表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/232

今更の宣戦布告



 あの後は普通にダンジョンを攻略して次なる上級者向けのダンジョンへ。

 その流れを何度か繰り返して、今では上級者向けではあるけれど小規模なダンジョンから、やや大きめな規模のダンジョンに辿り着いていた。


 最初のダンジョンがあまりにも罠の仕掛け方下手くそすぎたものの、それ以外のダンジョンは罠が罠とわかりやすい! みたいなものでもなく、何というかちぐはぐ感があるのは否めない。

「あぁ、多分ダンジョン作ってる人が違うんじゃないかな」

 そう疑問を漏らせばルクスがあっさりとこたえてきた。


 少なくとも上級者向けダンジョンと言われる中で一番最初に訪れる事ができるだろうあのダンジョンは、アミーシャが作ったとみていいだろう。罠の仕掛け方下手くそだよねとか言った時点でキレたわけだし。

 あの反応は本人が作ったか、はたまた自分が心酔している人物が作ったかのどちらかだが、少なくとも情報を集めた結果アミーシャにそういった人物がいるような話は出てこなかった。

 巧妙に隠しているとも考えられたが、一度目と二度目、あの出会いを思い返すにアミーシャにそういった芸当はできそうにもない。

 もしそういった人物がいたとして、アミーシャが隠しきれていたのであればそれはとても凄い事だとすら思う。ルクスを騙し通せたとなれば、敵はこちらが思っていた以上に恐ろしい存在となるだろう。


 ……とはいえ、あれは完全に素だ。


 ちなみにそんなアミーシャだが、今回のダンジョンでも彼女は待ち構えていた。


「ふっふっふー、よくここまで来たわね!」


 今回のダンジョンは自然の中、というよりは建造物の中といったタイプのダンジョンで、またも罠がそこかしこにあるタイプだ。けれどもよく見れば罠の存在はまぁわからない事もないし、といった具合であるしキールもここに来るまでにそれなりの数ダンジョンを攻略してきた事で何となく慣れつつあった。

 だからこそアミーシャの姿を見た時に思った事は、あぁまたか、くらいのものだ。


 アミーシャが話しかけてきたのは、ステラたちがいる通路とは反対側の通路だった。

 このダンジョン、アスレチック的な要素が多く段差だとかがやたらと多い。

 ステラたちがいる通路とアミーシャたちがいる通路の間にはぽっかりと穴が広がっているので、向こう側に行くとなるとどうしたって迂回しなければならない場所だった。


 壁に階段のように出ている段差を登ったり、飛び越えられなくもない小さな穴が連続して存在している部分をひょいひょい飛び越えたりと、運動神経があまりよろしくない者には厳しいダンジョンかもしれない。その上魔物が出るのだから、少しの油断や気の緩みで大惨事になる可能性を秘めたダンジョンであるとも言える。


 とはいえそれもステラたちからすれば大した事がないと言えるものであったが。


「あら、今回は貴方もここに? 今日はちゃんと尻尾巻いて逃げないで最後までいるのかしら?」

 笑顔を浮かべてステラが問いかければ、露骨にアミーシャの表情が引きつった。

 確かにステラたちの前に現れた一度目と二度目、アミーシャは覚えてなさいよの捨て台詞とともに撤退している。だからこそそう言われても仕方のない事なのかもしれないが、そう言われてまで笑みを浮かべられる程アミーシャの心に余裕はなかった。


「ふ、ふん。余裕かましてられるのも今のうちです。今日こそは痛い目みせちゃうんだから!」

 そう声高に宣言してアミーシャは片手をすっと上げた。

 それは何かの合図をするかのように。

 するとやはり背後に控えていた三人の仲間が背中から何かを取り外し構える。


 ボウガンだった。


 それも一発ごとに発射するタイプではなく連射式。連射式、といってもボウガンなのでセットできる矢の数に限りはあるが、それでもまぁ普通の単発式ボウガンに比べれば厄介である事に変わりはない。


 こっちの世界にも銃とかないみたいね、とステラは思いながらもその様子を見ていた。

 あのボウガンに特殊な力でも宿っているとかであればもう少し警戒するけれど、見れば見る程普通のボウガンだ。武器を売ってる店でちょっと金を積めば手に入らなくもない、といった感じの。

