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異世界からの勇者召喚 失敗!  作者: 猫宮蒼
一章 ゲームでいうところのありがちな追加要素

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難易度を上げるもの



 デザインはどうしようもないくらいにダサいけれど、罠がわかる眼鏡の効果はすごかった。

 壁にある罠は下手に武器を振り回してぶつけたりだとか、疲れて壁に寄りかかる、だとか魔物の攻撃を受けきれず吹っ飛んだ、とかでもなければ触る事もない。

 天井にも罠がある部分はあったが、そこも魔物と戦った時に飛び道具があらぬ方向へ飛んで、だとか魔術で飛んでる魔物を落とそうとして、とかでもなければ作動しない気がする。


 だからこそまず気を付けるべきは床にある罠だった。


 キールとその同士たちだけでダンジョンに挑んでいたなら、一体どれだけの罠を発動させていただろうか。

 少しもいかないうちに罠を発動させて怪我をする程度ならともかく最悪命を落としていた可能性すらある。


 幸いにして、と言っていいものかは微妙だが今までステラたちが作動させた罠はどうにかできた。流石に大岩が転がってきた時はひやりとしたが、それだってどうにかなった。

 同士たちとなら、恐らくあの岩で死んでたなとも思う。


 ステラたちは眼鏡をかけていないけれど、何となく罠の場所を把握しているらしくごく自然な動作で回避していた。異世界の人間って皆そういう能力を持ち得ているものなのか……? とキールは訝しんだが、別に皆が皆そういうわけでもない。

 とはいえ、実際そう言われても素直に信用できるかどうかは微妙なところだ。何せ今目の前にいる異世界の人間はすいすい避けているわけだし。


「なんでそんなあっさり回避できてるんですか……」


 ある程度魔術を使う練習にもなるから、と言われこちらに押し付けられた魔物をどうにか倒してから聞いてみる。一応キールでも勝てなくはない、といった魔物を選んでいるらしいものの、正直ひやひやしてしまうのは仕方のない事だった。一応ヤバくなったらクロムあたりが援護してくれるらしいけれど、本当に大丈夫なんだろうかそれ……という思いも消えない。


「なんで、って言われてもねぇ……」

「正直あからさまな気しかしないんだけど」


 むしろなんでわからないんだろう、とばかりにステラとルクスに言われると、いやわかんないよとしか言いようがない。

 あからさま、ってそこまで見てわかるものでもないのに。


「あー、まぁ、確かによく見ればわからないでもないけど、慣れないうちはわかりにくいと思うぞ」


 ベルナドットがそう言うものの、それがフォローなのかなけなしの同情心で言っているものなのかわからない。


 クロムはどうやって判別してるんだろう、と思ってそちらを見れば、

「オレは何となく勘で」

 と、何とも頼りにならないというか、参考にしようがない返事。


「キール、一度眼鏡外してそこの床を見てみるといい」

「え……?」


 ベルナドットに言われて、とりあえず眼鏡をはずす。一応そこに罠がある、というのは眼鏡越しに知っているので引っかかるつもりはこれっぽっちもないけれど、そうじゃなかったら罠の存在に気付けるとも思えないくらいそこは普通の床だった。


「通路は完全に舗装された状態で、でこぼこしてるわけでもない。けど、本当によく見て欲しいんだが、罠がある場所は踏む事で発動する。それで、その部分はほんの少しだけ出っ張っているんだ」

「は……?」

 言われても正直何言ってるのかわからない、くらいにわからない。

 このダンジョンは上級者向け、と言われてる割に見た目は初心者向けのようなシンプル極まりないダンジョンだ。四方をレンガで作られた、やや重々しく見える感じの。


 レンガでできているとはいえ、完全に平坦というわけでもなく、歩いていれば若干の凹凸は足の裏から感じ取れる。一切の凹凸もないくらいに平ら――といかないのはレンガとレンガの間、その部分を埋めている物が均一であればまだしも、そうでもない。

 あからさまな段差にはなっていないが、若干の凹凸はどうしたってあるのだ。


「罠がある場所は他と比べて数ミリ出っ張っている。それに気付けば何となく違和感もあるし気付けないわけじゃない」

「わかるか!!」


 数センチであればまだしも、数ミリってもうそれ職人の域じゃないか! とキールが叫んだのも無理はない。そもそもレンガだって全てが同じ作りで均一かと言われれば微妙に違うのだ。レンガにだって種類がある。それを組む時にも出来上がりに違いが出たりするけれど、それもある意味で個性と言ってしまえばそれまでだ。


