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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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偏りポロポロ



 そういうわけで地道にコツコツとダンジョン攻略を進め、もうそろそろ王都へ行けるのではないか、というところまできた。

 ステラたちが本気出せば正直すぐにでも行けただろうけれど、同行者でもあるキールの体力を考えると強行軍は不味い。

 いくら師匠であるアズリアを助けたい、という思いがあったとしても、じゃあちょっとそこで自分の身体ズタボロレベルに酷使していいかっていうとそうでもないだろう。

 勿論キールなら、それくらいで師が救えるのなら! とか言うかもしれない。

 その程度の事で救えるのならば安いものだと言うかもしれない。


 けれども。

 思いだけでどうにかなるかっていうとなるはずもないのだ。


 いや、そうまでして助けたいって言い切るのはステラとしてもいいとは思う。

 でもちょっとその後の現実考えて? とも思うのだ。


 仮に。仮にだ。

 キールが本当にズタボロになるまで身体を酷使してどうにかこうにか世界樹の雫とやらを手に入れたとしよう。そしてそれを使ってアズリアが助かったとする。

 で、その後は? となれば日常生活に支障が出るレベルまで使い物にならなくなったキールが残る。

 アズリアの魔術の腕前がどれくらいかでキールの今後が決まる。

 魔術師ではなく魔導士と言われているアズリアだ。治癒魔術もそれなりに習得していると考えたとしても。

 大怪我あたりまではどうにかなったとして、果たして欠損レベルまでいくと治せるかどうかはわからない。


 いくら自分の住む世界ではないとはいえ、一応ステラもそれなりに興味を持って魔術師団の連中と軽い世間話をしたりはするのだ。その時にこっちの世界の治癒魔術ってどんな感じ? なんて聞いたりもした。

 魔術師の実力にもよるけれど、聞いた範囲では中級ポーション使ったレベルが普通、といったところだろうか。アズリアがそれより凄かったとしても上級ポーションとかそこら辺かもしれない。

 ちなみに上級ポーションで欠損は治らない。


 腕とか足の一本失ったと仮定して。

 キールがそんな状態になったらアズリアが次にどうでるか。

 一応師匠だ。弟子を放置するとは考えにくい。

 そうなると今度は弟子を治すためにアズリアが秘薬を求めてダンジョンへ、なんて事は余裕で考えられる。


 アズリアの実力がどれくらいかは知らないが、どちらかといえば研究メインでやってたらしいし、戦闘が得意かどうかは微妙な気がする。そもそも充分に戦えるなら、研究ばかりさせてられないからフィールドワーク行ってこい、とかそういう仕事に回されていた可能性もあるわけで。


 魔術師団の仲間たちと一緒にダンジョンに行ったとして、犠牲無しで秘薬を手に入れられるかどうかは運だ。


 下手したらそこで更に仲間が大怪我を、なんて事もあり得るし、何ならアズリアが今度は身体に欠損をするくらいの大怪我をする可能性だってある。生きてりゃマシだろうけれども。


 マッチポンプとは言い難いが、何というか延々と続くそれはまさしくそのようにしか見えないだろう。

 どっちかが助かってまたどっちかがダンジョンに、の連鎖であればまだいいが、途中でどっちかダンジョンで死ぬ可能性もある。


 いや、そういう人生で満足してるっていうなら口を出すつもりはないけれど、まずそんな人生を望んでいるわけでもないだろう。


 となると、キールにはなるべく五体満足そこそこ万全の状態でダンジョンから帰還しないといけないわけだ。ステラたちだっていつまでも手伝いをするわけではないのだし。今はまだクロノが迎えに来ていないから手伝う事もまぁいいかで済ませているが、クロノが迎えに来た時点である程度この世界満喫したしもう帰っていいかしら、みたいな心境になってたらすぐさま帰っている。


