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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
二章 ゲームでいうところの無駄に存在するミニゲーム

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上がって落ちる



 喋る玉の言うとおりにするのは正直ちょっとどうかと思ってはいた。

 いたけれど、それでもダンジョンを作る事ができる能力がマスターには与えられる、という情報が頭に流れてきて、面白そうだと思ったのは確かだ。

 だってダンジョンだ。

 ダンジョンを作るというのは町や村を作るのと同じようなもので、それに何よりダンジョンを作って維持して、そしたら力が溜まってもっといろいろな事ができるというのだ。


 正直何もかも全てを信じてはいない。

 けれども、何もかもを嘘だと切り捨てるにはどうかと思うものだった。


 喋る玉。

 魔物ではなさそう。

 マスターとして与えられたらしき力。


 そういったあれこれを、とりあえずは試してみてもいいんじゃない? と思ったのだ。

 どうせついさっきまで、このままここで死ぬのもありかな、とか思ってたのだから、やるだけやって駄目ならそうすればいい。

 ダンジョンを作る、といっても何もかも思いのままというわけでもない。

 制限はある。それはマスターの元の力にもよる。つまり、あの玉にしょぼい魔力ですねと言われた時点でアミーシャの能力は最低値と言っても過言ではない。

 それ故にほとんどできる事はないように思えた。

 けれども、この玉が管轄している他のダンジョンがまだあるらしいので、そうしたところから得られる力を他に割り振っていけばいいとの事。


 アミーシャはよくわかっていなかったが、わからないなりに玉から得た情報を思い返しては何度もチャレンジを繰り返した。


 玉が管轄しているダンジョンは複数存在する事がわかった。

 今あるダンジョンの他にいくつか新しくダンジョンを作る事も可能らしい、と知って、試しに作ってみた。

 アミーシャが今いる場所、玉と出会った洞窟はダンジョンとはまた少し違うらしくここはダンジョンにならないとのこと。

 少し離れた位置に、試しに初心者向けダンジョンを作成した。


 それが、後のグリオ農村である。


 初めて自分で作ったダンジョン。

 アミーシャが暮らしていた故郷のダンジョンをもとに作ってみたからあまり凝ったものではないけれど、それでも作る事はできた。


 そうして他にも作れそうな場所にダンジョンを作って、あとはそこに人が来るのを待つだけとなる。


 玉が言う事には、ダンジョンに溜まったエネルギーを使って他のダンジョンを強化したり新たな能力の解放をしたりすればいいそうなのだが、その意味が最初アミーシャにはよくわからなかった。

 それはそうだろう。もともとそういった事に詳しければともかく、ダンジョンを作るだなんて考えた事もなかったのだ。玉から得た情報でダンジョンを作る際のあれこれは何とか把握したけれど、それもなければ最初はどうなっていたことやら……


 ダンジョンは攻略しやすければいいというわけでもない。

 今までは自分がダンジョンに足を運んで物を得る側だったから、どうせなら簡単に色んなアイテムが手に入るダンジョンを、と思ったがそれではダンジョンが成長しないらしい。

 ダンジョンにエネルギーが溜まるのは、基本的に人が訪れた場合。

 その時に探索者たちからちょっとずつ魔力を集めたりして力を得るのと、場合によってはダンジョンに足を踏み入れた人間が死んでダンジョンに取り込まれた場合だ。

 あとは、そう――ダンジョンの中で時々発見されるレアアイテムを目当てに訪れる人間の欲望も力の源の一つになるのだとか。


 わけわかんない、とアミーシャが思っていれば、要するに人間の思いの力とは馬鹿にできないという事ですよと言われた。まぁ、そう言われればアミーシャにもわからなくはない。



 試行錯誤を繰り返していきながらも、気付けばそれなりにアミーシャが、というか玉が管轄しているダンジョンにそこそこの力が溜まったらしい。

 ダンジョンを成長させるために使えば更なる力を取り込めるわけだが、アミーシャ自身にもその能力を適用できると言われ、何が何だかわからないままにアミーシャはそちらを選択した。


 自分が管轄しているダンジョン内であれば、転移装置を使わずともいつでも好きに転移できる能力。

 自分が管轄しているダンジョンの中に出る魔物であれば、好きに手下として使える能力。

 ただしこちらはある程度数が決まっていた。


 最初はその能力を得てもなぁ、と思っていたけれど考え直す。

 これ、自分も探索者として紛れ込むのにいい感じなんじゃないの? と。

 自分が管轄しているダンジョン以外では好き勝手移動できないとはいえ、自分が管理しているダンジョンの中は移動が自由。ちょっと他所のダンジョンを見学して、自分のところのダンジョンに良い部分を取り入れたりしたらもっとよくなるのではないだろうか。

 探索者の振りをして紛れ込むにしても、一人で行動していたら変に目立ちかねない。

 魔物を手下にするというのはちょっとためらったけれど、見た目あからさまに魔物とわからないやつなら連れ歩いても問題なさそうだ。

 ぱっと見人と区別つかないようなのなら、大丈夫なんじゃない? なんて思って肌を一切見せる事のないリビングメイルを選択した。

 彼らも最初のうちはあまり強くなかったけれど、共に行動していくうちに少しずつだが成長したように思える。

 成長、というよりはアミーシャの力の恩恵を受けて、といったものだったようだが。


 最初のうちはあまりダンジョンの外に出ても行動できなかったリビングメイルたちも、徐々に慣れてきたのか一日中街中で行動するのも平気になってきたようだ。

 一切顔を見せないという事で若干不審がられたし、声も出していないから色々と憶測だの推測だのが飛びかったりもしたけれど、訳ありだと大抵は勝手に思い込んでくれた。

 あまりにもしつこく絡んでくるやつは自分が管轄しているダンジョンに誘導してそこで仕留めればいい。

 ダンジョンの中に入ればリビングメイルたち以外の魔物でもある程度指示を出す事もできるのだから。


 そして目障りな探索者に関してはそうやって仕留めてダンジョンの糧にすればいい。


 他の、自分の管轄外のダンジョンであっても、そこで仲間として連れているリビングメイルが魔物を倒せば彼らの力となるらしく、アミーシャは積極的にあちこちのダンジョンへと足を運んだ。

