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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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知らずついたもの



 安全地帯で休息し、そしてまた先に進み次なる階層主を倒し、次の安全地帯で休憩。

 そうしてダンジョン最下層にいるボスを倒して帰宅。


 上級者向けダンジョン、と言われているダンジョンからの帰還は特に何事もなくできてしまった。


 いや、途中で用意された罠を見る事のできる眼鏡とかなかったらキールだけは無事で済まなかったかもしれないが。最初の方は確かにばばーっと並べるように仕掛けられていた罠に戸惑い、また引っかからないように注意していたものだけど最下層に近づくにつれある程度慣れてきた。言われてみれば確かに、罠が仕掛けられているところはやたらと密集した感じなのだ。

 これが床も壁も天井も、どこ触っても発動します、みたいにびっしり配置されているならともかく、流石にそこまでではなかったのか罠が全くない所もあったのだ。

 そういう場所に陣取ってしまえば、戦闘に関してはあとは大体ベルナドットとクロムがどうにかしてくれるのでキールとしてもかなり楽をできていたと言える。


 上級者向けというダンジョンのはずなのに、驚く程あっけなく攻略できてしまったのは間違いなくステラたちと一緒だからだ。そうでなければ全滅している。


 アミーシャに関して本当に何もしなくていいのか、と聞いてみたが、放置で大丈夫らしい。

 そう言われてしまえばキールもそれ以上何も言えなかった。

 これが何を言ったところで意味がなくて、泣き寝入りするしかない、という意味なら違ったがステラたちの様子からはそんな悲壮感も何もなく、むしろ次はどこで仕掛けてくるのかしら、と若干楽しみにしてる節さえあった。


(……いや、それでいいならいいんだが……)


 けれども何ともスッキリしない。


 とはいえ、キールにできる事はほぼ何もないのも事実だった。

 師が起きていたなら、果たしてどうしただろうか。

 やはり何もしなかったか、それとも何らかの手段を思いついていただろうか……?



 ――などとキールが多少なりとも思い悩んでいた事なんて全く気にした様子もなく。

 ステラたちは一日拠点で休んでから新たなダンジョン攻略に乗り出した。

 上級者向けダンジョンの一つを攻略したからか、またも行けるダンジョンが増えていたからだ。


 ステラたちだけなら別に休息をとる必要はそこまでないのだが、キールも連れていくとなるときちんとした休みは必須。自分たちと同じノリでキールを駆り出していたら、多分途中で倒れるかもしれない。


 そうして訪れた次の上級者向けダンジョンは、この前のダンジョンに比べればマシだった。

 ダンジョンの見た目としては岩がゴロゴロとそこかしこに転がっている山道に見えなくもない。とはいえ実際に山というわけでもないので延々と山道を登らされる、というような事もなく。


 ただ所々にある岩場やらちょっとした崖のような部分から魔物が飛び出してきたりするので、中々に気が抜けないダンジョンでもあった。

 勿論罠も存在したが、前のダンジョンと比べてここぞという感じの所に仕掛けられていたのでキールが罠を発見できる眼鏡をかけていなければ間違いなく彼だけが引っかかっていたことだろう。

 そこかしこにばらまくように罠がなかったものの、だからこそ、罠はあまりないダンジョンなのではないかと思っていただけに仕掛けてある場所の位置が絶妙すぎた。


 しかし眼鏡をかけていればキールが罠に引っかかる事もない。

 ついでにステラたちも大体は回避していた。時々興味本位であえて引っかかりにいったけれど、怪我をする事もなかった。


 このダンジョンの罠は前のダンジョンと比べると中々に破壊力があったものの、回避してさえしまえば何も問題はない。前のダンジョンのように罠がある部分はかすかに凹凸がある、といった感じでもないためうっかり引っかかる探索者の数はそれなりにいるのではないだろうか。



 ちなみに現在目の前に、その罠に引っかかったであろう探索者の姿があった。


「こんにちは」

「おう、って……随分軽装だなあんたたち」

「そっちはまた頑丈そうな防具ね。……とはいえ、罠に引っかかった?」

「あぁ、運が悪かったな」


 いてて、と言いつつもその探索者はどうにか身を起こした。

 爆発する岩の罠に引っかかったのだろう。というか、その音を聞いてあら近くに誰かいるのかしら、と思ってやってきたのでそこに探索者がいるのは何もおかしな事でもない。


 砕けた岩の洗礼を受けて一部の鎧は凹んでいたり、また鎧のない部分は――返事をしたのとは別の探索者の腕はあらぬ方向に曲がっていた。見れば立ち上がれていない探索者の足はどうやら折れたようだ。