 ダンジョンそのものは何ていうか、中身が違えどやる事大体どこのダンジョンも同じだしなぁ、という気持ちでそこまでの新鮮さもないのだ。そりゃ飽きる。


 ともあれ、ある程度はキールの体調を考えてダンジョン探索をしているわけだ。

 その間別行動になってしまった他の魔術師たちは、何か気付いたら以前と比べてかなり筋肉がついてきたのが増えた。

 えっ、魔術師? とか言われそうな見た目になってしまわれたのが数名いる。正直今なら斧とか大剣とかぶん回してもおかしくないんじゃない? って思えるようなのがいる。

 今まではアビリティが魔術関係だったから身体を鍛えたところで……と思っていたのもあったようだが、一部の魔物特攻きめる武器を手にしてからは身体動かすの楽しくなってきた勢が増えてきたので、何というか異世界召喚されたあの日のひょろっひょろなもやしたちはほぼいない。


 それだけならまだしも。

 こちらの世界、基本的に魔術は攻撃か治癒くらいしかない。一応援護できる補助魔術もないわけじゃないが、あまり使える人材がいないのかそちらは少数らしい。

 まぁ、なんていうか、使い勝手が微妙に悪い感じである、と言われれば否定はできない。


 ところで最近ルクスがちまちまと魔術を教えていった結果、多少の詠唱短縮で魔術を今まで通り発動できる者が増えてきたわけだが、更にそこに新たな魔術を教えたそうだ。


 それは生活魔術と呼ばれるものだった。


 ステラたちの住む世界では人間種族も魔術をある程度使える者が増えてきたとはいえ、誰でも使えるものではない。どちらかといえば魔石を加工して生活用品に組み込んでいる。

 生活魔術はどちらかといえば神族や魔族が使っている。


 生活魔術、という言葉の意味通り、攻撃に向いているわけでもない。いや、一応水出したりできるから、ちょっと隙を作ったりするくらいには使えるかもしれないが……攻撃魔術と比べれば威力はお察しだ。


 例えば飲み水になり得る水を出したりだとか、服の汚れを落とすだとか、料理をする際に火を熾すだとか、洗濯物を乾かすだとか、日常のちょっとした事に使うようなもの。ステラたちの世界では魔石で大体やってる事だがこちらの世界の魔石はダンジョンの中でしか見つからないし、何気にレアアイテム扱いだ。

 けれど生活魔術はそこまで難易度があるわけではない。攻撃魔術よりも習得は簡単なくらいだ。ステラたちの世界ではその簡単な魔術ですら人間種族にあまり普及していないけれども。


 だがしかしここの魔術師たちであれば覚えるのもそう難しいものではない。

 それもあってルクスは気軽にいくつかの生活魔術を教え込んだのだ。


 消費する魔力の量もそう多いものではない。制御も難しいわけではない。だからこそ案外あっさりと魔術師たちはその生活魔術を覚えた。


 攻撃魔術というわけでもないし、それが何かの役に立つのだろうか、と最初のうちは一部の魔術師たちも首を捻っていたものの効果は案外早くに訪れた。

 ダンジョンの安全地帯で休憩するときに水を出したり、火を熾して簡単な食事を作ったり。更にはダンジョンの中を駆けずり回った結果汚れてしまった服の洗浄だとか。思った以上に役に立ったらしいのだ。


 飲み水は今まで物資として持ち込む状態だった。ダンジョンによっては川が流れてたり水源確保できる場所もあるが、そうじゃない所での飲み水の確保は案外難しい。運が良ければ魔物を倒した時にドロップアイテムで果物あたりが出る事もあるらしいが、喉の渇きを癒すにしても果物は場所を考えて口にしないと最悪喉に詰まる。

 魔物との戦闘中にのんきに食べてたら最悪死ぬ。急いで食べても最悪喉に詰まって苦しむ。


 けれども生活魔術で飲み水を出せるとなれば、少なくとも水の心配はしなくてよくなる。

 消費魔力量もそう多くないし、安全地帯でやる分にはちょっと休めばすぐに回復できる。安全地帯でなくとも戦闘の際に魔力消耗しすぎて、なんて事になるものではない。


 火を熾す魔術もそうだ。

 普通に攻撃魔術の中に火属性のものがあるけれど、それはあくまでも魔物を倒す威力があるだけの術だ。そんなんで焚火とかしようとなれば、威力を限りなく落としておかないと焚火するべく組んだ木の枝ごと吹っ飛んで燃えてあっという間に燃え落ちる、なんて事になりかねない。