 上級者向けダンジョンを攻略している探索者が利用するような店に行けばきっと普通に売ってるだろうなと思えるものだ。


 連続して矢が飛んでくるのは確かにちょっと厄介かなぁ、と思わなくもないが、それだけ。

 アミーシャたちを見て警戒してどうにかボウガンの攻撃範囲から逃れるべく体勢を変える、だとかするまでのものでもない。

 ステラたちとアミーシャたちとの間には確かに隔てるように大きな穴が開いているけれど、アミーシャの態度からしてその穴を越えてボウガンが届くのは確実だ。けれども、彼らの腕前がわからない。アビリティに命中率アップ、みたいなのがついてるなら警戒するのは言うまでもないけれど、相変わらず全身を鎧で固めて顔も見えない彼らの武器は基本的に腰にある剣だ。命中率がどうとかいうアビリティではないと思われる。


 すっとボウガンを構えた三人の仲間たちは、片膝をついて狙いを定めている。ただ立った状態よりも姿勢を安定させているのみならず、狙いはステラたちの頭というよりは足下やそれより少し上、といったところだろうか。


 下手に高い位置から狙うよりも、低い位置から狙う事で回避させにくくしようという意図は感じ取れた。


 けれども上から狙うよりも命中率的な意味で当たるだろうか? とも思える。

 やや上の位置を狙った方が命中させやすくはあるだろう。人体の構造的に胴体あたりが一番マトとしては大きいわけで、そこを狙えばそれなりに当たる気はする。逆に手足などは当てられるかどうかは腕前にもよるが運も絡んでくるのではないだろうか。


 けど足に当たればとりあえずこちらは逃げる事ができなくなる。逃げるつもりはもとより無いが。

 動きを封じればアミーシャとしても次の段階に進む事ができるため、足を狙うのは有効なのだろう。ステラからすればまどろっこしい事してんなとしか思えないけど。


「やっちゃって!」


 そんなアミーシャの声がしたのと同時に。


 ヒュヒュンッ!


 と風を切る音と共にボウガンから矢が発射された。三人が構えたボウガンから複数の矢が放たれ、それらは一斉にこちらへと向かい――


「はいはい、無駄な事を」

「よっ、と」


「あら?」


 そのほとんどをルクスが剣で弾き、残りはクロムが足で蹴り落とし、更に一つ狙いが外れでもしたのかやや上の方を通過してやってきた矢はステラが手にした短剣で弾き落した。

 武器を使わず足で矢を落としたクロムの足にこそ傷ができていそうではあったが、魔力で覆ってガードしながらだったため、クロムの足には傷一つついてはいない。


 もしもの事を考えて風の魔術で矢の軌道をそらしたり直前でどうにか弾こうと考えていたキールは魔術を発動する事なくあっさりと発射された矢を無効化された事に目を見開いているだけだった。

 一つくらいは命中するかもしれないし、もしそうなったら怪我の手当ても必要だろうなと考えていたというのに実際はそんな事になってすらいない。

 キールは薄々もしかしたらそうなるかもしれないな……とは思っていた。頭の片隅で。むしろ怪我をする事の方が可能性としては低いくらいだ。けれども、絶対に安全というわけでもないのだし、万が一を考えて対処できるようにしておこうとは思っていた。


 実際その必要はなかったわけだが、それでもやっぱりかぁ、という気持ちがありながらもやはり驚いたのも事実ではある。



 けれどもアミーシャはそうではなかったのだろう。

 まさかこうもあっさりと矢を弾き落され、一発も命中しなかった、なんて事になるとは思っていなかったに違いない。マトモに命中しなくてもどこかにかすり傷の一つくらいは負わせられると思っていたのではないだろうか。

 ある程度攻撃が命中していれば、今のうちに次の矢をセットして更なる追撃に出る事もできた。けれども向こうは一切の無傷。今ここで矢をボウガンにセットして再度攻撃に出たとして、果たして当たるだろうか。


「それだけ?」

 それだけだとはわかっている。けれどもまだ他に何か隠し玉とかあるんでしょ? とばかりにステラは問いかけた。小首を傾げてきょとんとした表情で。


 それは、通常の状況であれば別に何の変哲もないものであった。

 意味を理解しきれずにちょっとわからないなぁ、とばかりの動作。大袈裟でわざとらしい動きですらない。そしてその表情も決して小馬鹿にしたものではない。言われた意味を理解できなかった時だとか、拍子抜けした時だとかによくするような、そんなものだ。