 返事をした探索者がどうやら一番軽傷だった。


「ポーションは足りてる? 無いなら魔物コインと引き換えに譲るけれど」

「……もしかして、あんたたちは……」


 何かに思い至ったのか、ハッとした様子で探索者がステラの顔をまじまじと見た。


 ダンジョンに足を運ぶにしては軽装すぎて、けれども武器はそれなりにいい感じで。

 そして場合によっては魔物コインで余裕のある道具を譲ってくれる――

「あんたらが幸運なルーキーにして商人か」

「えっ、商人とか呼ばれてんの? いやまぁやってる事確かにそうだけど」

 思い返せば確かにちょいちょいそれっぽい事はやってたから否定しようもないけれど、幸運なルーキー以外の呼び名がくっついていたとは思ってもみなかった。


「あぁ、今までは中級者向けのダンジョンで見かけるという話を聞いていたが、とうとうここまでやってきたんだな……」

 その声はどこか感慨深げでもあった。

 確かにここは上級者向けのダンジョンだ。だからこそ、この探索者たちがその話を聞いたとしても「ふーん」程度のものだっただろう。中級者向けダンジョンに足を運ぶなんて今更あるわけでもないし、くらいに思っていたかもしれない。

 仮にそいつらが上級者向けと呼ばれるダンジョンに来たとしても、出会う事など早々ないと思っていただろう事はその表情からも何となく窺える。


「で、いる? ポーション。初級とか言われてるやつから中級上級取り揃えてるけど」

「あるのか!?」

「あるわよ」


 初級ポーションなら魔物からも割とドロップしやすく、入手しやすい。ポーションの中では断トツといってもいい。中級や上級と呼ばれる物はやや運が絡んでくる。

 このダンジョンの中でも中級ポーションと呼ばれる物がドロップしないわけではないが、それだってよくある、と言われるまででもない。更に上級ポーションなんて夢のまた夢、くらいだ。

 素材があれば薬師に調合してもらえるけれど、それでも上級ポーションは気軽に用意できる代物ではないのは事実だった。


「値段は……」

「手持ちの魔物コインにもよるけど」


 問いかけて、あぁそうだったと探索者は思い直した。

 そうだ、噂で聞いた話では金ではなく魔物コインとの交換だった。ダンジョンに入る前に大体準備して手持ちの金は減っている状態なので、そういう意味では確かに魔物コインとの交換の方がこちらとしても望ましく、また有難くもある。


 手持ちにある回復薬はポーション、それも中級が一つと初級が五つ。

 自分は初級でどうにかなるとは思うけれど、仲間の傷は中級でどうにか、といったところか。しかし中級は一つしかなく、それを使わなかった仲間は初級ポーションを複数飲ませるべきだろうか、と考えてもいたのだ。

 何本も重複させて飲ませたとて、完治するかは微妙な気もしていた。

 ここでポーションを使い切れば後はもう先に進むより引き返すしかない。


 しかし戻る途中でまた罠にかかったら今度こそおしまいだ。

 彼ら探索者はこのダンジョンにはもう何度も足を踏み入れていて、罠がありそうな所は何となくわかるようになってきていたけれど、それだって完全にではない。現にこうして今回は不運にも罠にかかってしまった。

 生きているだけ全然マシではあるけれど。



 手元にある魔物コインを目の前に広げてみせるとステラは「ふぅん?」と小さく声を出した。

「そのコインとそのコイン三枚ずつで中級と交換してあげる。そっちのコイン二枚追加してくれるなら上級にもできるわ」

「いいのか!?」

「今回は構わないわ。けど毎回同じレートってわけじゃないからそこは注意してちょうだい」


 ステラが示したのは、探索者たちがより多く倒した魔物だった。コインだけは無駄にある。むしろ数少ない種類の魔物コインだったら交換もロクにできなかったが、今回の交換条件は探索者たちからもかなり好条件だ。


