養ってもらわねば、回りまわって自分が不利になる事だってある。


 キールを追い出した後は自分の荷物は自分で持っていたし、当然食料はその分多くなったけれど。

 けれど、一度だってバーグやケイターが持っていた荷に手を出した事はなかった。


 けれども、あまりにも汚い食べ方のせいで、一体どんな生まれと育ちをしたらああなるのかしら、などと言われる事も増えていたし、そのせいで人の物をとる事に躊躇いのない人物、のような噂が気付けばもうアルド自身でどうにもできないくらいに広まっていた。


 ここからしばらく、アルドにとっては地獄のような日々だった。

 噂のせいで他のチームに入ろうとしても断られ、それどころか自分より明らかに実力が格下であろう人物は受け入れられる。

 断られたのは一度や二度ではなかった。


 大体剣の腕を知られているはずなのに、それでも断られる。

 街中なら別行動すればいいだけ、ではあるがダンジョンの中は常に一緒に行動しないといけないから……なんていう理由で断られたり、もっと直接的に安全地帯で眠ってる時に食料とか漁られたくないし、なんて言われる事もあった。

 更にはもっと具体的に豚と一緒に行動するのはイヤ、なんて言われた事もある。


 実力はある。

 実力はあるのだ。

 けれども、それ以外の理由で断られる。


 仲間を得るのが難しいと判断したアルドは諦めて探索者を引退――はできなかった。

 アビリティは剣術に関するもの。

 とはいえ、そのアビリティを活かす仕事は探索者として魔物を退治するか、同じく剣術関係のアビリティを持つ者に向けての剣術指南か。

 けれども、アルドに関する話は広範囲に広まっていた。ダンジョン探索にあちこち転移している探索者たちが、各地の町や村でそういやこないだ豚に勧誘された、なんて話をしていれば広まるのは言うまでもない。一つの町や村だけでの噂であればまだしも、探索するダンジョンは探索者によって大きく異なる。

 そのせいでどこにいってもアルドは、あぁ、あれが噂の……という目を向けられる事になってしまったのだ。



 ここで諦めて他の大陸へ行って心機一転、とならなかったのはアルドにも人並みにプライドがあったからだ。

 その頃には追放された魔術師たちがこの大陸から出て別の大陸へ行った、という話が流れていた。

 あいつらと同じ事だけはしたくない。確かに他の土地へ行けば、自分と組んでくれるだろう探索者は見つかるかもしれない。けれども、他の国はここと違って国の依頼で探索者を雇って、なんてのはしていないとも聞いていた。

 国の依頼でダンジョン探索をして、時折見つける希少な素材を出せば特別手当が出たし、そうでなくとも拠点などいくつかの事柄に補助金が出る事もあった。

 けれどこの国を出たら、そういったものもなくなってしまう。


 他の国へ行って、仲間が見つかればいい。けれど、見つからなければ一人で稼がねばならない。

 今は一人の状態でダンジョンに行けるわけでもないので、国からの補助なんてものもないけれど、けれど仲間を見つければ再出発は可能なのだ。


 そうして藻掻いて足掻いて、それなりの日数が経過した。

 ロクに稼ぎもないのであれほど執着していた食事にもありつけない事の方が多くて、気付けば身体についていた脂肪は減っていたし、たまに得られた食料は次にいつ食べられるかもわからないので無駄が出ないよう大切に食べた。


 そうして、気付けば豚と罵られていたはずの身体はそれなりに痩せたし、そうなると別人のように思われる事も増えた。食事の時の周囲から散々ドン引きされていた食べ方もそれなりに改善はされた。

 今まではちょっとの時間も惜しくてナイフやフォークを持つのも煩わしく手づかみで食べたりしていたし、更には顔を皿に突っ込むようにして食べていたことだってあったし、顔中ぐちゃぐちゃに汚して食べていたけれど、少なくともそこら辺は改善された。


 そうすると周囲の反応も少しずつ変化してきた。

 面影がないわけではないが、アルドに似ている別の、親戚か何かだと思う者も出てきた。


 今なら、他の探索者とチームを組めるのではないか、と思ってアルドはどうにかこうにか国からの依頼を受けている探索者のチームに入り込んだのだ。

 初心者向けダンジョンの攻略を終えて、ようやく中級者向けダンジョンへ乗り出したばかりの所謂ルーキーと呼ばれる者たちではあったが。

 アルドも自分もしばらくブランクがあったようなものだし、と心機一転で彼らと行動する事にした。


 キールを追い出した時はまだ、彼らも中級者向けダンジョンの攻略しかしていなかった。そろそろ上級者向けダンジョンに行けるんじゃないか……といったところではあったのだ。

 実力的にまだまだひよっこだろうけれど、それでも一人ではなくなったという事実に、アルドは彼らを成長させつつ今まで以上に上を目指そうと決め――実際こうして上級者向けダンジョンへ足を運べるようにまでなった。


 とはいえ、その仲間は先程ゾンビに殺されてしまったわけだが。


 ちなみに話の途中で再び出現し始めたゾンビはステラがウォーターガンでスプラッシュして視界に入った直後に倒されていた。

 周囲に落ちていた魔物コインはモリオンがせっせと拾い集めている。


 仲間を失ってしまったのは大きな痛手ではあるが、アルドはまだ望みを捨てていなかった。


 けれども、このダンジョンから脱出しなければその望みも意味がない。

 だからこそ、どうにかしてこの先の最下層のボスがいるところまでは一緒に行動してもらおうと、とにかく言葉を重ねていく。



 ステラはそんなアルドの話を顔には出さないがとても面倒くさそうに聞いていた。

 いや、だってこれ、キール追い出した奴が今度は自分が追い出されてその後色々大変な目に遭ったっていう、単なる因果応報のお話でしょ? それをまぁ、よくも長々と……ほら、折角周囲浄化してたのにまーたゾンビ復活して湧いてきてんじゃん。口には出さないものの、本心はこんなものだ。


「キールが見捨てたいっていうならそれでもいいんだけど、どうするキール?」

「え? いや、流石に見捨てるのもどうかと思うし、あと少しでこのダンジョン終わりが見えてますから、ちょっとの間行動するだけなら、まぁ……」

「そう。良かったわね、キールに感謝なさい。散々ボロクソ言ってたのに助けてくれるんですって。私だったら見捨ててるわ」


 それだけを言うとステラはウォーターガンで進行方向に聖水まき散らしつつ移動を開始し始める。

 背後からこちらを追いかけてくるだろうゾンビはそのうちまた適当に振り返った時に浄化すればいいだけの話で、正直さっさとこのダンジョンから脱出したいというのが本音だ。


 言葉を選ばないのであれば、アルドの長い話のせいでステラはとっくにこのダンジョンに飽きていた。割と最初の段階でうんざりしていたけれど、アルドの存在が拍車をかけてしまったと言ってもいい。

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