 例えばいきなり話しかけられたけど最初の部分が聞き取れなくて「え?」と聞き返すような。そういった、誰でもするような反応。


 ステラとアミーシャが普通の会話をしているなら、その対応は間違いではなかった。けれどもアミーシャはステラたちに攻撃を仕掛けたのだ。

 だからこそ。


「ぐ、ぬぬ、もう一回! もう一回よ!」


 アミーシャからすればそれは馬鹿にされたとしか思えなかった。

 背後に向けて声を上げる。念の為次の矢を番えていた彼らは言われるままに再び矢を放つ。


 風を切る音と共に再び矢がステラたちへ向かっていく。


 ――が、しかし。


 キィンッ、という甲高い音と共に今度は全ての矢がルクスの剣によって落とされ、矢は力尽きたとばかりに穴の底へと落ちていった。


 最初の時は様子見も兼ねていたからなのか、クロムも矢を落とすのに参加していたけれど今回はルクスが一人で全て穴の手前で対処した事で、それ以外の全員はただ見ているだけに終わる。


「な、なん、なんなの。貴方一体なんなの!? アビリティ持ってないんでしょ!? それなのになんで!」

「アビリティがなくてもどうとでもなるものだよ。現に今もこうしてどうにかなっただろう?」


 余裕たっぷりに笑みを浮かべてみせれば、アミーシャは言うべき言葉すらわからなくなったとばかりに口をぱくぱくと開閉させる。だって、だって何を言えばいいのだ。

 アビリティがないのはわかってる。だって最初にアビリティを消滅させる神器を使ったのだ。無駄に終わったようだけど。仮にあれが実は本当はアビリティはあったのだと考えても、あの時点でアビリティは消滅している。だから、今目の前にいるこの男はアビリティによる能力で矢を無効化させたわけじゃない。純然たる己の実力でやってのけたと言える。

 嘘でしょ、だってアビリティがないのよ? 神の祝福なくしてそれでどうしてそんな……


 アビリティがなくとも、なんて言葉、ただの強がりだと思っていた。実際に過去、そう言っていた者がいたけれどやはりアビリティを失った後はそんな事言えなかった。失ったアビリティをどうして、と嘆き、返してくれと喉から血が出る勢いで叫んですらいたのだ。

 例えそれが自分にとって役に立たないものであっても、神の祝福を失うとはそういう事だ。


「それで、まだ攻撃を仕掛けるつもりなのかな?」

「う、うぅ……」


 ステラと同じように小首を傾げて問うルクスに、アミーシャは無意識のうちに足を後ろに一歩下げていた。身体は無意識のうちに逃げるべきだと動こうとしていたが、アミーシャはそれでもどうにかそこで踏みとどまる。


 アビリティがなくてもそれが何か? とか言い出しそうな連中を前にして。

 一体何ができるというのか。

 実力的な意味では仲間と一緒に襲い掛かっても多分負ける。前にクロム一人に仲間は一撃で倒されたのだから。

 ルクスも相手にしたくない。得体の知れない生き物にしか見えない。関わりたくない。けれども放置するわけにもいかないのだ。


 あいつらにくっついてる魔術師はダンジョンに関して恐らく詳しいわけじゃない。聞けば仲間に追い出されて追放されて魔術師たちだけでチーム組んでダンジョンを攻略してるという話だし、あの男……あれ? そういやあんなダッサイ眼鏡かけてた? 最初の時はかけてなかったはずだけど……まぁいいや。あれは放置で構わない。脅威になりえるものではない。魔術師は放置だ。


 であれば。

 狙うのはそれ以外。


 男の方は何気に罠がどこにあるかを熟知しているようだし、洞察力が凄いんだろうなと思える。

 女の方は――さっきボウガンの矢を一つ弾いたけれど、それ以外でもあまり戦えるような感じはしない。



「……パルシア王国、城のあるダンジョンで決着をつけましょう。勿論、貴方たちがそこまで来る事ができれば、だけど」


 正直現状打つ手はない。アミーシャには今どう足掻いたところで彼らをどうにかできる作戦はない。

 けれど。それでもそんな事はないのだとばかりに虚勢をはって余裕たっぷりにそう告げる。


「じゃあね、精々がんばりなさい」


 そうして振り返り、仲間たちに行くわよと告げてから、ダンジョンから脱出する。


「あら、今回は覚えてなくていいのね」


 そんな声が背後から聞こえてきて思わず「うるっさいわね!」と叫びたくなったが。

 そしたら色んな意味で努力して取り繕ったのが台無しになるのでアミーシャはそんな事は全く気にしていないのだと、反応したら負けだと言い聞かせて――


 完全にダンジョンからその姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