 一から何もかもを作れる程の余力はなかったけれど、それでも既にあるダンジョンにコツコツと手を加えて少しずつ得られる力を増やすために。



 ところでこの時点でかなりの年月が経過していたが、アミーシャの外見は年をとる事はなかった。

 玉いわく、それもマスターの特権であるとの事だったが……そのせいであまり大っぴらに名前を知られるような事はできなくなったなと思った。

 幸いにしてアミーシャが管轄とするダンジョンは各地に点在していたし、他の大陸にもあったのでそこそこ顔と名前が周囲に知られるようになってきたら別の大陸へ行き、しばらくはそちらで活動し、というのを繰り返していたためアミーシャの存在に疑問を持つような者はでなかった。


 アミーシャと言う名前は割とよくあるものだったし、外見も髪や目の色が目立つものでもなく顔立ちも平凡。そのせいで人の印象に残りにくかった。昔はもっと目立つ美人に生まれたかった、なんて思った事もあったけれどここにきて自分の平凡な外見が役に立つとは思いもしなかった。


 自分が管理しているダンジョンへは自由に移動できるわけだし、ギルドカードは必要ないのでは、とも思っていたけれどそれ以外のダンジョンに視察に行くのであれば転移装置を使えるようにしておいた方がいい、というのもあって随分昔にカードは作ったけれど、ギルドに頻繁に足を運ぶ事もなかったために、そしてギルドカードを読み取るような事もなかったためにアミーシャが不審がられる事は本当にほとんどなかった。


 長い年月を要したけれど、アミーシャの力自体が最初からあまり無かった事もあって成長はとてもゆっくりだったけれど。

 それでも、いつかもっとすごいダンジョンを作ってみせると思っていたのだ。溜めたエネルギーをちまちまと使っていてばかりではそれも先の長い話であったけれど、ここ最近になってようやくそこそこ溜まってきたので近々……なんて考えてもいたのだが。


 異変はある日唐突に訪れた。


 今まで溜めた力がごっそり消失する感覚。

 何があったのかわからずに取り乱し、玉から与えられた情報の中からそれっぽいのをどうにか引っ張り出す。


 それは、ダンジョンが破壊された時に起こり得るものであった。

 そう、ステラたちがグリオ農村のダンジョンに隠し部屋を作ったまさにその時の話である。


 一応ダンジョンを意図的に破壊されるような事は避けるべきだという知識はあった。ダンジョンの修復にはそれこそ力を大量に消費する。

 だからこそ、破壊される前に何らかの措置をとっておくべきだとも。


 けれど、グリオ農村は初心者向けのダンジョンで、足を運ぶ者だって探索者としてこれから活動するぞ! と期待に胸ときめかせるような新人ばかりだ。とんでもないアビリティの持ち主であっても流石にダンジョンを破壊するような事はないだろうと思っていた。

 管轄するダンジョンの中級者向けだとか上級者向けだとかになると、それこそ周囲の魔物全部吹き飛ばすような大技ぶっ放す探索者も出てくるのでそちらには注意していたけれど、初心者向けダンジョンはほぼノーマークだった。というか、そっちにまで手を回しておく余裕がなかったとも言う。


 だがそのせいでアミーシャの溜めてあった力はそれこそごっそり根こそぎレベルで消えたのだ。


 新居を建てようとしたらその資金全部まるっと消滅した、と考えるとアミーシャが受けた喪失感も想像しやすいだろうか。コツコツと溜めてきたそれらが一瞬で無に帰す感覚。

 何が起きたのか確認するべくアミーシャは人知れずダンジョンへ行き、そこで見てしまった。


 自分が作った覚えのない隠し部屋を。


 ダンジョンを修復しようにも力が足りず、せめて壁の部分でどうにかこの部屋を見えないように隠そうにもできなかった。

 自分の力より強い力でできた物を上書きするには当然だけど更に強い力が必要になる、と玉に言われ、アミーシャは絶望した。だって、それってつまり、今の状態じゃどう足掻いても何もできないって事でしょ?

 そうこうしているうちに隠し部屋で発見された財宝の話が広まって、幸運なルーキーとやらの噂も広まっていく。犯人がそいつらだというのは早々に理解できたけれど、困った事にすぐさま対処できない。


 けど、それでもどうにかしないと。

 この大陸にはアミーシャが管理しているダンジョンがいくつかある。

 それらダンジョンで毎回似たような事になってみろ。

 既にほとんど力なんてない状態で、これ以上失うような事になれば折角得た能力も使えなくなる可能性が出てくるし、長年仲間として連れ歩いている彼らだってもしかしたら姿かたちを維持できなくなるかもしれない。

 力を失い続けるとどうなるのか、という部分は玉から与えられた情報でも未知のもので、だからこそ気軽に試してみようとは思えなかった。

 かつて、まだ玉を見つけた頃ならアミーシャは死んでもいいかなくらいのノリでいたけれど、それも遥か昔の話。今はもっと長生きして色々と試したい事があるのだ。

 未練がある。だから死ねない。死ぬかもしれない真似は軽率に試せない。


 力の大半を失った状態でアミーシャは焦っていた。

 とにかく幸運なルーキーとやらをどうにかしてしまおうとそればかり考えていた。


 それが、最悪の結果になるとも知らずに。

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