 攻撃魔術の威力を限りなく落とす、というのも中々に難しいものだった。けれども生活魔術のそれは、最初から威力がお察しレベルで威力の調整をする必要もない。


 結果として途中で倒した魔物からドロップした肉だとかを安全地帯で簡単に焼いて調理して食べる、なんてのが気軽にできるようになった。

 魔術を使わない探索者で安全地帯で泊まり込んでる人たちはどうしているのだろうか、と聞けば一応火を熾すアイテムがあるらしいので基本的にはそれを使っているらしい。

 魔術師たちもそれ使わないの? と聞けば少しばかり手間がかかるのだとか。


 昔ながらの火打石とかそんなのかしら? とステラは思ったが、それを使って火を熾すのと攻撃魔術の威力を極限まで抑えるのとどっちがマシなんだろ……と考えるとどっちもどっちな気がした。主に面倒という意味で。

 ライターはさておきマッチとかないのだろうか、と思ったが、ダンジョンの中で最悪魔物との戦いで引火するような事になると危険だから持ち込む者は少ないのだとか。

 確かに魔物の中には火を吹くようなのもいたし、それで燃えたら大惨事だなと納得できる。


 服の汚れを落とす魔術も正直そこまで使うか……? と思わなくもないが、これが案外重宝された。

 何せダンジョンの中で大怪我こそしなくてもちょっと血が滲んで汚れてしまっただとか、泥だらけになってしまっただとか、そういった状況にはよく陥るらしく、そうなると安全地帯で休んだとしても服についた血が乾いてカピカピだったり泥汚れが乾燥してぼろぼろ落ちるだとか、泥に至っては落ちるならまだいいが、生地に染み込んで中々取れないレベルになると重さもある。

 座るにしろ横になるにしろ、服に染みついた悪臭だとかもあると中々休んだ気にもならない。


 ところが服を洗浄してさえしまえばそういった悩みも一発解決だ。

 あまりに酷い場合はダンジョン内で洗う事も考えるが、安全地帯で水場があるならともかくそう都合のいい場所は滅多にない。魔物がでるかもしれない所で周囲を気にして服を洗う余裕があるかと言われればそれはそれで微妙なところだ。


 洗浄魔術があるなら服を乾かしたりする時に使う乾燥魔術は必要ないだろう、と思われるが、これもまた重宝された。

 魔物の中には自らの体液を吐き出して攻撃してくるものもいる。毒であったり消化液であったり、どのみち命中してもいい事なんて一つもない。当たらなければどうということでもないけれど、回避しようとしても回避しきれない事だってある。そんな液体ひっかぶった場合に瞬時に乾燥させるのによく使われるらしい。

 いつまでも服に染み込んだ状態で服が無事であるかも微妙だし、ましてやそこから肌に染み込んできて、と考えると確かに一瞬で乾燥できるのは便利だ。うっかりかかってしまっても、その事実をなかった事にできる。とはいえ、場合によっては皮膚に触れた毒を乾燥させても残る場合があるので完全に安心というわけでもないようだが。


 ダンジョン攻略にはあまり使わないだろうと思われていた生活魔術だが、思った以上に魔術師たちの役に立っている。

 ついでにダンジョンから帰って来て拠点の中でも使う機会が増えた。主に洗濯とか。

 今まではそれなりに時間をとられていた洗濯も、今では魔術でちょちょいのちょいだ。

 冬、特に水の冷たい季節はひぃひぃ言いながら洗っていたものも、これからはすぐに終わらせられる。


 なんでこんな便利な魔術がこっちの世界で普及してなかったんだ! と魔術師たちは嘆きつつも、生活魔術を大いに活用するようになった。教えたルクスは下手したら新手の宗教の教祖みたいな扱いである。


 元々何名かには教祖のような扱い受けてたけど、信者と言われれば納得するようなのが更に増えた。


 ステラの目から見て、ルクスは一体何を目指しているんだろうか……と思うものの。

 これ多分聞いたところでマトモな返事のないやつね、と早々に納得させる事にした。

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