「ま、仕方ないわ。私たちはそれを何となくで把握して回避してるだけよ。キールはそんなすぐ把握できたりしないでしょうし、その眼鏡をかけておきなさい」


 諭すように言われても釈然としない。

 いや、わからないのだから眼鏡をかけて危険回避せよ、という言い分はわかる。

 でも、数ミリの誤差のようなそれで罠の存在に気付けってのはどう考えたって無謀だろう。


 これがもっと別の――ちょっとしたでっぱりが不自然だと思えるようなつるつるの床などであればまだしも、ちょっと凸凹してるくらい普通だよね、といえる状況でそこに気付けは無茶が過ぎる。


 何となくで察しているステラとルクス、クロムはまだしもその数ミリで気付けるとか言うベルナドットもどうかしてるとしか思えなかった。


「ま、こればっかりは経験の差だな」

 とか言われましても。


「はは、ま、でもこのダンジョンの罠はどちらかといえば雑な仕掛け方だからね。気を付ければ引っかかる回数もそうないだろうさ」

 ルクスがそう言うものの、雑な罠の仕掛け方ってどんなん? としか思えない。キールの思う雑な罠の仕掛け方はどちらかといえば、そこに罠がありますよ、というのが見た時点でバレバレな状態であるものなのだが、ダンジョンの罠はパッと見たくらいではキールにわからないので雑に仕掛けてあると言われてもいまいち理解できなかった。



 このダンジョンが多くの探索者を絶望の底に叩き落してきた、というアミーシャの言葉はまぁ、大体事実なのだろう。

 今までのダンジョンにはない明らかに探索者を仕留めようとする罠の数々。

 魔物との命のやり取りだけならいざ知らず、明確にダンジョンの悪意が形になっているそれらにきっと今まで多くの探索者が苦しんできたのだな、とは思う。


 死なずに済んだとしても大怪我を負ってすぐさまダンジョンから撤退した探索者も多くいただろうとは思うし、場合によってはそこで命を落とした者もいただろうな、とも。

 このダンジョンの地図に罠の位置は記されていない。それは単純に地図を作った時に罠に引っかからなかったからなのか、一度引っかかったとして次に別の探索者がそこを調べても罠がなかったからなのかまではわからない。内部が変化するタイプのダンジョンでなくとも、罠だけが毎回変わる、なんて可能性もある。


 どちらにしても、引っかからなくても罠の位置がわかる、とかでもない限り知りようがない。


 ここを乗り越えられるかどうかで、これより先の上級者向けダンジョンに行けるかどうかが決まると言っていい。



 とはいえ、眼鏡のおかげで罠の位置はわかりきっているし、ステラたちも引っかかるつもりもない。

 だからこそ、他のダンジョンとそう変わらないくらいのノリで階層主のいるところまで辿り着いてしまった。


「おや? 開かないね?」

「あぁ、それはまだ中に他の探索者がいるからだと」


 階層主がいる所は、大体大仰な扉があったりだとかこれから先ボス戦ありますよ、みたいになっているのでわかりやすい。基本的に鍵はかかっていないし簡単に開くはずだが、ルクスが手をかけても扉はびくともしなかった。


 であれば、中に他の探索者がいるという事なのだろうとキールはこたえた。


 一緒に行動をしている探索者であればまだしも、全然関係のない探索者が階層主と戦っている時に乱入はできない。同じチームでなくとも一緒に入ればその時点で共闘すると見なされるが、後から時間差で入るというのはできないのだと言えば、ルクスもあっさりと納得したようだ。


「では、中の誰かが倒すか倒されるかするまではここで待機という事か」


 扉の向こう側の様子は一切わからない。

 音が漏れ聞こえてくるでもなく、もしかしたらもう倒されているのではないか、と思える。どちらが、とは言わないが。


 待っている間に魔物が襲いにくるのでは、と思ったが、特にそういったこともなく寄りかかっていた扉からカチリ、と音がする。


「あ、開きましたね。行けますよ」


 その言葉に扉を押し開ければ、先程のような頑丈さもなくあっさりと開く。

 探索者の姿はなく階層主と思しき魔物の姿だけが見える。階層主が倒されて新たに出現したのか、それとも探索者が倒されてその死体がダンジョンに取り込まれてしまったのかは……正直わからなかった。

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