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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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合法だけど非合法感たっぷり



 どうしてダンジョンの中に闘技場とかわけわかんないものがあるの?

 と聞けば探索者はさぁてねぇ、と彼もまた答など知らないのだと言わんばかりの反応を示した。


「内部が毎回変化するダンジョンの中で、ここだけは固定されてるってのは確かだけど。どうして闘技場があるのか、までは知った事じゃない」

 肩をすくめて言われたが、その情報はステラたちにとって初耳だった。

 ギルドの職員はそういった情報を言っていなかった。地図の意味があまりない、と言っていたけれど、ここだけ固定されてるならその情報くらいは言ってくれても良かっただろうに。


 ……いや、単純にまだ足を踏み入れてすらいないダンジョンだ。

 ステラたちの見た目からしてここまで辿り着けないのではないかと思われたのかもしれない。


 ダンジョンが出来て間もなくの頃、それこそずっと昔からここに闘技場は存在していたらしいが、その時は廃墟のように寂れていたらしい。

 けれども探索者が多く足を運んでいくうちに、闘技場は少しずつ復興していったらしい。探索者たちが直した、とかではない。

 けれども何度もここまでやって来るだけの実力がある探索者たちがこの闘技場を確認していくうちに、じわじわと復活していったようだ。

 数年前までは受付にあんな絡繰りはなかったとの事。


 闘技場、というくらいだから、戦うのは言うまでもないわけだが、一体何と? と聞けば男はそうだな、と少しばかり思案するように視線を斜め上へと向けた。


「魔物と戦う事もあるし、探索者同士で戦う場合もあるな」

「探索者同士での戦いってギルドカードに情報がのるから場合によっては資格剥奪とかになったりするんじゃなかったっけ?」

「それがどうもここのルールに従った戦いであれば問題ないらしい」

「ルール?」

「あぁ、魔物と戦う分には普通なんだがな。探索者同士での戦いに関しては受付で手続きすれば可能になる」


「わざわざやる人いるの?」


 意味が分からないとばかりにステラは眉を寄せた。


 手続きをしてまで探索者同士で戦う意味がわからない。

 その部分を当然のように問いかければ「ま、そうだろうな」と男は肩をすくめてみせた。


「けど、実際にはそれなりにいるのさ。そういうのがな」

 そういって視線を走らせた男につられるようにステラも同じように視線を巡らせる。

 見た所それなりの数の探索者がここにはいる。

 今までのダンジョンでだってここまで探索者が集まっている光景見た事がない。むしろ上級者向けダンジョンになってから出会う探索者の数は中級者向けダンジョンよりも少なく感じていたので、城があって国最大と言われているダンジョンならもっと少ないのではないかとすら思っていたくらいだ。


「手続きをした場合、探索者同士の戦いはご法度にならない」

「え?」

「ここのルールだ。ダンジョンのルールとしてある程度探索者たちの中で定められてる話があるが、それとは別にこの闘技場のルールが設定されているらしい。勿論手続きをしない場合はアウトだ」


 いやそのルール誰が定めてんの? と思い切りツッコミたいが、言ったところで答が返ってくる事はないだろう。ダンジョンの中の謎ルールに即座に適応しちゃう探索者の適応能力の高さは果たして感心すべきなのか、それとも思考停止しすぎでは? と思うべきなのかちょっと判断に悩む。


「あれだな、ある程度実力が出てくるとどっちが上かで揉める奴も出てくる。ダンジョンの外で決闘って形で戦うにしても場所を選ばずそんな事やってたら探索者以外の奴に迷惑がかかる。娯楽として楽しめる場所ならいいが、生憎とそこらの町や村でそういったものはあまりない。

 勿論、村の酒場で殴り合いの乱闘で盛り上がる奴はいるさ。けどな、そういった場所で探索者が暴れてみろ。被害がどれだけの事になると思う?」

「考えなくても厄介な事になるやつね、それ」


 探索者の大半は何らかの戦闘アビリティを持っているだろうと思われる者だ。酒場で飲んでご機嫌になるだけならいいが、気が大きくなって問題を起こす奴が出ないわけがない。

 あまりにもひどい場合は探索者としての資格を剥奪される可能性もある。


 ダンジョンの中で喧嘩するにしたって、魔物がうろついてる場所だ。横やりが入らないわけがない。


 いや別にどっちが上とかいう以前に素直にその力は魔物退治に使っておけと思うのもそうなのだが、世の中簡単にそういった理屈が罷り通るならもっと平和なわけで。


「それにな、一応殺し合いはご法度だ。探索者同士の戦いの場合は、だが」

「魔物と戦う時は死ぬ事もあるわけね」

「そうだな。そっちの方がいつも通りでわかりやすい」


 それはそうだ。


「でも、なんでわざわざ魔物も?」

 そういうのがある、という事はつまりこの闘技場内で戦う場合、その魔物は一応管理下にあると考えていい。

 まさかその辺をうろついてる魔物が探索者が魔物と戦うやつを選んだからとて、じゃあ行くか、と勝手にやって来るわけではないだろう。もしそうなら魔物の知能の高さに恐れおののくべきだ。


「あぁ、ここで戦って勝った場合景品が出るんだ。そこら辺は……そうだな、あのあたりの看板に記されてるから興味があるなら見ておくといい」

「はぁ」

 景品。

 それはとてもわかりやすい。

 もしかして何かレアなアイテムとかも入手できちゃうのかしら?