「よしわかった、このコインで交換できるだけ交換してくれ!」

「まいどありー」

 じゃらじゃらとコインを回収しつつ、ステラは肩からかけていた鞄の中に手を突っ込んで中級ポーションと上級ポーションをそれぞれ出していく。

 周囲の空間にアイテムをそのまま収納できていたとはいえ、マジックボックスのアビリティと誤解されるのもな、と思って空間からぽんと道具を取り出すのはなと考え直し急遽用意した鞄だが、ポーションくらいなら鞄からこれだけ出てきても別におかしいとも思われないだろう。


 魔物コインに関してはベルナドットがポーチの中に回収している。


 早速ポーションを手に飲み始めた探索者たちは、飲み終わるとすぐさま治った事に対して中級ポーションはやっぱ効くなぁなんて思いつつも立ち上がる。


「ところで今回はそっちの魔物コインでお守りのお札と交換もできるけど、どうする?」

「お守りの札ぁ? なんだそれ」

「一度だけなら罠にかかっても無効化できるお札だけど」

「……は? 冗談だろ? そんな便利なアイテムあるのかよ」

「あるわよ」

「……いや、ホントに」

「嘘だと思うなら別にいいけど」

「あぁ……いや、んー……よし! それじゃ三枚! 三枚だけ交換する!」

「これも次回は別レートになるかもだから、今回と同じ交換条件にならないかもって事は頭の片隅にでもいれといてちょうだい」


 言いながら更に鞄の中からお札を三枚取り出して差し出す。

 半信半疑ながらもそれらを受け取った探索者は各自で一枚ずつ持つ事にしたらしい。どうしたものかと悩みつつ最終的に懐に突っ込んでいた。


「別に誰が持ってても構わないんだけどね、それ。チーム一つに対して、って感じの効果範囲だから。ま、いいわ。まいどありー」


 そんな感じである程度魔物コインを回収したら、ステラたちはもうこれ以上ここにいる必要はないと感じたのだろう。

「それじゃ、またどこかで」

 なんて言いながら立ち去っていった。


 ステラからすれば正直得をしたとはいえない商談であったけれど。

 元々金銭目当てでやっているわけでもないのでそこはそれ、というやつだった。



 さて、一方の探索者たちではあるが、彼らもまたぽかんとしながらもステラたちが去っていくのを見送っていた。


 今回交換に、と言われた魔物コインは正直彼らからすればここで何度も戦って、倒すのにそう苦労しない魔物ばかりだ。探索者ギルドで換金したとしても、そこまで大金になるわけでもない。

 むしろこれで中級ポーションと上級ポーションを交換できたのがおかしいくらいなのだ。ギルドで換金して得た金額で今回入手した分のポーションを購入しようとすればまずできない。

 何というか騙した感がないわけでもない。けれども、これとこれで交換ね、と言い出したのは向こうで、こちらはそれに頷いただけだ。お互い納得した上での事だ。

 だから、悪い事をしたなんて思う必要もない。


 交換できるだけ交換してむしろこちらは得しかない。


 お守りのお札とやらの効果が本当なら凄いとは思うのだが、本当かどうかがわからないのでこちらはあるだけ全部、とは言わなかった。何せその魔物コインはこのダンジョンの中でもたまにしか遭遇しない魔物で、換金額もまぁそこそこいい感じではあったからだ。交換しない、という選択肢も勿論あったがポーションが破格だったので、何となく悪いかなと思って交換したに過ぎない。

 三枚、と言ったけれど、それでもまだこちらが得をした状態と言える。


 次も同じ交換レートではないと言っていたが、そもそも果たして次があるかもわからない。ステラたちがこのダンジョンにしばらく何度も挑むべく足を運ぶなら出会うかもしれないが、そうではなく色んなダンジョンをあちこち挑戦していくのであれば、同じ顔と出くわす事もそう無いだろう。


 ポーションの数にも余裕ができて、これならまだ先に進んでも大丈夫そうだなと思ったので先に進む事にする。ここから引き返すよりはあと少し進んで階層主に挑んだ方が早く戻れるからだ。何度か挑んだ事もあって、ここの階層主に苦戦はしない。問題なのは罠だけだった。



 ――ちなみに。

 この後割とあっさり罠に引っかかったものの早速お守りのお札とやらが効果を発揮した事で。

 あっ、手持ちのコインと全部交換しとけば良かった……なんて後悔するのはそう遠い未来の事でもなかったのだが、それはまた別の話だ。

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