 ともあれもう少し聞きたい事がある。


「探索者同士の場合は? 景品とか出るわけ?」

 お互いどっちが強いか白黒はっきりつけようぜ、とかいう理由で戦うだけのものなら、そこまで利用される回数は多くないように思える。

 むしろ強い探索者に挑む者はそれなりに出るかもしれないが、挑まれる方だって何度も挑まれればうんざりするかもしれない。


「あぁ、一応な。とはいえ、お互いの同意がなければ戦いは起こり得ない。

 事前に戦う相手同士で賭けるのさ。景品を」

「ふぅん、なるほどね」


 それだけ言われれば大体は理解した。

 同意がなければ、という事は明らかに無理な賭けを吹っかけられた場合断る事も許されるわけだ。

 とはいえ、周囲にこれだけ人がいて、それらを上手く扇動された場合断りにくい雰囲気に持っていかれる事もある。本当の意味での同意かはさておき、ともあれ勝負を受けた以上は同意とみなされるわけだ。


「色々教えてくれてありがとう。ちょっとあっちの看板確認してみるわ」

「おう。あぁ、そうだ。ここ一応転移装置あるから帰るならそっちだぜ。先に進むならそっちの扉から出た先に階段がある」

「あら、ご丁寧にどうも」


 探索者の言葉からして、ここはどうやら階層主はいないが安全地帯でもあるらしい。

 転移装置があるならすぐさま帰る事は可能だし、ここに用がなくて先に進むのであれば階段に向かえばいい。

 魔物と戦う事を選ぶでもなければ、ここである程度休憩もとれるわけか。

 とはいえ、これだけ人がいるとゆっくり休むというのは無理だと思うけれど。


 ポーン、という音がして歩きかけていた足が一瞬止まる。


『ただいまの試合、チーム 暁の剣の勝利となります』


 そしてそんな声が建物内に響き渡った。


 お、おぉぉぉおおおおおおおおお!


 そして次の瞬間沸き立つ周囲。


「やっべぇ、あいつら勝ちやがった!」

「おいオッズは? どうなってる!?」

「くっそ負けると思ってたのになぁ」


 歓声の中でそんな声が聞きとれた。


「賭け事もやってるのね」

「悪趣味だな……」

「そう? よくある話でしょ」


 何とも嫌そうな表情で呟いたキールに、ステラはあっさりと返す。

 大体安全地帯から他人の生き死にを眺めるなんて、遥か彼方大昔からある娯楽の一種ではないか。

 賭け事の対象にしなくたって、こういった催しは大体どこかに存在する。人がいる以上は。


 ともあれ、先程示された看板の所へ足を運べば、そこには確かに闘技場についてだとか、利用上の注意だとか、あとは景品一覧だとかが記されていた。


 魔物と戦う場合、いくつかのランクにわかれるらしく勿論ランクが上のやつに挑戦して勝てば景品もそれなりに豪華になるようだ。

 とはいえ。


「世界樹の雫みたいなレアアイテムはないようね」

「あったら確実だったんだけどな」

 白々しく相槌を打つベルナドットに、しかしキールは気付かない。

 確かにあったら勝てば確実に入手できる。

 勝てば。


 ステラたちなら余裕だろうとは思うけれど、ランクは記されていてもどういった魔物と戦うかの事前情報はない。どんな敵がでるかわからない以上気軽に参加するのは正直……とキールはそっとかぶりを振った。

 このダンジョンの中に出る魔物の中から、というのであればまだある程度推測は可能かもしれない。けれども闘技場限定の魔物とか出たらキールにとってはその時点で死を覚悟するレベル。

 事前にこういう魔物と戦ってもらいますよ、というのがわかっていれば対策もどうにかなるけれど、そうでなければ流石にキールには難易度が高すぎる。


 もしステラたちの手助けを借りないまま数年がかりでここまで来たとして、もしここで景品に望みの物があったとしても……流石に厳しいだろうなと思えばむしろなくて良かったのかもしれない。


 景品にある品物はそれなりに良い物ではあるけれど、どうしても今ここでゲットしたいと思えるものでもない。一番低いランクだとポーション詰め合わせセットがもらえるらしいので、薬の数が心もとなくなってきて、なおかつそのランクなら余裕で勝てるという探索者からすれば挑むのもありだろうなと思えるものだ。

 他にも何だかんだでダンジョン探索に使えそうな物が景品にあるが、欲をかいた結果ここで命を落とす可能性もあるわけで。


「なんつーか……オレたちからすれば特に用のない場所だな」


 クロムの呟きに確かにな、とキールも同意した。


 一応ある程度のルールもあるらしいけれど、ここがダンジョンの中にあるという時点で世間一般にはあまり知られていない非合法の地下ファイトクラブみたいなものだと思ってもいいだろう。流石に殺しちゃダメな探索者同士での決闘試合で殺した場合はギルドカードにそこら辺情報書き込まれるのかもしれないけれど、マトモな試合であれば闘技場にて、とか書かれて職員の方でも「あぁ、あれね」でスルーされるのかもしれない。


 いや、どうなんだろう?

 正直ダンジョン在りきでできてるような世界だから、ステラたちの世界の常識が通用するかどうかもたまに疑わしい部分がちらほらあるので何だかわからなくなってきた。

 まぁとりあえず自分たちには関係のない場所だ。

 それだけはハッキリとわかる。


 ――少なくともステラたちはそう思っていた。

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